オーバーキルリソース ~紙束に頂いた助言の捉え方~

クラガンウィックシュートの動画にたびたびつくコメントに以下のようなものがある。

「このデッキに裂け目の突破を取ってみたい」

なるほど、確かにクラガンと裂け目の突破はカードとして似ている。当時の砲弾はエムラクールであったし、コンボは同じ仕事をするカードの5~8枚目があればデッキのクオリティーが上がるのだから、手放しで採用するべきであろう。

似てる?

……ということには残念ながらならなかった。
私は最初から「クラガンと裂け目の突破は合わない」と思っていた。
オールインクラガンでサイドに取ってみた時期こそあれ、進化クラガンアグロ(クラガンウィックシュート)では裂け目の突破をほとんど試さなかった。

まあ、裂け目の突破とクラガンはお互いの5~8枚目に「なりえる」ことは正しい。で、普通のブリーチは手札が余った状態で裂け目の突破を唱えることが多かったため、そちらにクラガンが呼ばれないことは想像がつく範囲であろう。ここまでで異論を挟まれることは恐らくない。

しかし、それはクラガンが裂け目の突破を採用しない理由にはならない。
そこまで分かっていたが、私はほとんど試すことが無かった。

以下に記すのは、手元のクソデッキに対して「いれた方がいいよ」と助言してもらったカードに対する、私なりの判断基準の一部だ。
これがすべてではないし、欠陥も多い考え方ではある。それでも、やみくもに試すよりずっと労力が少なくなるだろう。

1.前提

この考え方はある前提のもとで成り立っている。
その前提とは、「全てのカードのカードパワーは近いところにある」という前提だ。

この前提、正しいかと言われれば当然間違っている。
もしこの前提が正しければカードの値段は希少価値によってのみ決まるはずだ。現実は違う。

とはいえ、「カードプールの広めな構築環境で使われうる非禁止カード」に絞って考えてみた場合、ある程度近いカードパワーを持っていると考えるのは、そう外れてないのではないか。

であるならば。
全てのカードパワーが近いところにあるのであれば。
「カードの力を無駄なく使いきれる」方が強いはずだ。
「オーバーキル」な部分は無駄なのである。


2.実例

さて、赤緑のビートダウンに採用する前提で評価をしよう。クラガンウィックと裂け目の突破と異界の進化、それぞれの特徴を挙げて比較する。

5~8枚目(ただしクラガン前提)


評価軸は、前提条件、結果、柔軟性の3軸が丁度良さそうだ。

では、考察を始めよう。

・前提条件

クラガンウィックの死体焼却者をコンボとして運用する場合、手札が砲弾のみであることが求められる。異界の進化からクラガンウィックを出す場合はさらに場に1体以上の生物が必要となる。裂け目の突破は手札に砲弾があるだけでいい。よって一番条件が緩い……とは言えない。
そもそもクラガンウィックシュートは、ある程度手札を減らせるように組まれたデッキだ。
もちろん、手札が余ることはある。
ただ、それ以上にマナコストの大小が問題になることがあるのだ。
異界の進化は3マナ、クラガンは4マナ、ブリーチは5マナ。
ふつうのデッキでは1マナは土地1枚から生産される。すなわちコストが重いということは、それだけカードが余計に必要となる。

だとしてもまあ、前提条件はブリーチが一番緩いと思われる。ただしクラガンに合わせたデッキで使うという前提において、条件の緩さの度合いはあまり大きく開いている訳ではない。

・結果

クラガンと進化は本体15(今は16)点火力だ。
裂け目の突破はパワー15の飛行攻撃と滅殺6だ。
よってパーマネント破壊がついてくる裂け目の突破の方が優秀……なのだろうか?
大前提として、赤緑ビートダウンでこのコンボを使うことになっている。コンボが決まる瞬間には相手のライフが火力圏内になっていると考えるのが自然だ。(コンボが決まる瞬間で5点すら削れてないことが頻発する環境ならば、ビートダウンを使ってはいけないとも言える)
であるならば、確定火力の方が攻撃ダメージより使い勝手がいい。
今回のオーバーキルリソースはこの滅殺6が該当する。
確かに派手だ。しかし、勝つのに必要ない部分なのだ。

・柔軟性

クラガンウィックは腐っても4マナ5/4だ。
異界の進化はそもそもツールボックスルートのキーカードである。
この二種を用いれば、専用コンボパーツとなるカードを減らすことができ、コンボを片手間で成立させることが可能になる。
一方裂け目の突破はコンボ専用カードだ。
あまり専用カードを増やしてしまうと、ビートダウンルートに支障をきたす恐れがある。
柔軟性という観点において、裂け目の突破は劣っている。

・比較の結論

前提条件は裂け目の突破が一番緩いが微差。
コンボ成立後の結果は滅殺6がオーバーキルリソースとなってしまっていてほぼ互角。
柔軟性において裂け目の突破がかなり劣っている。
よって、赤緑クラガンアグロにおいてはクラガンウィック、異界の進化を用いるのが一番無駄がないと思われる。

まとめ

勘違いしないで欲しいのは、別に裂け目の突破が弱いと言いたいわけではない。
ただ、裂け目の突破のもつ利点が赤緑アグロに搭載するコンボとしては無駄が多いというだけだ。
例えば青赤ブリーチ。
裂け目の突破と砲弾をドロー連打で探せて、15点ぶつけても勝ちとは言い切れないデッキ構造をしているがゆえに1度場をリセットする利点が大きいデッキでは、裂け目の突破が圧勝する。
このときはクラガンのもつ柔軟性やコストの軽さがオーバーキルリソースとなっているのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?