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【episode17】明治神宮への初詣と三度目のトライ
レモン君と別れた後は仕事に邁進した。
というより、せざるを得ない状況だった。念願のファッション業界への転職で正社員のPRアシスタントになったものの、その会社もまたブラック企業、しかも家族経営の会社だった。
会長がパパで、社長がママ、私の上司のマネージャーが娘。兄は親会社の専務、弟は別の子会社の部長というポジションだった。
たとえブラックな働き方であったとしても、仕事の内容的には業界に関われるだけで新鮮で楽しかったし、同僚もいい人たちばかりで助け合っていた。私がPRしたものが雑誌に掲載されたり、展示会の準備をしたりして充実していた。百貨店や商業施設、セレクトショップとの交渉もしていて、取り扱いが決まった時は嬉しかった。
12月は一番の繁忙期で、22日連勤することになってしまった。店頭のスタッフが足りない時期なので、私が店頭にも立つことが続き、そんな中、休みは元旦だけ。大晦日までショップ営業して、2日から初売、そんな時代。
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たった1日だけのお休み、元旦の日。
帰省せずに東京にいたツイン君と
明治神宮に初詣に行ってみよう!ということに。
長い長い行列に寒い寒いと並んで待つ間も、話が尽きない私たち。
気が合うってこういうことだよね、と密かに感じていた。
明治神宮でお参りした後、元旦ということもあって、食事する場所がなかなか見つからなくても、それもまた楽しい時間だった。
渋谷に辿り着いて、ようやく営業している居酒屋に入ることができた。
元旦に二人で初詣に行って、一緒にごはんを食べている。
それだけで嬉しくもあり、切なくもあった。
(やっぱり彼は、私にとって特別な人だな)
そう感じた。
(ちなみに今年、ツイン君の口から「明治神宮に初詣行ったよね。」という発言があったので、彼も覚えているらしい)
初詣に一緒に行ってからの私は、ツイン君の現在の状況を確かめたくて仕方なくなった。
二人で食事をする時は、主に仕事の話をしていて、彼女の話はほとんどしたことがなかった。
「彼女とは結婚しないと思う。」
という話を聞いたことがあるだけ。
私はといえば
最初に特別な感情に気がついた27歳の時
二度目のトライは28歳で
気持ちを伝えたつもりだった。
31歳で三度目のトライか・・・・
私はまた傷つくことを恐れて、恐すぎて
LINEでなんとなく自分の気持ちを伝えながら、
ツイン君と彼女との関係について聞いてみた。
好きと伝える勇気なんてものはなく、予防線を張ったのだ。
「転職する時に支えてもらったから、別れることは考えてない。」
そんな返事だった。
三度目も玉砕かぁ…
彼女とは結婚しないって言ってなかった?
別れることは考えてない、だけど結婚はしないってこと?
私は一人で考えるだけだった。
もういい加減、諦めよう。
今度こそ忘れよう。
他の人に目を向けよう。
本当にそう思った。
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高校の同級生のキャプテン君とドライブに行ってイチャついてみたり
大学の先輩と映画や食事に行ったり
大学の同級生を家にあげて変なムードになったり
親の紹介で医者とお見合いしたりもした。
それでも、私の新しい恋は始まらなかった。
そこに突如登場したのは、少年彼氏だった。
それまで、連絡を取るのはお互いの誕生日の1年に2度だけ。
しかも忘れたり忘れられていたこともあったので、毎年ではなかった。
アメリカからの帰国後、九州で就職していた少年彼氏から
「東京に転職活動で行くから、泊めて。」と突然連絡があったのだ。
少年彼氏とは、別れてから4年が経っていた。