クリスマス・イヴ[1-1]
今日から25日まで、1日1話づつ、小説を公開していこうと思います。初めての試みなので、つたない文章で書き進めていくことになると思いますが、温かい目で見ていただけるとありがたいです。
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クリスマスなんて嫌いだ。
人は多いし、みんななんだか浮き足立っているし、毎年大抵仕事だし、先月彼氏と別れたばっかりだから、今年は久しぶりに1人だし、寒いし、暗くなるのも早いし、街中キラキラしてるし・・・
お客さんと直接関わりたくて、サービス業を選んだのは私自身だから、毎年仕事なのはまぁいいし、寒いのと暗いのも自然の原理だからどうしようもないとして・・・問題はクリスマスシーズンに独り身だと、周囲から可哀想な目で見られるってこと。
ー1ヶ月前
「えー!なんで!?あんなに仲良かったじゃん!」
「いや、そんなこと言われたって、いろいろあっての結果なのよ。」
お昼休みに、同僚の凛花との話の流れで彼と別れたことを告白した。というかさせられた。
凛花は恋話大好きな、「ザ・女子」って感じの女の子で、かわいいし、気遣いもできるし、いい子だ。いい子だけど、人の恋路にまで踏み込んでくるのだけが唯一の難点。いっつも営業の〇〇さんに彼女ができたらしい、とか、経理の△△さんが不倫してるらしいとか、そういう情報を誰よりも早く仕入れてきて、頼んでもないのにシェアしてくれる。
人の情報が勝手に入ってくるってことは、私のこの情報も、明日には会社中に広まると思った方がいいわけで。いや、もしかしたら午後にはもう知れ渡っているかもしれない。そんなの嫌だけど、凛花のあの、なんとしても言わせてやる!っていう獲物を仕留めるような目から逃げられるほど、今の私の精神力は強くなかった。
「お似合いだったと思ってたんだけどな〜。私、2人はこのまま結婚すると思ってた。」
「私だって、まさかこのタイミングで別れるなんて思ってもなかったよ。」
「なんで?何が原因?」
「・・・一番は、2人での未来が見えなかったことかな。
ずっと仲良くやってきたし、嫌いになったとかじゃなかったけど、なんか限界だったんだよね、たぶん。周りも結婚ラッシュだし、子どもが生まれた友達だっている。でも、私が彼と、そういう生活を送っているのが、全く想像できなかったの。」
「そっか〜、そういう場合もあるのね。まぁきっとまたすぐいい人が現れるって!」
「うーん、そうだといいけどね。」
そんな話をしたのが1ヶ月以上も前だったなんて信じられない。まるで昨日のことだったみたいに感じられるのに。
案の定、次の日には私の破局話で社内は持ちきりで。
その時は、凛花に話してしまった自分を激しく恨んだけど、1ヶ月もたてば、もうみんなそんな話題なんか忘れてる・・・そう思ってたのに、クリスマスシーズンが近づいてきたおかげで、私は今、"触れちゃいけないもの"みたいな扱いを受けている。
別に私はもう吹っ切れたし、しばらくは新しい恋もいらないと思っているから、クリスマスを1人で過ごすことにはなんにも感じていないのに、みんなが変に気を使ってくれるから、やりづらい。
はぁ。
カランカラン
ダメダメ、仕事に集中しないと。
「いらっしゃいませ〜」