ブルースティール ~ハッピーエンドは青い鳥なのか~

昔、こんな戯れ言を言ったことがある。

「ローグデッキを使うのなら、ハッピーエンドはもしかしたら一生来ないのかもしれないことを覚悟しておく必要がある」

ティアクラスのデッキを使うということは、誰かのハッピーエンドを追体験することに似ている。
そこには、勝つに足る確かな物語があるのだ。

もちろん、全てをうかがい知ることは難しいのだけど。それでもトップメタには勝つだけの理由があり、それは使い手であるあなたを幸せにしてくれる。

一方ローグデッキという存在。
勝つ理由がはっきりしたものであるのなら、それはやがてティアを登っていく。
しかし、それがないからローグなのだ。

ローグデッキが勝つことは、死に場所を得ることと瓜二つ。私はそう思っている。

「あのとき、だから勝てた」

過去の栄光を指して紡がれるそれは、故人を偲ぶかのような言葉だ。

もしかしたら本当に死んでいるのかもしれない。仮にトップメタにとって勝利が物語の始まりを意味するのであれば、ローグデッキにとって勝利は物語の終わりだ。

例えば、まつがん先生がSCZのデッキリストをMOに載せたのが死の影デッキの始まりであったように。モダンチャレンジを優勝した日にクラガンウィックの物語が幸せな終わりを迎えたように。

今、仮にブルースティールの物語の終わりを定義するのならば、ランタンコントロールの開発者であるZac氏がグランプリでトップ16に入った日になるだろう。
ローグデッキとしてのブルースティールの物語は、あの日、確かに終わったのだ。
Zac氏はそれ以来、ほとんどブルースティールを回していないはずだ。彼にとってそれはもう、過去の物語になってしまったのだろう。それは仕方のないことだと思う。一介のカジュアルプレイヤーでしかない私だって、もう二度と回さないデッキがいくつもあるのだから。全てのデッキを調整することなど出来ない。 回すのは、思い浮かぶ中で、一番可能性があると思ったものだけだ。

これは、終わった物語の続きを未だ描けてないカジュアルプレイヤーの記録だ。
明言はしておこう。私はまだ、このデッキのポテンシャルを諦めたわけではない。そのうえで、ハッピーエンドのその後を歩んでいると思っている。このデッキを盲目的に信じるには、私はちょっと負けすぎたのかもしれない。

1.ハッピーエンドのその後

ブルースティールというデッキの成立は比較的最近だが、讃美歌店の大建築家のリストを検索すれば、その萌芽を見て取ることはできる。
ではなぜZac氏がGPで上位入賞できたかといえば、歩行バリスタの登場が一番大きかったといえそうだ。

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カラデシュの良心

このカードの登場により、アグロ寄りミッドレンジとしてブルースティールを組むことが可能になったと私は考えている。オールインするしかなったデッキに取り回しのいい介入手段が入った瞬間だった。

(上記URLよりデッキ画像を引用)

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初期のブルースティールの構造は、

・ロード8枚(大建築家+エーテリウムの達人)+疑似ロードの王神の玉座
・1マナ圏7枚
・追加の大建築家として主任技師、エーテリウムの彫刻家
・密輸人の回転翼機4枚
・4.5キルベース
・除去は1スロット、妨害は1マナ域と磁石のゴーレムがクロックと兼任

となっていた。

達人・彫刻家パッケージによるマナクリーチャーの打点回収、磁石のゴーレムの稲妻圏外化が可能であるところが秀逸なところで、これを作った人は天才なんじゃないかなと思った。(ボキャブラリーの欠如)

このころの私は大建築家、ピリ=パラ、マイアの超越種をバイアルやカンパニーからひねり出す謎デッキを組んでカジュアルに遊んでいた。だから、このデッキを見た瞬間ひらめくものがあった。

このデッキのキルターンは4.5だ。
当時のモダン最速より0.5ターンほど遅い。
バリスタは除去であり本体火力でもあるので聖域として、この0.5ターンの足を引っ張っているカードが1種類あった。

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スタンの壊れカード、モダンでは(星の数ほどある)よいカード

密輸人の回転翼機

スタンダードで壊れていると評判だったこの機体、これを展開するターンは盤面を抑え込むことができず、打点もクリーチャー1体を要求する割に低いため、このカードを展開するルートでは、4ターンキルに大きな制約がかかってしまっていたのだ。
このデッキのアグロとしての側面を考えた場合、幸運なことに最高打点を叩きだすカードに心当たりがあった。

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問題児 ブルースティールユーザーからの評判は悪かった模様()

マイアの超越種。

2マナでパワー5。タフネス6。
1/1~3だらけのデッキの中にあって、タルモすら受け止められるスタッツ。
殴る側に回ればファクト2マナでの現実的最高打点。
(狼の試作機? 手札にワムコ残ったときに死ぬから)

このカードの入れ替えにより、速度が改善するだろう。
そう思った私は、ブルースティールの動画のパート1で回転翼機をマイアの超越種に差し替えたデッキを回すことにした。

当時は若く、プレイングが下手でした

2.本当のウィークポイント

マイアの超越種の採用後、いくつか気が付く点があった。
ひとつ、マイアの超越種は場に出た場合の圧が高く、壁性能も高い。
攻守を切り替えるキーカードとして十分機能していたので、私はしばらく使い続けるだろうと思っていた。


