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ストーリーセリング ― 顧客の心をつかむメッセージ設計
皆さんこんにちは、チーターデジタル CXコンサルチームの小木です。
今日は、私が日頃のクライアント支援業務の中で大切にしている「ストーリーセリング」の考え方について、ご紹介していきます。
「なぜあの商品は人々の心をつかむのか?」
「どうすれば顧客に深く共感してもらえるのか?」
その答えは「ストーリー」にあります。
ストーリーセリングとは、製品やサービスの価値を、感動的なストーリーを通じて伝えるマーケティング手法です。単なる機能や特徴の説明ではなく、課題、解決、成長といった要素を織り込んで顧客の感情に訴えかけ、共感を生み出すことで、より深い関係性を構築します。
より広義では "ナラティブマーケティング" とも呼ばれます。
ではまず、ストーリーセリングの簡単な事例から。
以下に「お掃除ロボット」の広告が2つありますが、今のあなたの心には、どちらが響きますか?
パターンA: 新登場・次世代ロボット掃除機。今なら3年保証&送料無料!
業界最強レベルの超吸引力、自己学習AI搭載で間取り認識が2倍速く。
最大180分稼働&自動充電。
パターンB: 「また掃除か...」 仕事帰りのため息に、 私たちは応えました。 従来の2倍の賢さで家を理解するAIと、 最強レベルの吸引力が、 掃除の時間を、 家族と過ごす大切なひとときへ。
A・Bのどちらにストーリーが介在するかは一目瞭然でしょう。同じ商品を紹介していても印象がまるで変わります。
本記事では、このようなストーリーセリングの重要性と実践方法についてご紹介していきます。
ストーリーによってメッセージはどう変わる
上記でご紹介した2つのメッセージは、実際にはどちらかが勝っているというわけではありません。ターゲットの状況を見極め、使い分けていくことが理想的なのです。
ですが、企業から日々届くメッセージを眺めていると、先ほどのお掃除ロボット広告の【パターンA】のような、スペック訴求型メッセージが圧倒的に多いです。メッセージの特徴としては「今ならキャンペーン中!」や「新機能が追加!」といった製品やサービスの内容そのものを端的に伝えています。
こうした訴求は、まさにこの商品へのニーズが高まっている人に対して訴求力があり、売上への即効性がありそうです。
一方で、【パターンB】のメッセージには、悩みの解決というストーリーが織り込まれています。
このようなメッセージは、漠然と悩みやストレスを感じているけれどもまだニーズが顕在化していない人に響く可能性があります。メッセージの中にいる悩める主人公に共感し、お客様自身に重ね合わせることができるからです。
根本的に人は物語を通じて共感したり、感情移入したりするのが得意です。
年表を暗記するより歴史小説を読むほうが覚えやすいし、ストーリー仕立てのTVCMが印象に残っているし、情報はストーリーとして聞くほうがずっと心や頭に残りやすいですよね。
こうした長所を取り込んだ「ストーリーセリング」は、身近な顧客コミュニケーションのいたるところで実践が可能です。
ストーリーセリングを取り入れたメッセージの特徴は以下の通りです。
・製品特徴よりも製品の提供価値を語る
・顧客を主人公にして自分事化できるようにする
・ターゲットごとに共感できる課題を設定する
「ストーリー」の要素とは
では次に、メッセージに織り込めるストーリーって具体的にどんなもの?と悩まれる方のために、2つの軸で具体要素を挙げてみます。
企業や商品にまつわるストーリー
商品開発の背景
企業が解決したい社会課題
商品開発者の想い
お客様への約束
顧客の価値観や現実、理想、課題など
日常の課題や悩み、不安
理想の生活像、なりたい自分
期待する変化、実現したい未来
商品を通じた自分の変化、体験談
企業側のストーリーを考える場合、例えば、オーガニック食品のお店なら「創業者が家族の健康を考えて自宅菜園を始めた」ことが、ストーリーになります。
一方、顧客側のストーリーを考える場合には、生活の様々な課題や悩みから、ブランドを通じたあらゆる成功体験がストーリーになります。
このようなストーリーの一つひとつは言うなれば「ブランドの宝」であり、掘り起こしたり、磨いたり、蓄積していくべき財産です。大小問わず大切に管理して、積極的に顧客コミュニケーションに乗せて伝えていくことが必要です。
皆さんのブランドにはどのようなストーリーがありますか?
ストーリーセリングは難しく聞こえるかもしれませんが、まずは自社と顧客のストーリー要素の棚卸し=宝探しから始めるとよいでしょう!
