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【第6話】村山美澄、もう一人の私との共同生活を始める~窓の大きい部屋を探す~

なんだか満たされない毎日を送る村山美澄(27)。
日々の些細なストレスを抱え生活するうちに
自分の姿をした幻覚が見えるようになってしまう。

「私の幻覚」は美澄の心の声そのものだと言い、
美澄が自分らしい人生を生きれるよう共同生活を始めることに。

どんな時も側にいて理解してくれる存在と暮らす中で、
美澄の毎日が少しずつ変化していく。


これまでのお話


夢広がる部屋探し

家に帰ると静かに夕日が差し込んでベッドがオレンジ色になっていた。
出かけている間に放置された真夏の暑さで部屋がサウナのようだ。
私はエアコンをつけて一息つく。

私の幻覚「あっついねー!早く部屋涼しくならないかな〜」
私「そうだね。…今日何が食べたい?キャベツがあるから豚しゃぶサラダしようかと思ってるんだけど。」
私の幻覚「うん!豚しゃぶサラダ食べよう!私は中華スープ作るよ」
私「あ…いいね」
私の幻覚「うん!私はプチトマト好きよね?豚しゃぶサラダに入れる?」
私「あ…よくご存知で。うん入れたいな」
私の幻覚「じゃあスーパー買いに行ってくるよ!」
私「え、行けるの!?」
私の幻覚「あ…1人ではいけなかったわ。。私はあなたの分身だから誰にも見えないし…」
私「そーだよね笑 まあ面倒だし、今日はいっか。明日帰りに買ってくるよ」
私の幻覚「オッケー!」

私たち2人はキッチンに立つと、お互いの担当を決めて料理をした。


私の幻覚「はーい、スープも出来ましたよー」
と言いながらリビングにある小さなテーブルにお椀を2つ置いた。

こうして夕食を食べ始める私たち。
私の幻覚「私はさ、さっきカフェで大学2年生の時が一番楽しかったって言っていたけど、今はどーなの?」
私「今はそれほど楽しくないよ。仕事は辛いし、プライベートも何となく生きてて」
私の幻覚「大学生の時はプライベートは何となく生きてなかったの?」
私「うーん。やりたいことが出来る時間と心の余裕と友達がいたからね。思い立ったことをやれる日々だったかな。行ってみたいパンケーキやさん行ったり、六本木でおしゃれに映画見たり、夏休みはバイトで貯めたお金で海外に飛んで行ったり」
私の幻覚「今は何で思い立ったことをしないの?」
私「うーん、そもそも思い立つことがあまりないかも」
私の幻覚「忙しいと自分の心の声って聞こえなくなっちゃうよね。でも私ってさ窓が大きい空間好きじゃない?さっきのカフェがお気に入りなのもそのおかげじゃん!」
私「そうだね」
私の幻覚「だから窓が大きい部屋に引っ越してみるっていうのは?」
私「え、うーん、まあありだけど…」
私の幻覚「思い立ったらすぐやっちゃう!これ大学2年の時に輝いてた理由なんじゃないの?」
私「そうだね。。この家もずいぶん住んだし、気に入っているわけじゃないし、、部屋探してみるか」
私の幻覚「いえーい!今日お風呂上がりアイス食べながら探そう!」
私「いいね!」

私たちは夕食の後、それぞれお風呂に入り、最近埃をかぶっていた私用のMacを開いた。
お風呂上がりでピンクのヘアバンドをしている私の横に、濡れた髪の毛を垂らして肩にタオルを巻いている私の幻覚が座る。
私の幻覚「どこに住もうかねー!東京近郊かな?広さは1LDK?窓は大きいのはマストで、あとはバルコニー広いといいよねー!テーブルとか椅子が置けたら夜風に吹かれながら本読むのもいいし!」
私「それめちゃくちゃいい!でも都心でそれは家賃高いよー」

私の姿をした幻覚の存在を受け入れ始めた夜。
親友とお泊まり会をしているような気分だった。
今まではただ明日に備えて寝るだけの夜が、これからまだ楽しいことが続く嬉しさやワクワク感。
幻覚だと頑なに拒んでいたが、私はいつも側にいて話し相手になってくれる存在ができた安心感を感じていた。





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