チャビと名付けた猫の話
4月。
暖かい陽気とひんやりした風、さくらの咲く頃。
ある一匹の老猫を保護した。
ひと月前ぐらいから姿を見せたその子は、
人慣れしていなく、ガリガリで、毛も汚れ、目はほとんど開けられず、顔はボロボロだった。
きっと近所の人が餌やりだけしている野良猫(地域猫?)なのだろう。
家の玄関先でのんきに日向ぼっこしている彼を見て、少しずつ仲良くなっていけたらなと思った。
人慣れはしていなかったので、最初は近づこうともしなかった。
でもご飯をあげて、話しかけると段々と距離は縮まっていった。
ちゅーるを出す手が怖かったのか猫パンチをおみまいされた日もあった。
だんだんと距離が縮まって約1ヶ月。ついに触ることができた。
尻尾の付け根をトントンしたら気持ちいいゾーンだったらしい。
嬉しそうににゃんと鳴いて、身体をスリスリ。
急に仲良くなれた感じだ。調子に乗って顔を触ってみたが、これもスリスリ。
どうやら顔は皮膚病らしい。猫ならばもっとムニムニしているはずの頬が固かった。
顔を自分で搔きむしって、顔はひっかき傷だらけだし、身体はなんか毛がむしられている。
性別を確認してみたらオス。去勢もされていない。他の猫たちと喧嘩でもしたのだろう。
本人はちょっとビビりながらも、撫でられることの喜びに目覚めてしまったらしい。
せめて去勢手術だけして地域猫に戻せないか?(これをTNR活動というらしい)
そう思った私はこのガリガリの彼を保護しようと決めたのだった。
さて、保護しようとは思ったのだが、現在うちには12匹の猫がいた。
本当は1月に1匹かいちゃんと呼んでいた愛猫が亡くなってしまったのだが。急死してしまってまだ家にいる気がするので12匹である。
猫は基本的に実家にいるので、家の猫たちと鉢合わせするのはリスクが高い。
ちょうど事務所の近くに現れた子だったので、このまま事務所で別室隔離をしよう。
事務所とはいえ持ち家なので、ペット不可とかそういうのはないので安心してほしい。
どうやって家に招き入れようか?
捕獲機?洗濯ネット?餌で釣る?
とりあえず抱っこできないか試してみよう。
………抱っこできた。
思いのほか抵抗せずにひょいっと持ち上げられたのだ。
この子本当は人慣れしてるんじゃないの?飼われてたのが逃げ出した?
ぎゅっと抱きかかえて、そのまま玄関へ入り込んだ。
突然外の世界から屋根のあるおうちに入れられ、彼は縮こまっていた。
彼も仲良くなってから一瞬で部屋に連れ込まれるなんて思っていなかっただろう。
人間に対してそんなことしてたら通報されるレベルの所業である。
うずくまっている彼の身体チェックをそのまま玄関でやった。
皮膚病、猫風邪……骨格から年齢も相当いってそう。10歳はいってるかな。
さてどうする……部屋は空いてないし、事務所には1匹猫がいるのでリビングに放し飼いはできない。
確か妹がケージを持っていたので持ってきてもらおう。
あとはやっぱり、とりあえず病院だな。
各所に連絡を済ませ、動物病院へ向かった。
動物病院ではノミ取り、痒み止め&抗生剤を注射してもらった。
彼は暴れることなく、終始疲れていたのか鳴くこともなかった。
帰ってきて30分後ぐらいに妹がケージを持ってきてくれた。
猫キャリーから出してみたら暑かったのか興奮してたのかゼェゼェ…
ごめん、突然家に入れられて病院まで連れていかれて、慣れてない人たちに囲まれて、めちゃくちゃ緊張したよね。疲れたよね。本当にごめん。少しでも早く助けたかったんだ。
暑くなっている身体をクールダウンさせるために風を送りながら、後悔の念を呟いた。
次の日、まだ緊張は残っていたが、ご飯の後にグルーミングを見せてくれるなど、猫らしい部分が見えてきた。
ノミ取りスプレーを撒かれたので毛はボサボサである。
ケージはさすがに狭いようで、ときどき暴れまわっては疲れて、寝てまた鳴いて暴れての連続だった。
さすがにずっとこのままではかわいそうなので、荷物の置かれている部屋を空けて、彼専用の部屋にした。
