クリスマス・イヴ[2-4]
「おいしい〜」
「でしょ?さっすがオレ、ナイスチョイス!」
「なんかそれ、さっきも聞いた。」
なんて、昼間のやりとりみたいにそっくりそのまま返す。
その、目の前にいるのは、ちょっと呆れながらも、この店を気に入ってくれた様子の、僕のかわいい彼女。
目が覚めたときは終わったと思ったけど、クリスマスマーケットで仲直りしてからは、すっかりご機嫌で、一安心。
なんせ、僕がいつもぼんやりしているから、彼女に頼りっぱなしで・・・。
さすがに情けないので、今日のディナーは、最近見つけたいい雰囲気のお店を予約しておいたんだ。彼女の好みは把握してるから、気に入ってくれるとは思っていたけど、やっぱり喜んでくれて、僕も嬉しい。
僕は昔から、大人しくて、いつもみんなにくっついているばかりだったから、しっかりしていて、思ったことを素直に口にできる彼女と出会って一目惚れをしても、友達グループで仲良くするのが精一杯だった。
はじめは、"サークルでなんとなく仲良くなった6人"ってだけだったけど、気が付けば、事あるごとに集まるようになっていて・・・その中に彼女もいたから、僕が特別アクションを起こさなくても、いろんな思い出を共にできて、どこかそれで満足していた。
それに、彼女が僕に気があるとも思わなかったし、現状に満足していたから告白する気もさらさらなかった。
そんな風に、このままずっと仲良しグループでいるんだって勝手に思っていたけど、嬉しいことに、去年のクリスマスに彼女の方から告白してくれた。
まさか彼女も僕を好いてくれてるとは思ってもなかったから、びっくりしたけど、おかげでこうして今年も一緒に過ごせている。
今までは6人だった思い出が、去年からは2人だけのものになったことで、それまで知らなかった彼女の、新たな一面も見れたりして、ますます想いは強くなっていく。
・・・けど、それを彼女に伝えたことはない。
付き合うようになった初めの頃は、僕もがんばって連絡を取ったりしていたんだけど、やっぱり僕は待つことの方が得意みたいで、途中からは彼女に任せてしまっている。連絡でさえこんなんだから、好きとか愛してるなんて夢のまた夢。
ありがたいことに、今日もこうしてデートに誘ってくれたんだけど、待ってるだけじゃダメだよなぁ。
よく、女の人は言葉で伝えて欲しいって聞くし、僕もちゃんと、口に出して伝えられるようになろう。
「まーくんって、お店いろいろ知っててすごいよね。そういうとこ好き。」
あぁほらまた、そんなすぐ好きって言えちゃうんだから、キミはずるい。
こっちがこんなにドキドキしてることも知らないで。だからいつも僕はヘラヘラ笑って誤魔化すくらいしかできないんだよ。
でも、今日は本当の本当に、ちゃんと伝える。
去年は彼女に先を越されたから、今年は僕が伝える番だ。