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Ce(III)が多いほど過酸化水素の分解が速いと,粒径が6倍も違うサンプルで比較して主張している。

https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/chem.202304012

オープンアクセスなので読んでみて

これはまた別のグループの論文のようだな。

セリウムに対する主張は同じようなものだ。酸化セリウムのコロイド溶液に過酸化水素を加えると深い茶色になり,徐々に薄い黄色になっていく。過酸化水素の不均化(H2O2 = H2O + 1/2O2)はCe(III)の量が多いほど速くなると主張している。

一方で,Ce(IV)が過酸化水素の不均化に寄与するって言ってるんだよなぁ。Ref. No. 3, 7 and 7.

It has been generally accepted that Ce(III) is associated with the enhanced activity of SOD-mimetics, while Ce(IV) is responsible for the CAT-mediated disproportionation of H2O2.

過酸化水素が水と酸素に不均化されるときって,電子放出してるだろうよ。そしたらCe(IV)がCe(III)に還元されるのではないだろうか。どんどん孫引きしていくけど,たくさんの論文を引用してCe(III)がCe(IV)へと酸化されて色が変わると書かれている。でも,Ce(IV)になると色が変わる理由も,Ce(IV)に酸化されている証拠も書かれていない。セリウム滴定で過酸化水素を定量できる原理って,逆じゃなかった?

やはりうちの学生と同じミスリードだ。Ce(III)が多いほど過酸化水素の不均化が速いと主張しているが,比表面積が全然違う。Ce(III)が多いサンプルは粒径が5 nmなのに対して,Ce(III)が少ないサンプルは粒径が28 nmもある。横軸に比表面積とってみろや。あとXAFS測ってないから(XPSでしか評価してないから)d,粒径が大きなサンプルと小さなサンプルではバルクの情報の有無もあるぞ。

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