チャビ。
彼をそう名付けることにした。
尻尾が茶色いからという安直な名前だが、呼びやすさから結構気に入っている。
チャビもそう呼ぶと返事をして、尻尾をフリフリとしていたので、まんざらでもない様子だ。
彼はよく人間の言葉を理解できる子だ。
トイレはここだよって教えたら次からほぼ失敗しなくなった。爪も切らせてくれた。
シャンプータオルで顔や身体を拭くのも嫌がらなかったし、オス特有のマーキングも全くしなかった。
やはり飼われていたのが脱走したのだろうか…。
それにしてはもう毛の色が変色するぐらいお外にはいたし、顔つきが歴戦の勇者って感じなのだが…。
特に前足の内側は、顔の皮膚病が痒かったからか毛繕いを過剰に行うため、酷く汚れていた。
4/4 保護から2日目
呼吸の速さが気になった。猫は40回/分ぐらいが標準なのにチャビは60回/分ぐらい呼吸をしている。
3か月前に心臓病で亡くなった子のこともあり、呼吸にはかなり敏感になっていた。
初めて病院に連れて行った際に、お腹の張りが気になるとも指摘された。
4/5 保護から3日目
皮膚が少し綺麗になった。
ただ、少し赤く腫れている。このまま治ってくれるといいけど。
4/8 保護から5日目
赤く腫れていた部分から膿が飛び出した。朝チャビの部屋を開けたら、そこらじゅうに膿が悲惨して大惨事。
違和感で耳の後ろを掻きむしったせいで、内出血のような新たな傷ができてしまった。
除菌シートで膿を絞り出して、とりあえず傷は塞がってくれた。耳が腫れていて痛そう。呼吸も早い。
この日は去年保護した子猫たちの避妊手術当日。朝から忙しくて病院には連れていけなかった。
4/9 保護から6日目
午前中は避妊手術が無事終わった子達のお迎えに行った。
午後の診療でチャビを連れて行った。まだまだ膿が溜まっていたのと、膿による高熱。
検便もしてもらって、回虫が確認された。猫エイズ陽性、白血病陰性。
呼吸が荒いことによるレントゲンと血液検査を希望だったが、炎症が起きて正しい数値が出ないことが多いため見送りに。駆虫薬と抗生剤を処方された。
4/10 保護から7日目
夜泣きが酷かった。様子がおかしくて、何度も夜中に見に行った。
しきりにご飯を入れてある箱を気にしていたので、ご飯をあげたらめちゃくちゃ食べた。
朝になり見に行ったら、大量のウンチの中に回虫がビッシリ……
どんだけ虫飼ってたんだよ。駆虫薬でお腹痛くなっちゃってたのかな。なんにせよ退治できてよかったです。
4/12 保護から10日目
レントゲン希望で病院に連れていったが、診察時間ギリギリだったためレントゲンは撮れず。
耳の膿の処理と抗生剤の処方のみ。
ちょっと嫌そうだったけどカラーをつけた。
ここまでの診断で分かったこと…皮膚病、猫エイズ陽性、お腹に回虫。野良猫オンパレードの内容だ。
特に猫エイズに関しては不治のウイルスなので心配だ。いつエイズの進行に影響があるかわからない。ストレスの少ない生活を心がけた方がいいかもしれない。
ただ、食欲はめちゃくちゃあるし、猫エイズキャリアに多い口内炎はないのが唯一の救いだった。
TNRに関しても、猫エイズのストレス抑制のために麻酔を伴う手術は危険なんじゃないか…
高齢なのかオス特有のマーキングなどもない。もうこのまま保護してご飯もあたたかい部屋もある環境で余生を過ごしてもらう方が幸せなんじゃないかと思った。
4/14 保護から12日目
チャビの調子が悪そう。晩ご飯をあまり食べなかった。
足取りも重く、すぐに横になる。うんちも下痢をしていた。
下痢は抗生剤の副作用なのか…はたまた別の病気などが原因か。
薬を飲ませた後にもう一度ご飯をあげたら完食した。そういう気分じゃなかっただけ?
呼吸は早い。部屋から出ようとすると甘えてくる。
チャビちゃんご飯もお薬も完食してえらいねって褒めたらドヤ顔してた。大丈夫かな?
4/15 保護から13日目
呼吸が早く、肉球に汗かいてる。熱が出てる?