参考)ストーリーの棚卸しの例
![](https://assets.st-note.com/img/1738044536-t0NVuMy5xoeH13PadFnb6rAl.png?width=1200)
クリエイティブへの落とし込み
ストーリーを整理したら、クリエイティブに落とし込んでいきます。
メールでも、LPでも、広告バナーでも、基本的なステップは同じです。その手順について、食材宅配サービスの「プロ監修の献立サービス」の訴求メールを例にとってお伝えします。
STEP 1. ターゲットの属性や状況を具体的に想定する
まずターゲットとなる顧客のサービス利用歴や性年代、職業、悩み、価値観などを想像して書き出してみましょう。
例)「プロ監修献立提案サービス」のターゲット
・既存の食材宅配サービスを半年以上利用
・30-40代の働く女性
・悩み1 : 宅配は便利だが、献立を考える手間がストレス
・悩み2 : 食材が余る、使い切ることが難しい
STEP 2. もたらしたい心理態度変容を定義する
メッセージに触れることでどのような変化を顧客にもたらしたいのか、心理から行動へ、順を追って考えていきます。
例)もたらしたい心理態度変容
1. 悩みを解決できることを知り興味を持つ(共感)
2. プロ考案の献立が並ぶ食卓イメージを見て憧れを抱く(憧れ)
3. 他のユーザーの体験談を見てメリットを確信する(説得)
4. 無料お試しに背中を押され申込をする(ゴール)
STEP 3. 変化を起こすためのストーリー素材を選ぶ
前のSTEPで挙げたような変化を促すストーリーを選定します。
・サービスのコンセプトと解決する課題(→共感につながる)
・プロ監修献立サービスの開発ストーリー(→憧れにつながる)
・同じ状況のユーザーの体験談(→説得につながる)
STEP 4. クリエイティブ構成を組み立てる
ストーリー素材を織り込みながら、心理行動変容の流れに沿ってクリエイティブの構成を考案します。
例:メールの構成
・メインメッセージ(顧客の悩み)
毎日の献立に悩んでいませんか?
✓ 仕事で遅くなっても、献立を考えなければ…
✓ 冷蔵庫に残った食材、どうしよう
そんなあなたのために、新しい献立サービスを開発しました!
・サブコンテンツ1(開発ストーリー)
「献立の悩み」を解決する3つのポイント
✓旬の食材を厳選してプロが考案しています
✓レシピに合わせた適量の食材セット。 残り食材の活用レシピも提案
・サブコンテンツ2(顧客の体験談)
お客様の声
✓「冷蔵庫の中を見て悩む時間がなくなり、 心にも時間にも余裕ができました」 (Mさん・42歳)など
・申込への誘導(メールの上下に配置):
✓期間限定で50%OFFキャンペーン実施中!
✓2週間の無料お試し申込みはこちらから(CTA)
簡単な例で紹介しましたが、ストーリーをメッセージに落とし込む手順がイメージできたでしょうか?生成AIをうまく活用すれば、このような手順もぐっと時間圧縮できそうですね。
まとめ
最後に、明日から始められるストーリーセリングのステップをまとめます。
1. まずは自社の宝=ストーリー探しから
・創業時の想い、開発秘話、顧客エピソードなど、社内に眠るストーリーを集め、一覧化して整理してみましょう。
2. クリエイティブへの落とし込み
・想像力を働かせて、ターゲットをできるだけ具体的に想定。顧客の課題と解決のストーリーを引き合わせて、クリエイティブを組み立てます。
3. 小さな実験からスタート
・すべてのコミュニケーションを一度に変える必要はありません。メルマガの一部や、商品説明の一節から、ストーリー要素を取り入れてみましょう。反応を見ながら、徐々に改善を重ねていきます。
ストーリーセリングは一朝一夕に結果が出にくいかもしれませんが、中長期的には顧客を掘り起こし育てるために大切な手法です。まずは、自社のストーリーを整理するところから始めてみませんか?
弊社CXコンサルチームでは、ストーリーの発掘から効果的な発信方法まで、包括的なサポートを提供しています。お気軽にご相談ください。
ちょっと余談:ストーリーセリングとMAツール(マーケティングオートメーション)の相乗効果
ストーリーはマーケティング活動に欠かせない要素ですが、それらを「適切なタイミング」で「適切な相手」に届けてこそ、顧客の心理態度変容をもたらします。
この部分を自動化できれば、一気にストーリーセリングが加速しますね。
ここに力を発揮するのが、MAツール(マーケティングオートメーション)です。
例えば、以下のようなターゲットの条件に応じて、ストーリーを届けることができます。
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MAシナリオの具体的な設計手法についてはこの記事では詳細を書ききれないので、後日別の記事でまとめます!ではまた!
Author
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小木 奈々美 (Nanami Ogi)
Manager, CX Consulting Service - CHEETAH DIGITAL
WebサイトとMAマーケティングを中心に、デジマ分野で約20年。現在はMAを活用した実践的な施策の立案からクリエイティブ制作に至るまで、マーケターへの一貫したサポートを提供しています。
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