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「Kiri」がクリーム《チーズ》ではなくなった話の続き

こんにちは。チーズです🧀
先日、「Kiri」に関してツイートしたところ、想像以上の反響をいただきました。

話題が色んな人に拡散する中で、リプライや引用リツーイトなどで様々な反応をもらい、興味深くウォッチさせていただきました。
僕自身、気になるテーマだったので、色んな人の反応をいただけて本当にありがたかったです。

ただ、今回の一連のツイートに関して、言葉足らずな点もあったので、僕としての考え方や伝えたかったことを補足しておきたいと思います。

今回の連投ツイートの起承転結

起:「Kiri」がクリーム《チーズ》ではなくなった

承:クリームチーズでなくなった理由(推察)

転:クリームチーズの規格を超えた「Kiri」ブランドすごい!

結:(味の違いもそれなりにあるので)ぜひ食べ比べてみてね!

今回の連投ツイートで伝えたかったこと

今回のツイートは上述の通り

起:「Kiri」がクリーム《チーズ》ではなくなった
承:クリームチーズでなくなった理由(推察)
転:クリームチーズの規格を超えた「Kiri」ブランドすごい!
結:(味の違いもそれなりにあるので)ぜひ食べ比べてみてね!

という構成になっており、僕としては「起」、「承」よりも
「転」のKiriをクリームチーズではなくKiriとして売っていく、というのは覚悟と自信!すごい!
もしかして、近年よく見かけた他社製品とのKiriブランドを押し出したコラボ商品はこういった先々の商品展開を見通した布石だったのかも!?

といった点と、
「結」の実際にこうした規格変更品を食べ比べてみたうえで、違いがどれだけあるかを体感できるのはすごく良い経験なので、旧版が売られているのは残り僅かな期間だし、ぜひ見つけられたら食べてみると良いですよ!

ということを伝えたかったんです。

なんなら、このKiriの規格変更は今年の夏頃にはリリースされていた情報で、当時から食べ比べてみたい!という願いが今回叶えられたので、この楽しさを色んな人にも知ってほしい!というのが趣旨でした。


今回の連投ツイートに対する思わぬ反応

今回、1つ目の「起」のツイートが拡散する中で、想像以上に今回の規格変更に対する部分だけがクローズアップされたせいなのか、思った以上に

・ショック。。。😨
・味も変わったならもう買わない😝

といったリアクションが多く寄せられました。

起承転結のその先

もちろん、今回の規格変更を知って今後もKiriを買うかどうか判断するのは自由です。でも、今回のツイートを見かけて、食べないという判断するのは本当にもったいないです!

起承転結では「食べてみてね!」で締めくくっていますが、実際食べてみてほしいです!

僕自身も
「味も食べ比べるとそれなりに違います」
ツイートしているのですが、正直なところ、ブラインドでどちらか1つだけを食べて、それが新版なのか旧版なのかジャッジできるか正直怪しいレベルでした😅
(もちろん、一口で違いが判る人もいると思います!)

こういった配合変更でどう味が変わるのかを実際に体感できるのはすごく貴重な経験です。

実際に食べ比べをしてみて、

「味がそこまで変わらない」と感じた場合、

  • 規格は変わっても今までと同じような美味しさを維持したKiriの開発者の技術力すごい!

  • そもそも、プロセスチーズの乳固形の規格とかは本当に意味があるの?

といった話題も広がるでしょうし、逆に

「味が大きく変わった」と感じるのであれば

  • 旧版のKiriの味を覚えているくらい普段から食べているくらいKiri愛が深い

  • やっぱり規格っていうのは大切なんだね

という話にもなってくるかと思います。
(味の感じ方は個人によって異なるので正解はありませんが)

僕のツイートの情報だけを鵜呑みにして自分で食べてみないのは本当に、本当にもったいないです!!
ラーメンハゲの亡霊が出ちゃいますよ!)