食欲はあり、鳴いて闊歩できるぐらいには運動できる。
どういう症状なのかわからず判断に困る…。
4/16 保護から14日目
避妊手術した子猫たちと一緒に病院へ。
レントゲンを撮ってもらった。結果は肝臓あたりに何か疾患がある?とのこと。
心臓回りはきれいな状態だったことに少し安心。次は血液検査の予約をした。
帰宅してからも食欲はあり。
4/17 保護から15日目
朝も食欲あり。うんちは下痢ぎみ。
病院ストレスもあるだろうし、私の予定もあったのでゆっくりしてもらっていた。
夜になりご飯をあげても半分残した。薬を入れたちゅーるは完食。
大好きな毛繕いもあまりしない、お部屋のお散歩も途中で横になってしまう。
4/18 保護から16日目
食欲が戻らない。朝ごはんは半分、お薬ちゅーるは完食。
口も肉球も白い。貧血かもしれない。ずっと寝てるし元気もなさそう。
レントゲンでは何もわからなかったし、血液検査で何かわかるのかな。
つらそう。ご飯も食べない。病院行ったばかりだし頻繁に行くのはストレスじゃないかな。
どうしよう。どうしようどうしようどうしよう…。
動物病院が開く時間になり、とりあえず電話してみたところ、血液検査すぐできるので来てくださいとのこと。
結果はやはり貧血。
直接の原因はこれから探っていくが、猫エイズキャリアで貧血だけ発症することは稀とのこと。
口内炎もないし、エイズの発症ではなく、耳の傷や何か別の原因らしい。
免疫剤と造血剤の注射、鉄剤も処方された。
前回レントゲンで指摘された肝臓や内臓の数値は標準だということだけは救いだった。
帰ってからパウチを1袋食べた。ご飯が食べられて何より。
4/19 保護から17日目
日付が変わったぐらいから更にしんどそうになった。
トイレまで行けなくて寝床の近くでうんちをしてしまっていた。
ご飯も食べず、ちゅーるをなんとか1本食べてくれた。
朝ごはんはパウチ半分。お薬ちゅーるもお願いと鼻に近づけてなんとか食べてくれた。
貧血が酷い。耳も口も肉球も真っ白。たまに立つけどすぐにへたり込んでしまう。
昼過ぎ。やっぱりつらそう。
トイレに行って下痢をして倒れ込み、口呼吸。ヨダレもだらだら。
口呼吸はやばい。
見てるだけでもつらそう。
鉄剤を飲ませるべきか?造血剤はいつ効くの?
色んなことを検索した。でも自分ができることはそれだけだ。
チャビに対して何もできない。チャビはゼェゼェとお腹で息をしながら必死に生きている。
病院に行くストレスは?治療できるだけのお金は?野良猫は死に場所を選びたいのでは?
たった2週間しか保護していない猫にどこまで手を施すべきなのか?
そんな考えはたくさんあった。
それでも目の前で苦しんでいる猫がいる。
絶対に助けてあげたい。
「すみません、そちらの病院で輸血はできますか?」
チャビが大きく息をしている横で、私は動物病院に電話をしまくった。
「輸血はちょっと…血液バンクがないので」
そう何軒か断られた。
猫の輸血は人間と違ってなかなか血の確保が難しいらしい。
それでも食い下がって、ドナーになってくれる健康な猫を2匹連れてくる条件で、
やっと1件緊急で診てくれる病院が見つかった。
自宅から高速を使っても1時間ぐらいかかる病院だったが、一刻を争う状況ではこの選択をするしかなかった。
近所の病院はほとんどお昼休みで電話がつながらなかった状況も含めて最善だったと思う。
血液ドナーに関しては幸い、うちには12匹も猫がいる。
私の猫たちは高齢が多かったため、妹が部屋でかわいがっている2歳の健康な猫たち2匹を借りてすぐに病院へ走った。
15時過ぎ。
チャビもドナーの猫たちも車で長時間走るのはさぞストレスだっただろう。
人の言葉がよくわかるチャビのことなので、たまに話しかけながら病院へ向かった。
ガタガタ揺れてごめんね。今から高速に乗るよ、ここで高速乗り換えするんだよ、とか、絶対猫も意味がわからないことを話題にしていた。けど、チャビは騒ぐこともせず、ただただうずくまって、必死に息をして、我慢してくれていた。
