CHEESE STANDなら料理を広げるのではなく深く掘っていける
こんにちは、奥渋・NHKの西門前にあるフレッシュチーズ専門店「SHIBUYA CHEESE STAND」(以下、渋谷店)です(実物大の牛のオブジェが目印)!
今日は、新しい店長を紹介します。都内のイタリアンレストラングループの統括料理長などを務めた料理人、関口幸秀です! 6月に開催した10周年のイベントでカチョカヴァッロのコラボメニューを考案していたので、ご存じの方も多いはず。在任は期間限定、年内いっぱいの予定です。強力な仲間が加わったことを記念して、CHEESE STANDの代表でチーズ職人の藤川とともに就任までのストーリーを話してもらいました。
関口さんは、おいしい料理を作る天才
――CHEESE STAND と関口さんのつながりはいつからあったんですか?
以前「カステリーナ」というイタリアンレストラングループの統括料理長をしていて、CHEESE STANDの「東京ブッラータ」を使ったメニューを作っていたんですよ。
CHEESE STANDのことは、以前から知っていましたし、藤川さんのこともチーズ職人として知っていましたから、僕が一方的にファンだったんです(笑)
それなら僕も、Twitterで関口さんをフォローしていたから関口ファンですね(笑)。
今、Twitterの履歴を振り返ったら、2020年2月27日だったんですけど、コロナ禍で外出自粛がはじまってすぐにカステリーナでテイクアウトをはじめて、お店同士が近いこともあって、応援の意味もかねて買いにいったんです。じっさいに会ったのは、この時がはじめてでした。
あのときは、テイクアウトをはじめて本当にすぐだったので、うれしかったですよ。
そのあと、関口さんが新潟県長岡市の「HIGH AMBITION(ハイ・アンビション)」のシェフをしていたときにも会いに行ったりもしました。
2021年10月のシーズナルのフルーツブッラータが関口さんのレシピを参考にして作ったモスタルダと焼きリンゴのブッラータで、これを関口さんがわざわざ食べにきてくれたんです。
10周年のイベントのときも、関口さんから「何か手伝わせてください」と連絡をくれたんです。
ずっとお世話になっていたので、恩返ししたいと思ったんですよ。そのときにCHEESE STANDの「スモーク カチョカヴァッロ」を使ったラザニアを作ったんです。
じつは、11月から渋谷店の新メニューでこの「スモーク カチョカヴァッロのラザニア」を出しています。みなさん、またあの味が食べられますよ~。
スモーク カチョカヴァッロは、焼くと香りが飛んでしまうと思っていたんですが、関口さんのラザニアでそれが覆りました。料理に使うと、スモークの香りがわかりにくくなる印象だったんですが、なんであんなに香りが残るんですか?
スモーク カチョカヴァッロの良さを伝えたいと思って、ふつうならお肉たっぷりのラザニアが喜ばれるところと、あえてお肉を減らして、スモーク カチョカヴァッロとベシャメルソース(ホワイトソース)の分量を多くしているからだと思います。そもそもそれほど香りがないベシャメルソースが、スモークの香りを閉じ込めているんです。
そうか~。10周年イベントのときに関口さんの料理を食べて、やっぱりおいしいなぁと思ったんです。
それと、関口さんがレシピ考案をしている「シェフレピ」という食材付きオンライン料理教室で「くり返し作りたくなるイタリアンの定番料理」という全5回のレッスンを受けてみて、料理の説明も上手だし、じっさいに関口さんの教え通りに自分で作ってみると、自分で作ったとは思えないような、めちゃめちゃおいしい料理ができあがったんです。
おいしいものを作る天才だと思い、今回ちょうど時期的にも関口さんがかかわってくれるということで、新店長をお願いしました。
ファンベースな活動を自然としている
――関口さんに、新店長としてどんなことをしていくのですか?
シーズナルメニューなどのメニュー考案や、渋谷店のオペレーションの改善、新しいスタッフの指導などで、じっさいにお店にも立ってもらっています。関口さんは、外食のプロで、長年レストランのシェフもされていましたから、すごく心強いです。
また、「& CHEESE STAND」や「CHEESE STAND Lab.」のスタッフの雰囲気づくりをはじめ、インナーブランディングの強化にも力を貸してもらえたらと思っています。
というのも、10周年イベントのときに、カチョカヴァッロのラザニアがおいしかったのはもちろん、さらに関口さんのファンのお客様にたくさん来ていただいたんです。コミュニケーション力が高くて、愛をもって接しているのをみて、僕らが目指すファンベースを軸にしたブランド展開においても、関口さんから学ぶことがとても多いのです。
関口さんは今、独立準備中ということですので、いったん今年の12月までの契約になっていますが、その後もできる限り関わってほしいと僕たちは思っています。
藤川さんから、渋谷店に入る相談を受けて、すごくうれしかったですよ。9月はちょっと動けなかったので、10月の最初の週からお店に入りはじめて、3週間くらいで、だいぶ慣れてきたと思います。
――外から見ていたCHEESE STANDと、中に入ってみて感じるCHEESE STANDに違いはありましたか?
