目標の7年「まだやれることはある」ことに気づかされた|C.S. STORY 2018-19
リーダーとは何か、について考えた
2018年6月からの1年も、多くのスタッフが入れ替わることになりました。10人前後の会社で1人が抜けるインパクトはとても大きいものです。
実はこの年、リクルートのために人材派遣会社に何百万と使いました。売上高が1億円ちょっとの規模の会社では、この出費もとても大きなものでした。
自身も、体調不良で人生で初めて帯状疱疹の症状もでてしまったり、学生時代以来のインフルエンザにもかかったりもしました。
本当に自分が情けなく、ただでさえ人材不足が叫ばれる中、このまま続けていいものかと何度も悩みました。このままではいけない、自分が変わらなくてはいけないという危機感からストレングスファインダー®という才能診断のテストを受けて講座に通ったりしました。心身を鍛えるために、キックボクシングのジムに通い始めたのもこの頃です。
製造に朝3時から入っていたなかで、よくやっていたと思いますが、よほどの危機感があったからだと思います。
ストレングスファインダー®の診断を受けて感じたのは、リーダーといってもいろいろな種類があって、誰にだってその人自身の強みを活かせたらリーダーになれるということでした。自分自身で「リーダーは、こうあらなければいけない」と課していた部分があったのですが、これをきっかけにスタッフの強みを活かせたらと思うようになりました(今もその途中ではありますが)。
僕個人のnoteを始めたのも、7年目の年でした。
わざわざの平田はる香さんの記事がとても面白く、それに感化されて始めたもので、経営者としての想いや、今取り組んでいることについて発信することで、もっともっと私たちの想いを伝えたいと思ったからです。
チーズの味や取り組みを評価されたこと
「どん底」、そんな言葉が頭をよぎるような1年でしたが、前年の2017年後半からチーズづくりに専念できたことで、さまざまな発見がありました。
たとえば、どうしても気になっていたリコッタ製法の部分を変更してよりなめらかな食感にしたり、作業工程のpHも微調整を繰り返しながらより美味しいチーズを作り上げていきました。6年経ってもまだまだ改良できるところはある、ということに気づけたことは大きいです。
その甲斐もあって、10月21日に発表された「JAPAN CHEESE AWARD」でリコッタが金賞(最優秀部門賞)、東京ブッラータが銀賞(金賞なし、最優秀部門賞)、モッツァレラ、カチョカヴァッロ、リコッタサラータも銀賞を受賞することができ、出品できる品数すべてのチーズで受賞ができました。
とくにリコッタで前回に続いて連続で最優秀部門賞を獲れたことは、すごく嬉しかったですね。当時、リコッタを作っている人が増えてきていたなかで、自分が実際に手を動かしながら改良してきたことが結果として評価されたわけです。
また街でチーズを作るというブランドコンセプトでGOOD DESIGN賞をいただくことができました。
パリでのインプット、街のチーズ屋さんを見て
8月の夏休みには、フランス・パリに行ってきました。パリは、20代の頃、バックパッカーで訪れたきり。純粋に食を楽しみたかったのと、1年ほど前に雑誌『料理通信』のワールドトピックスで、パリに都市型のチーズ工房があることが書かれていて、気になっていたためです
ただ、実際に行ってみるとバカンスということもあり、ほとんどの店が営業していない。パリにあると聞いていた訪問を予定していたモッツァレラ工房の2店がバカンス中。
そんななか、偶然歩いていて見つけた「Nanina」というチーズ工房兼ショップで、イタリア人が作っているところを見ることができました。
話を聞くと、パリ郊外から水牛の乳を運んできているとのこと。イタリア人がパリでフレッシュチーズを作っているのは衝撃的なこと。だけど「俺たちの方が先だね」というと「イタリア人じゃないのになんでやっているんだ?」と不思議がられもしました。
パリでは、店づくりのアイディアがもらえるようなレストランもまわってくることができました。
台北の食のイベント「A Better Meal」に参加
9月24日にはには、CHEESE STANDに研修に来て、台北でチーズ作っているイザベラ・チェンさんとのご縁で、クラフトマンが集まる食のイベント「A Better Meal」にゲストとして呼んでもらい台北でにいってきました。
会場は、台北の歴史的建造物である「華山1914文創產業園區」で台湾の食を良くしたい、面白くしたい。そんなクラフトマンや生産者が集まったイベントで、2016年にはじまったときは30名ほどだった参加者が、2017年には100名前後となり、この年は2日間で1500人ぐらいが参加して行われたそうです。
毎年テーマを変えて開催していて、その年は「Sustainable」「Waste 0」「Reserve」の3つのテーマで出店者が集まるだけでなく、トークセッションや各国料理のシェフのデモンストレーションなどが行われていました。
3カ月ほど研修をしたイザベラさんは、台北に戻って自分でチーズ工房を立ちあげ、オープン後以来の再会になり、ゲストとして読んでもらえたほか、彼女の友人に紹介してくれるときは「老師」みたいに敬意をもって接してくれて、ものすごい歓迎を受けました。
僕は、「アジアのベストレストラン50」(2018年版)で37位にもランクインしていたバンコクのレストラン「Bo.lan」のBo SongivsavaさんとDylan Jonesさんご夫妻(お二人のお名前が店名の由来です)、香港やオーストラリアでワイン造りを行う Eddie McDougallさんと食の未来や「Sustainable」「Waste 0」などについてトークセッションを行った後、モッツァレラのデモンストレーションを行い、ストリングチーズをイザベラさんと共にステージで作りました。
台湾は漢方や中医学があり、そもそもが食に対する意識の高い国でもあって、それがこのようなイベントが開かれる支えになっているように感じました。そこにさらに台湾の若者たちの食に対する新しい動き、海外のものを受け入れようとする動き、クラフトマンシップへの原点回帰、など皆で変えていこうという気概も感じました。日本での牧歌的なファーマーズマーケットよりも力強さがあったように思います。
2011年にシェ・パニースの人たちが日本に来てものづくりを提唱した「OPEN HARVEST」というイベントがありました。まだCHEESE STANDを始める前のことでしたが、食の可能性を考え直し、知見を広げるきっかけになったイベントを思い出し、自分自身も日本でクラフトマンの仲間たちとこんな力強いムーブメントを起こしていきたい、と強く感じて帰国したのを覚えています。
渋谷店の借入金を返済し終えた
もうすぐ7周年を迎えようとする4月か5月に、渋谷店の借入金の返済を無事に返し終えることができました。起業したときは、7年後がどうなっているかまったく想像もつかなかったので、当時の想像を超えたところに辿りつけたことは、感慨深いことでした。
また、前々職で勤めたレストランに入社したタイミングが、ちょうどそのレストランの7周年だったことも、7年という数字に特別な思いを抱かせています。7年継続するという凄さを感じていた僕は、起業時に7年は続けられるように、まずは頑張ろうと思ったものです。
オープンから7年、紆余曲折があった中でも、もっとも辛いどん底の1年でしたが、チーズを作ることで光を見つけて評価をしていただき、動いてさまざまな体験をすることで自分自身を見つめ直し、新しい目標を手に入れることができました。そしてそれは、「まだまだやれることはたくさんある」と自分自身を奮い立たせるものにもなりました。
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