お願いします、今回のツイートを見て
「もうKiriは買いません」
なんて言わずに、実際に食べてみてください🙏🙏🙏

そのうえで、もっと今回の話題の一歩先の

「今回の改良はどんな工夫だったんだろう(考察)」
「Kiriブランドは今後どうなるんだろう」
「チーズはどうあるべきなの?」
「もっとこんなチーズが食べたい!」
「今のチーズ関連の法令は本当に的確な設定になの?」
みたいな話を色んな人とできると良いなと、切に願っています。

(補足)ちなみに僕はKiri関連の会社員ではないです(笑)


【おまけ】チーズ規格に関する考察

・パッケージの栄養成分からの推測

せっかくなので、今回のリニューアルでどれくらいプロセスチーズ規格を下回ってしまったのか、どんな配合変更だったのかを考察してみます。
実際の配合の中身は分からないので、あくまで栄養成分値からだけですが、推察してみます。

パッケージ栄養成分
変更前→変更後

Kiri変更前後のパッケージ栄養成分標準より

1個あたりでは分かりづらいので100gあたり比率に変換&円グラフ化

たんぱく質+脂質+炭水化物(中央値で算出)+ミネラル+水分=100として算出

これを見ると、ざっくり水分が5%くらい増えているようです。
さらにこの中で、プロセスチーズ規格に必要な乳固形40%以上になっているかだけをみてみると、、、

※プロセスチーズ規格の判断時の乳固形=乳たんぱく質+乳脂肪
原材料をみると乳由来以外のたんぱく質、脂肪は無さそうなので、
栄養成分のたんぱく質、脂質は全て乳由来として計算

確かに変更後のKiriは乳固形の量が37.4%と、プロセスチーズ規格の40%を下回っているようです。
ただし、変更前のKiriも40.6%と結構ギリギリであることがわかります。

Kiriは元からギリクリームチーズだったんですね(渾身のチーズジョーク🧀)


(補足)プロセスチーズの乳固形分

乳固形分が40%未満なのでプロセスチーズ規格ではない。
という点に関してツイッター上でも指摘をいただいていたので補足します。

パッケージの一括表示にはこんな記載があります。

Kiri変更後のパッケージより
無脂乳固形分:11.4%
乳脂肪分  :29.3%

一般的な乳固形分の定義を調べると、

乳固形分=無脂乳固形分+乳脂肪分
日本乳業協会HPより引用

となっているので、パッケージどおりの数字であれば

乳固形分 = 11.4 + 29.3 = 40.7%

と、40%を超えるため
乳固形分はプロセスチーズの規格をクリアしているのでは?
と思われる方もいるかもしれません。

この辺は非常にややこしいのですが、実は
・一般的な乳固形分
・プロセスチーズ定義における乳固形分
の2つは少し定義が異なっているんです💦

チーズ公正取引協議会「チーズ公正競争規約」より引用
赤線部がプロセスチーズ定義の乳固形分
プロセスチーズ定義における乳固形分=乳脂肪分+乳たんぱく分
(乳由来の炭水化物、ミネラル、ビタミンは含まない

この定義に沿って、栄養成分から乳固形分を計算すると、前の項目の通り、変更後は乳固形分が40%未満であることが分かります。

と、まあこんな感じで乳製品の規格というのは非常にややこしい感じになっています💦
(補足おわり)

・他のプロセスチーズとの比較

このKiriの乳固形の量が多いのか、少ないのかを判断する上で参考までに他のプロセスチーズを調べてみたいと思います。
プロセスチーズで有名どころの6Pチーズと比較してみると、、、

雪印メグミルクHPの栄養成分値から算出&グラフ作成

これだけみると、変更前Kiriでもプロセスチーズの中では乳固形が低い部類のようです。

ただし、
 ・6Pチーズなどのゴーダやチェダーなどの熟成チーズ系
 ・Kiriなどのクリームチーズ系
を比べると、チーズの種類によってそもそもベースの水分や乳固形分が違う気もしますね。

・ベースとなるナチュラルチーズを比較してみると

ということで、それぞれのベースとなるナチュラルチーズも同様に成分比率を調べてみました。

・6Pチーズなど熟成系プロセスチーズのベースとなる熟成系チーズの各種成分と乳固形

食品標準栄養成分表2020年度版(八訂)ナチュラルチーズ/ゴーダ から算出&作成

・Kiriなどのクリーム系プロセスチーズのベースとなるナチュラルチーズのクリームチーズの各種成分と乳固形

日本食品標準栄養成分表2020年度版(八訂)ナチュラルチーズ/クリームから算出&作成

こうしてみると、6Pチーズなどの原料となる熟成系チーズの乳固形54.8%に比べてKiriなどのクリームチーズは乳固形41.2%とナチュラルチーズの中でも、乳固形が少ないことが分かります。