病院について、早速お預かりしますと言われてチャビを預けた。
診療時間になり、診察室に呼ばれる。
まず、レントゲンとエコー検査。これは結構状態が悪かった。
心臓回りにモヤがあり、胸水が少しだけ溜まっている。肺水腫という病名だ。
呼吸困難の原因はこれも大きいようだ。
肺水腫……
1月に愛猫かいちゃんが先立った原因も心臓病からの肺水腫だった。
発見が遅くて、病院で治療中もずっと苦しそうで。
このまま衰弱していく手遅れの状態だったので、安楽死を決定した。
本当に本当に、こっちまで心臓が止まっちゃうぐらいショックで、急にいなくなっちゃって、
寂しくて悲しくて悔しくて、今でもスマホに残っているカメラロールを遡るとあの時を思い出してしまう。
そんな病気にチャビもなっていた。苦しいだろうに。
ただ、チャビには少し希望があった。
胸水は確認できるが、心臓は肥大化していないようだ。
猫の心臓病は心臓が肥大化する心筋症が多いため、レントゲンやエコー検査ですぐに分かるのだが、チャビには明らかな心筋症は確認できなかった。
確かに、かかりつけの病院で撮った時も心臓は綺麗と言われていた。
「今は酸素室に入ってもらってるので、休んで呼吸を安定してもらいます。
貧血の原因は今検査をまわしているので、少し待っててください。」
チャビの主治医となる先生は、説明もしっかりしていて、手を尽くしてくれると言ってくれた。
酸素室で落ち着いてもらっているが、もちろん命のリスクも0ではないと念を押された。
病院の診療時間が終わる頃、やっと血液検査の細かい結果が出た。
昨日の血液検査から変わらず、ヘマトクリットが14%。重度の貧血のままだった。
他白血球が昨日より増加していた。感染もしくはどこかで炎症を起こしているとのこと。
また、先生が気になっていたのはアルブミン。肝機能が低下している可能性があるとのことだった。
また黄疸の値も正常値ギリギリで、重篤な状態だということは私でも分かった。
貧血に関して、検査結果からの考察は
再生性の貧血、そして身体の中から出血は見られなかったので、溶血性貧血ということだった。
溶血性の貧血で上げられる疾患は、
感染、中毒、免疫介在性疾患、遺伝性があげられた。
中毒と遺伝性は悪いものは食べていない、高齢ということもあり除外。
免疫介在性疾患に関しては犬に見られることが多く、猫では稀だという。
残り1つの候補にあったのが感染症だった。
マダニなどから媒介されるヘモプラズマ感染症である。
ヘモプラズマ感染症は貧血、発熱、食欲低下などを招き、特に猫エイズなどのキャリアを持っている猫だと発症率が高いらしい。
外注検査でヘモプラズマに感染しているか判明するのだが、数日かかるため、ヘモプラズマ感染症だと仮定して治療していくとのことだった。
ヘモプラズマ感染症に関しては色んな文献が検索で出てくるが、特にこの病院のブログが参考になった
心臓に関してはレントゲンやエコー検査では明らかな心筋症だという診断が取れず、循環器専門の先生に見てもらう他、別の可能性を探ったりしていくらしい。
ちなみにチャビの血液型はB型だった。
猫の中でも比較的珍しい血液型だった。
輸血は難しいか…少し落胆しながらも連れてきた2匹の猫たちの血液型診断もしてもらった。
結果はA型とAB型で、チャビとは血液が適合しなかった。
ちなみにAB型の猫はめちゃくちゃ珍しい(1%ぐらいしかいない)ので先生も驚いていた。
血液型を聞いて、輸血は無理か…と落胆していたら
「スタッフさんの猫ちゃんがB型らしいので、供血できそうです。大丈夫ですよ」
と先生から神の一言を頂いた。
ここの病院スタッフみんなでチャビの心配をして全力でサポートしてくれている。
本当にありがたい。万が一の輸血もできることで、少し心が軽くなった。
チャビはこのまま入院することになった。
酸素室で呼吸を落ち着けているが、まだまだ気は抜けない状態。
ふと1月に亡くなった愛猫のことを思い出した。
朝方に急変して、そのまま帰らぬ子となってしまった。
チャビも今夜が山だろうなと感じた。