そしてもうひとつ。
達人と彫刻家。2枚のエーテリウムが割と弱い。

まず、エーテリウムの彫刻家の方から理由を話そう。

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こいつは2マナ1/2で1マナしか産まない
高速でアーティファクトを展開するデッキにとってはコスト軽減は大きな価値がある。
しかしブルースティールはどちらかといえば大型ファクトを1ターン1アクションで叩きつけるデッキだ。大建築家との組み合わせは「マナ域通りに展開できるなら」強い。逆手順で引けば、こいつは3ターン目に出ないアーティファクトでしかない。

では、なぜ原型のブルースティールにこいつが4枚入っていたのか。マナクリーチャーがアーティファクトであることはデメリットなのに。追加の1マナ域、名高い武器職人。他にも選択肢はいくらでもあった。もちろんそいつらを押し退けて入る理由があった。エーテリウムの達人だ。

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一人回しをしていると、エーテリウムの彫刻家から展開したときの気持ちよさたるや。マナクリーチャーを打点として回収する手段のひとつ。ロード8枚体勢になったブルースティールは紛れもなくデッキだ。

そう思ってリーグに潜ると、あれ?達人のサイズが思ったよりも伸びない。
一人回しではパワー4~5ぐらい。これは実質7~9。だから気持ちいい。

では、例えば対ジャンド。
彫刻家に稲妻が落ちた。バリスタはボブと交換。
手札に残った達人を見る。
パワー3。タルモを越えられない。

介入には滅茶苦茶に弱い。それが、エーテリウムの達人の正体だった。
それでも彼は軽くて太いカードだった。だから必要悪……ん?

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私のデッキには既にマイアの超越種がいる。
達人彫刻家パッケージは単品で強いカードに代替できる。

ここが一つの転換点だった。
マイアの超越種が追い出すのは、密輸人の回転翼機ではなくエーテリウムの達人だった。
大建築家からのブン回り。
その足を、青マナを要求するファクトが引っ張っていた。

彫刻家が抜け、達人が抜け。
代わりに得たのは、単品で強いカードである超越種フリースロット。
何を入れるかは迷った。
回転翼機を少数戻して、若干重いカードである粗石の魔導士を入れて。
じゃあ他に何かないか。
迷っていたときに、あるコメントが目に入る。

「このデッキにサリアを足してみたい」


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あっ(察し)


サリアは殴れる妨害カード。
タッチして使うと結構仕事をする1枚。もちろんメインプランを弱めるカードではある。それでも当時は強いカードであった。

3.サイドプラン(本音:対青白むーりぃ)

当時の青白コントロールは、ギデオンがフィニッシャーだった。

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消させろや!

ブルースティールはある程度面展開し、妨害をヘイトベア能力を持った1マナ生物で潜り抜けるデッキだ。
しかし、至高の評決はそういったプランの全てを否定する。
一応、回転翼機が強いマッチアップではある。
サイド後の石のような静寂を考慮しなければ、だが。

PWを出されて、返しで落とせなかったところに至高の評決
これがよくある負けパターンだった。

これを改善するにはどうすればいいのか。
回避能力持ち機体というのは一つの回答だった。
しかし機体は守勢で弱く、攻勢でも最大打点とは程遠い。
ではサイドに置いたとしよう。
そのカードが相手のサイドカードであるストーニーに引っかかるのはプランとしておかしい。

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前提条件

仮に盤面に1/1飛行がいるとして、ストーニーの有無にかかわらず4マナのギデオンを返しで落とせるカードが望ましい。
とはいえ、そんな都合のいいカードなんてあるわけが……。

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あった。

このデッキでリーグ5-0までは出来た。
それ以上の成績を残すことは、残念ながら出来なかった。

4.今、振り返って

今、このリストを見ると、「おっくれってるぅー!」と叫びたくなる。
少なくともジャンドにレンと六番が入った今、サリアをタッチしてまで採用する意味は薄い。

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サリア・キラー

リーグ5-0からしばらくして、私はブルースティールをメインデッキとして使わなくなった。惚れっぽく飽きっぽい私の使うデッキは、コロコロと入れ替わっていく。
もちろん、カードの確認自体は欠かさずにいた。

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ニンニクマシマシ油カラメ。能力が全部噛み合う。神ジェイスより軽い。

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最強1マナ域。コイツが登場後の1マナ域は8枚安定。でも対レン六×

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サイドカードと玉座と超越種の三方天秤

クラガンウィックではどうしようもなかったホガークヴァイン相手にバリスタでブリッジを追放させられる。そう思って再登板させた時期もある。

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使っていて、楽しかったことを覚えている。
それは土地コンボレンと六番の居ない、歪んだメタゲームでの話だ。今使っても楽しいと思える自信は、残念ながら無い。

結局、マイアの超越種と呼んで憚らなかった私は、どこかですり減ってしまったのだろう。
今の私は、奴を愛人と呼んでいる。
(勘違いしないで欲しいが、アロサウルスはあくまで乗り物である。そこに愛はない)

物語の続きを見たい、描きたいと思っている。
同時に、懐かしい思い出を汚されたくないとも思っている。
そんな私がブルースティールを使わなくなって、もう1年になる。

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ダブルマスターズ再録!

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