7 Days to End with You 感想
基本データ
プレイ環境
PCプレイ時間
7hプレイ日程
2023/6/26-2023/6/27クリア状態
エンディングコンプでギャラリー解放済み
感想
完全に未知の言語状態に記憶喪失で放り込まれて知らぬ人と暮らすゲーム
オリジナリティの高いゲーム性
ゲーム序盤に見せられる最もゲームを端的に表した画面が上記の通りである。
メッセージは何もわからないし、わかる要素がマジで何もない。
このように言語体系から完全にわからない、記憶も失ってしまった主人公が目覚めるところから始まり、画面の女性と7日間暮らす物語である。
その状態からどうやってゲームを進めていけばいいのか?となりそうだが、そこはあまりにも有名な逸話である金田一京助がアイヌ語を習熟した方法よろしく、ポイント&クリックの操作性で対象を指定することで彼女から言葉を引き出して自分の中の語彙を増やして物語を理解していくことが目的となる。
このように聞くと割と簡単な気がしてくるが、正直相当に難しいゲームだと思う。
序盤こそ目についたものを聞いていくことでやや少しずつ確定する単語が増えていくものの、感情とかのようなあやふやなものはかなり理解が難しく文脈的にこの辺かな?とあたりをつけても後で全然整合性が合わなかったりと苦労を強いられることになる。
システム的には一応補佐をある程度してくれるようになっており、単語から想定した言葉を記入すると表示されるようになったり、今まで見聞きした単語のリストを確認できたり、単語が利用されたシーンの回想をすることができる。
このような制約の中で展開されるシナリオは正直一周でわかるものではない。
1周目は割と本気で内容理解しようと頑張っていたのだが、それでも全然わかんなかったなというので2時間くらいであった。毎日の終わりに会話だけじゃ正解にたどり着けないなという単語が一つずつわかるような演出がある(周回しても順番も内容も固定)なので、2週目以降を本番としてこういうシナリオだったのか?と自分の中で確信を深めていくのが良いと思う。
語彙がわかるにしたがって理解が深まるシナリオ
初回では本当にしゃべっていることの8割は何もわからず、状況などからこんな感じなのかな?としか理解できなかったシナリオが、周回を重ねるにつれて、あれ?もしかしてこういうことなのか??と理解が深まっていくのは素直に気持ちよい。
Steamレビューなどで2h程度で終えている人も散見されるが、少なくとも8割くらいはこういうことなんだろうな、とシナリオを理解するくらいにはちゃんと向き合う価値があるとは思う。
(ゲームの紹介にある通りあなたが思ったことが正解の解釈という見かたも嫌いではないが、個人的にはより”正しい”解釈がちゃんとできるまでゲームに向き合ってほしいとは感じる)
イマイチなシステム面
かなり難解で文脈から単語の意味を想像しなければいけないゲームであるのに、会話ログは遡ることができない。
ここでこの単語ならさっきのはこういうことだった?とか思っても遡れないので探せなかったりするところが問題点として挙げられる。
単語のプレイバックでも前後の会話が確認できないことや、ポイントクリックでの会話の場合どれのクリックだったかわかりにくいことも後から見返すのには結構辛いものがある
言語学者シミュレーターではない
そりゃそうではあるが本当の言語学者になっての言語解析ゲームではない。理由としてはこちらから起こせるアクションが非常に少ない(ポイントクリックしかない)というのが主な理由となる。
本当に言語を学ぼうと思うのであれば、初手「what」からの「Yes、No」あたりはすぐにジェスチャーなどを用いて判明させたいところであるが、こちらからできるのは物を指すだけでありこちらから話しかけることはシナリオ中の重要な選択数か所を除いて何もできない。
このような部分はできることを抑えたインディー的な作りだなと納得するしかないが、若干こうしたいのになぁという気持ちは持ってしまう。
それ以外にもゲームの都合で女性の回答が変に婉曲した表現になっていることも難しさの一因となっている。
物を指して言葉を推測するのが根幹になっている以上、概念・感情などの物質ではないものを指す語彙を得るためにわざと婉曲した回答が女性からされることが多い。
例えば時計を指したときに「時計」という回答は返ってこない。(それどころか本作には時計という単語は存在しない)
そのようなことを含め言語の理解が一筋縄ではいかない作りとなっている。
選択肢の不満(微ネタバレ)
後半には覚えた語彙から回答するシーンがあるが、エンディング分岐に関係する。
逆転裁判とかのような推理系のADVをすると絶対一度は感じたことがあるだろう、この選択が想定解なの!?っていう部分があり、個人的には納得できなかった部分がある。
もっと自由に組み合わせなどできればよかったのかもしれないが、それはそれで判定とかが難しいので悩ましいところ。
ちゃんとしたとは評価しがたいローカライズ
本作におけるローカライズは、部分的に存在する主人公のモノローグや最初の導入などに対して行われている。
そもそもが言語を理解していくゲームのため女性の話す言葉そのものは当たり前だが変更がされていない。
一方で日本語の指す単語と外国語の指す単語のカバーする範囲が違ったりと、どうしても言語というものは差が出てくるものであり特に本作のような言語を理解していくというゲーム性を鑑みたときにローカライズが完璧にされていたという評価は行いにくい。
勿論難しいことは承知ながらここに関してはどうしても差が出てしまっているなという印象。
総評
新しいゲーム性を表現しながらも、その新しい発想が持つポテンシャルを完全には活かしきれなかったと思う勿体ない作品に感じた。
インディーの規模であるためプレイヤー側の動作の広がりなど広げた実装はしにくかったんだろうなぁという思いは汲みつつ、これだけ優れたアイディアで何をやっても同じ系統の作品は出せないことを思うと勿体ないと思わざるを得ない。
それでもこれだけ斬新なゲーム性も珍しく、新しい感覚のゲームがしたいという時には間違いなくよいゲームだと思う。
点数 : 77点