かいにゃん。私はあの時助けられなかった。だからせめて、チャビは助かってほしい。
「絶対迎えに来るからね。大丈夫。すぐ元気になるよ。」
酸素室の中でグッタリしているチャビにそう残し、帰路へと向かった。
4/20 保護から18日目
帰ってきてからも不安でたまらず、ずっと落ち着かなかった。
きっと今晩が勝負だ。でも、家で何もできない状況よりは病院ですぐに処置できる方がいいに決まってる。
一旦落ち着こうと布団に入ったら疲れがどっと出た。
最近はチャビの行動に合わせて、鳴き声が聞こえたら夜中でも起きて見ていたし…
こちらも寝不足だ。
具合の悪そうな猫がいる時点でそりゃあ眠れない。
あとは、緊急の電話さえ来なければ……
1月の寒い朝。6時ごろにかいちゃんの容体が悪いと電話を受けたことを思い出した。
もう3か月前のことになるのに、相当トラウマなんだろう。
眠りは浅かった。起きては電話が来てないかスマホを確認し、何もないことに安堵して寝るの繰り返しだった。
朝。緊急の連絡は来なかった。
よかった。連絡がないことが一番の吉報だった。
お見舞いにはいつでも行っていいとのことだったので、今日はお見舞いに行こう。
動物病院に電話して、チャビの状態とお見舞いに行ってもいいか問い合わせた。
問題ないとのことだったので、さっそくチャビに会いに行った。
病院で案内を受けて入院室へ。
昨日預けたばかりなのに、久しぶりに会うような感覚だ。
酸素室に入っていたチャビは、こちらを見て気付いたのかにゃおにゃお訴えていた。
「貧血、呼吸に関しては変わらず…現在、強心剤と利尿剤、抗菌剤などを投与しています」
現場スタッフさんから治療の説明を聞いた。
呼吸はまだ荒かったが、昨日より全然元気そうだ。暴れまわっているのか、シーツはぐちゃぐちゃでお水の器もひっくり返して……
ぐったりしているより全然マシだ。心なしか舌の色もちょっとピンク色になってきてるんじゃないか。
カラーが嫌なのか取ろうとがんばって暴れていた。点滴もしているのにこんなに暴れて大丈夫なんだろうか。
お見舞いに来て20分ほどだろうか。
チャビも鳴き疲れ暴れ疲れて寝始めたので、その場を後にした。
夜、主治医の先生から連絡がきた。
強心剤と利尿剤で胸水は消滅したと言っていた。肺水腫が落ち着いて、呼吸がだいぶ楽になったそう。
貧血に関しては変わりなしだが、元気が戻ってきたため輸血も見送っている。
抗菌剤を投与したことにより元気になってきたので、やはり貧血の原因はヘモプラズマ感染症で間違いないでしょうとのことだった。
呼吸が落ち着いてきたので、酸素室の酸素も少しずつ量を減らしていく様子。
心配していた心筋症だが、やはり明らかな心筋症の要素は見当たらないという。
おそらく、ヘモプラズマ感染症による貧血で血のめぐりが悪くなり、一時的に心臓負担が大きくなってこのような症状が出たかもしれないとのこと。
この心筋症に関しては、貧血の症状が落ち着いてから改めて検査しましょう、という方向に落ち着いた。
腹水はまだ少しあるが、少量のため経過観察。
ほか、肝臓などの病気に見られるアルブミンも正常値に戻ったとのことだった。
電話が終わり、一気に肩の力が抜けた。
先生の細かい説明もそうだが、全体的に快方の方向に向かっているのが本当に救われた。
今日はよく眠れそうだ。
明日もまた、時間見つけてお見舞いに行こう。
でも、私が次のお見舞いに行くことは、なかった。
4/21 保護から19日目
今日は午後にお見舞いに行こう。
息子と昼ご飯を食べながら、チャビのことばかり考えていた。
そのとき、一本の電話が鳴った。
動物病院からだ。
「お世話になります。チャビちゃんの容体ですが……。
めちゃくちゃ元気で呼吸も安定してて、もう大丈夫そうなので酸素室からも出ました!!
これから特に問題なければ、明日退院できます!!」
ええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
一昨日は貧血で死にかけてたのに!?
本当……えっ?大丈夫なんですか?本当に??