あ、それ聞いてみたい。
違いは、とくにないですよ。CHEESE STANDには、まずは真摯においしいものを作りたいという思いと、ファンが多いお店のイメージがありました。それは変わらないですね。
店に立っていると、初めましてのお客様もいらっしゃいますが、たいていはみなさん買いなれているから、メニューを頼むのがスムーズですよね。
真摯においしいものを作りたいという思いは、すごく伝わってきて、むしろ僕が想像していた以上に、藤川さんのおいしさに対してもこだわりの強さを感じました。
とくに「自分たちの作ったものをお客様にどう届けるのか」について、すごく真剣に考えているんです。たとえば先日、渋谷店の商品に欠品があったんですね。だけど、& CHEESE STANDには在庫がある商品だった。
ほんの数分しか離れていない店同士なのだから、コミュニケーションをとって商品を移すことができるわけです。お客様が自分たちの商品を食べたいといってくださっているのだから、在庫がなくて食べられませんではなくて、なんとか方法を考えて食べてもらえる努力をするべきだ、ということをいうんです。
それを、「次からこうしてね」とふんわりと解決方法だけを伝えるのではなくて、その時にしっかりとCHEESE STANDは、どんなサービスで、何をしているのかということをきちんと説明しているのは、職人としての藤川さんの想いのようなものも感じられて、印象に残っています。
というのも、外で見ていると藤川さんの個性的なキャラクターも含めて(笑)、CHEESE STANDの広報マンというかオーナーキャラを感じとっていたのですが、その裏側の見えないところで、こだわり強くやっていて、それは逆に自分も刺激を受けました。
――逆に、藤川さんから見た関口さんはどうでしか?
おおお~、こわ(笑)。
料理はもちろんなのですが、とにかく接客がすばらしいと思いました。丁寧なのにフランク、距離感も近すぎず遠すぎずだけどやや近め。あとは、ポジティブで何をやるにも前向き。僕たちがこんなことやりたいって相談すると、「簡単にできますよ」といってくれるので、安心感があります。
関口さんのポジティブオーラのおかげて、新しく入ってきたスタッフたちも積極的にSlack内で発言できる雰囲気にしてくれたのも、関口さんのおかげだと思います。
素のままでやっているので、たぶん渋谷店の雰囲気に僕があっているんだと思いますよ(笑)。
渋谷店のスタッフやアルバイトのみんなは、本当にいい人たちばかりで助かっています。今は体制が変わって大変なときですけど、スタッフのみんなからシフトの希望を多めに申告してくれて、店のために前向きに考えてくれているのが感じとれて、すごくうれしいです。
チーズの料理としての解像度は高くなる
――渋谷店のメニュー展開も楽しみですね。
ところで、11月のシーズナルメニューも、めっちゃおいしいので、みなさんご期待下さい!
関口さんの料理は、ザ・イタリアンというわけでもなくて、食材の組み合わせもおもしろいし、試食していても楽しいんです。
僕にとっても、チーズにこんなに向き合うことはないので、これからの自分の武器になっていくんじゃないかという期待があります。
渋谷店のキッチンは、レストランに比べたらとても簡易的なんですが、それがかえって制限になっておもしろい。
じつは熱源がIHかオーブン、電子レンジしかないから、できる料理が限られるです。だからこそそのなかで試行錯誤して、料理を広げるのではなく深く掘っていける。チーズの料理としての解像度は高くなると思うし、僕自身制限があるなかで考えていくのがもともと好きなので楽しみです。
あとは、CHEESE STAND Lab.の熟成チーズを、渋谷店でもっと使えていけたらいいなとも思っています。
関口さんのような手練れの料理人がいると、社内が動くスピードが上がるので、すごく助かっています。料理人は、編集者だなぁと思ったりもします。
僕のような立場のコーポレートシェフって、これから企業に対してすごく大きな役割を果たすのではないかと思っています。やっぱり、レシピを作れるってたくさんの人に喜んでもらえるんですよ。
これからCHEESE STANDのnoteでも、いろいろな商品のレシピを公開したいですし、ご来店されるお客様に向けてもお伝えしていきたいです。
さらに、食の知見を社内で共有できたらいいですよね。
この前は、CHEESE STAND Lab.の熟成師のヤナギ(柳平孝二)さんと仕事終わりに飲みに行って話していたら、熟成チーズのレストランでの使い方について聞かれたんです。
熟成師と料理人は、それほど接点がないのでお互いの仕事のことをあまり知らないんですよね。情報交換をすることで、ヤナギさんの新しいアイディアになったりしたらいいなとも思います。
ヤナギさんは、すごく好奇心が旺盛で、おもしろい人。なんでもすぐに試すし、失敗したら改善していくような、トライ・アンド・エラーでどんどん進めていく。最近相談してもらえるようになって、僕もうれしいんです。
コロナ禍も落ち着いてきてイベントもできるようになってきたから、クラフトマンの仲間たちとまたイベントしたいなぁ。またそのときに関口さんの力が発揮されると思うんです。
僕が出来たてのモッツァレラを練って、それをすぐに関口さんが料理にするようなことができたら、これまで以上に体験価値があがると思うんです。
もちろんです!これからも長いお付き合いしていきましょう!
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聞き手・構成=江六前一郎