このクリームチーズ(ナチュラルチーズ)をベースにしてプロセスチーズを作ることを踏まえると、Kiriの変更前の乳固形40.6%という数値は決して低いわけではないように思えます。

(補足)チーズ類の規格の考え方

ここで、

標準的なナチュラルチーズのクリームチーズが乳固形41.2%
 →原料の牛乳の成分のブレによっては乳固形40%以下になる可能性
  →一般的なクリームチーズでも「チーズ」の規格を満たさなくなるのでは?

という疑問を持つ方もいるかもしれません。
実は乳固形40%以上というのはプロセスチーズだけの規格であって、ナチュラルチーズには乳固形の規格値がないため、乳固形40%を下回っても「チーズ」と呼ぶことができるんです。

そうすると一方で、

Kiriも乳固形が低くなっても「ナチュラルチーズ」規格であれば
「チーズ」と呼べるのでは?

と思われるかもしれませんが、Kiriには「乳化剤」が含まれる為、ナチュラルチーズ規格になりません。

Kiriのパッケージ一括表示より

少し寄り道になりますが、ナチュラルチーズ、プロセスチーズの定義は以下のように定められいます。

ナチュラルチーズの定義
プロセスチーズの定義

ここにプロセスチーズは乳固形40%以上という規格を加えると、乳化剤の有無乳固形の数値によって以下のようにチーズ類の商品の規格が決まります。
(本当はもう少し細かなルールもあるのですが、今回は省略)

これらを踏まえると今回のKiriのリニューアルは以下のような形になっています。

さらに、今回の僕のツイートを見て、本場フランスで売っているKiriの原料配合比(?)を教えてくれた方によると、

・本場フランスのKiriの乳固形は40%未満の可能性大
・本場フランスのKiriには乳化剤が使われていない

とのことです。

ということは、乳化剤の有無を除けば、少なくとも乳成分の濃厚さという要素で言えば、

今回の変更後のKiriは本場フランスで売られているものとそこまで大きく変わらない

と言えるのかもしれません。

・今回のKiriの規格変更に関してのまとめ

以上のことから

  • そもそもクリームチーズ(ナチュラルチーズ)は乳固形分が低い

  • クリームチーズ系のプロセスチーズを作ると乳固形分はプロセスチーズ規格ギリギリ

  • 本場フランスでも売られているような少し高めの水分値のクリームチーズ系のプロセスチーズを作ろうとすると日本では「乳等を主要原料とする食品」の規格になる

こういったことを踏まえると、そもそも

日本のプロセスチーズの規格はクリームチーズ系に非常に不利な設計になっている。

と言えるのかもしれません。

チーズを作る上で水分というのは非常に重要なファクターです。
単純に水分が低くなれば乳風味は強くなるかもしれませんが、一方で口溶けや柔らかさは失われる、といった具合に必ずしも

水分が低い(乳固形分が高い)=美味しい

とは限りません。

もちろん、今回のリニューアル自体は事前の報道などにもある通り、原料価格や為替の高騰に対応するためのコストダウンという意味合いが強いのかもしれません。

ただ、そうした厳しい条件下でも開発面でKiriらしさをキープするために配合を工夫し、マーケティング面ではチーズという規格で無くなってもこれまで積み上げてきたKiriというブランドであればいけるとGOサインを出したんじゃないかと思います。
(完全に僕の想像ですが)

そんな想像すると今回のリニューアルは同じ食品メーカー開発にたずさわる者としてはある種の尊敬の念を抱かずにはいられない、そんな一大事でした。

長々とした解説になってしまいましたが、これを機に元のツイートやこの記事を読んでくれた方が
「チーズ類にもいろいろ規格がある」
「規格の変更でどれくらい味が変わるのか」
といったことに興味を持ってもらえれば何よりです!

最後まで読んでくれてありがとうございました🧀

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