主治医に何度も確認したが、本当に大丈夫そうだ。
貧血の値も正常値とまではいかないが回復傾向にあるらしい。
特にチャビ本人は相変わらずにゃんにゃん鳴いて暴れまわり、ご飯もしっかり完食して、快方の一途をたどっているようだ。
1週間前後の入院と聞いていたのに、まさかこんなに短くなるとは。
何も連絡がなければ明日、夕方以降にお迎えに来て下さいという。
そんなすぐに迎えに行っていいんですか。
またチャビちゃんと暮らせるんですか。
よかった。本当によかった。
かいにゃんみたいなことにならなくてよかった。
チャビも驚異的な生命力で本当によくがんばった。
4/22 保護から20日目
夕方。チャビの入院先の病院へ向かう。
診察室へ通り、チャビの診断について主治医からお話があった。
朝の血液検査ではヘマトクリットが24%。正常値とはいかないが、かなり貧血の改善が見られた。
赤血球などの数値も軒並み改善している。
また、血栓の数値が少し高かったため、それも薬を使ったら解消されたという。
貧血の原因だが、外部に出した検査結果も出ていた。
やはりヘモプラズマに感染していた模様。しかも2種類も。
ヘモプラズマに関しては、身体の中からウイルスは消えない根治のできないものらしく、
猫エイズキャリアもあるのであまり他の猫との接触は控えるようにとのことだった。
根治はできないが、検査結果が陰性(-)になるまで治療を続けるとのこと。
また、心臓に関しても貧血が落ち着いてから診断するとのことで、まだ通院は続けなくてはならない。
とりあえず1週間は薬を飲み、次回は血液検査をするとのこと。
まだまだ通院が続く。猫エイズに影響するストレスが心配ではあるが、発症していない病気より目に見えて心配な病気の治療をした方が良いだろう。
ほか、色々と所見が報告されたが、若干の腹水や、肝臓・脾臓などが悪いとのことで、これも通院と共に診断していくとのことだった。
主治医からの説明が終わり、お礼を伝える。
チャビは受付で引き渡しされるそう。ドキドキしながらチャビの到着を待つ。
病院内のスタッフさんが見慣れたキャリーを持って私の名前を呼ぶ。
キャリーの中には不安な顔をしたチャビが入っていた。
「チャビ~~~~~~~~~~~!!よかった!!本当によかった!!」
キャリーを抱きかかえて喜んだ。
これだけ嬉しかったのはいつ以来だろう。
多分息子を産んだ時とか以来じゃないか?
車の中でキャリーを開けて感動の再開を迎えた。
「チャビ。おうちに帰るよ」
高速で1時間もかかる家まで、ゆっくり、チャビに声をかけながら、これからのことを考えながら、帰路についた。
帰ってきてご飯をあげた。めちゃくちゃ食べた。食欲が戻って良かった。
チャビも帰ってきたことが分かったのか、嬉しそうにずっとスリスリしてくれた。
お外より狭いけど、窮屈なこともあるかもしれないけど。
苦しいことも嫌なこともあるかもしれないけど。それでも一緒にいるよ。
家族として、ずっと一緒にいようね。
【お願い】
NPO法人でもないただの猫好きの一個人が助けを求めてもいいのか悩みましたが、 我が家の猫たちが今後も安心して生活できるように、有料部分を作りました。
中身はうちの猫たちの写真集になります。可愛い猫まみれです。
ほか、下記方法にてご寄付いただけると泣いて喜びます。
【寄付先】
仮想通貨、Paypay、もしくは銀行振込にて
・仮想通貨アドレス
0xe737480D77ea787C9753202859241F383E882bBc
メタマスクです。ETH,BSC,POLYGONチェーン大体なんでもOK
よくわからない草コインは…ごめん……
・Paypay
PaypayID:yuichu25
※銀行振込をご希望の場合はX(旧Twitter)よりご連絡下さい。
また、チャビのご飯や、必要なものにつきましてはAmazonほしいものリストよりご寄付いただけますと幸いです。
ちなみに今回チャビにかかった費用は
診察や検査費用:5万
入院費用:20万
ご飯代など:2万ぐらい
今後、通院と検査費で1回につき1万円前後かかる見通しです。 更に遠方のため交通費もかさみ...今月は別猫の避妊手術もあっため40万近くの出費となりました。
チャビさんの健康のために、本当に申し訳ないのですが、ご協力頂けたら嬉しいです。 頂いたものは全てチャビ及び家の猫のために使います。 どうかよろしくお願いします。
重ね重ね、最後にこのようなお願いで申し訳ございません。
これからも猫のため、自分にできることを精一杯していきます。
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