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ノーベル化学賞2024解説(一般の方向け)

化学大好き君です。こんにちは。
さて先ほど今年のノーベル化学賞が発表されましたね。今年は「タンパク質の計算による設計・構造予測」ということで、David Baker、John Jumper、Demis Hassabisの3名に授与されました。今回は超一般向けにノーベル化学賞2024(AlphaFold)を解説します。ですのでこの記事では、「今年もノーベル賞発表されたらしいけど、このあるふぁふぉーるどって何??たんぱく質の構造が分かるって大事なの?」と思ってらっしゃる方々のための記事となります。
私の研究内容(Relationship between smell, carbon number, and molecular structure of acetate esters | Organic Chemistry | ChemRxiv | Cambridge Open Engage)が、今回の受賞内容とそこそこ近いというのもあってそこの内容とも触れながら解説できたらと思います。
それでは、超一般向け解説行きますよ!!!!

1,タンパク質って何だろう?

まず、タンパク質から始めます。タンパク質って言葉は皆さんきいたことあると思うんですけど、小学校中学校ぶりという方や「たんぱく取れ!ってテレビ番組で言うてたけど結局人体に何のはたらきをしてくれんの?」という質問には意外と答えられない方もいるのではないでしょうか?タンパク質とは、まず無数のアミノ酸が結合(ペプチド結合と専門的には言う)をしているポリペプチド(高分子化合物)のことです。三大栄養素の一つでもありますよね。アミノ酸は、以下の図のような構造のもので一つの分子中にアミノ(-NH2)基とカルボキシ基(-COOH)が含まれるようなものです。

生体内で働くアミノ酸のメンツ。ワイルドでしょ??

じゃあタンパク質って体の中でどんな働きをするのか?色々ありすぎてすべては取り上げることは出来ませんが、例えば生体反応の酵素となりうるものや体内の物質を輸送したりするものがあります。

タンパク質の説明は大体このくらいです。次の章からはタンパク質の構造を話していきます。

2,タンパク質の構造について

タンパク質の構造は、アミノ酸が特定の順番で並んだ一次構造から始まります。この配列がタンパク質の基本形を決定し、その後の立体構造に影響を与えます。次に、一次構造のアミノ酸鎖が部分的に折りたたまれ、二次構造が形成されます。代表的な二次構造には、らせん状のαヘリックスとシート状のβシートがあります。これがさらに複雑に折りたたまれ、三次構造が作られ、タンパク質の全体的な立体形状が決まります。この形状は、酵素の活性部位や受容体などの機能を担います。四次構造では、複数のタンパク質鎖(サブユニット)が集合して、より大きな機能的な複合体を形成します。このように、先ほど挙げたようなタンパク質の機能はその立体構造に密接に関連しているのですね~~。ん!?、てことは、、そう!!!タンパク質の構造が分かれば体の中での機能が分かる!そうすれば壮大で未知のことも多い人体の仕組み(どうやってこの臓器ははたらくのか?…etcに迫れるってわけ。僕の研究は酢酸エステルという分子がどのような匂いを出すのかな~~というものを調べるものなのですがヒトが匂いを感じる仕組みも当然タンパク質(GPCR)の関与のオンパレードです。
じゃあやっぱりこの構造を分かりたい!! 研究者はみんなそう思います。しかし、三次構造や四次構造ともなるとサイズが大きくなりますので構造を測定によって分かるのは難しいところがある。そこで、タンパク質の3次元構造と機能の予測・設計を行うAIシステム、AlphaFoldが開発されたのです。

3,AlphaFoldについて


AlphaFoldのHP

AlphaFoldは、2018年にGoogle DeepMindという組織によって開発されたタンパク質の3D構造を予測するシステムです。今回の受賞者のJohn Jumper、Demis Hassabisの2名はこの組織の方々です。プログラムは、たんぱくの折り畳み(3次構造)を原子の幅に合わせて予測する深層学習システムとして設計されています。また、最新のデータベースリリースには2億以上のエントリーが含まれ、UniProt(タンパク質配列とアノテーションの標準リポジトリ)を幅広くカバーしています。

AlphaFoldは2020年に、長年未解決だったタンパク質構造予測の問題を大幅に改善し、その後のAlphaFold2では計算スピードが向上し、さらに高精度の予測を行うことが可能となりました。このAlphaFold2は「CSAP」というコンテストにて極めて高い精度を達成しました。さらに2024年には、AlphaFold3がリリースされました。AlphaFold2と比べて計算スピードが向上しただけでなく、タンパク質と核酸や低分子化合物などとの相互作用の計算ができるようになりました。

ざっくりとした仕組みとしては、タンパク質のデータ(ここでは配列)を入力し、配座解析を行い、そこからニューラルネットワーク(ノーベル物理学賞2024ですね)を介して仮説構造を形成します。このニューラルネットワークには「トランスフォーマー」と呼ばれる技術が使われており、大量のデータの中から重要な情報を効果的に抽出します。


4,終わりに

いかがでしたでしょうか??2024年のノーベル化学賞に選ばれたAlphaFoldについて超大雑把にまとめてみました。見てみるとAlphaFold、かなり新しい技術であることが分かります。ノーベル賞は、もう少し先かなと思っていましたが今後への期待を込めてか早めの受賞となりましたね。詳しい解説などは、今後のTVや新聞などで報道されればそちらを御覧ください。他には、Chem-Station(https://www.chem-station.com)というポータルサイトが解説のページを出してますので、気になる方はそちらも併せて見てみてください。次回の記事ではDavid Baker先生の研究内容について深堀していきます。お楽しみに!!!

間違い・指摘等ございましたらkagaku89daisuki5@gmail.comまでお願いします。



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