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じゃがりこなんかくうな
テーマ「じゃがりこ」 1,000字 60分
文章さえ書ければいいのだ。テーマなんてなんでもいい。
だから、それがたとえ机の上にぽつんと置いてある空のじゃがりこのカップでもだ。
俺の部屋は普通にきれいだ。ごみ箱も置いてあるし、鼻をかもうとしてちょっと汁がついただけのティッシュだって迷わずごみ箱に送る決断性の高さだって持ち合わせている。暇さえあれば掃除をするし、そのものずばり暇なのだから掃除が捗らないことがあろうはずがない。
それなのに、空のカップが捨てられずに置いてある。
じゃがりこで話をふくらませるのは難しい。
そもそもじゃがりこ自体にそんなに関心がある方じゃないから。
それなのに、直近3日で5個は買ってる。
理由は些細なことだ、ここで話すのさえどうかなと思うくらいにくだらないことだ。
いつものように、ユーチューブしか娯楽のない俺はユーチューブを見ていたらグーグルの機械が「モンストのソースコード読んでみた」みたいなサムネを見せてきた。ゲームって、プログラミングで出来てんねや……そのときふとそう思った。
内容はモンスト×じゃがりこコラボの専用ミニゲームがQRコードを読み込むとブラウザでできるからそれのコードをのぞき見してやろう、って動画だった。
本当にそれだけの動画だったのだけれども、それを見てしまってから俺はじゃがりこを買いたくなり、結果3日で5個も買ってしまったわけだ。買い出しのスーパーで買って、帰り自転車に乗りながらポリポリかじった。この後夕飯を作るのに、だ。
じゃがりこを食べたのは久しぶりだった。そして、それは意外なほどに美味しかった。
新商品ジャンキーにとって、お菓子とは食べたことない味がすべてであり、定番商品などというものは絶対買うに及ばないのだ。そう思ってしばらく生きていた。
知ってる味を買って食べて美味しい!と確認して何が得られる、そう思って生きていたとしてそれは極めて論理的な帰結であろうことは自明だった。
次から次へと供給される新商品に飽き、大量に並ぶ季節の味の代わり映えのしなさとバズ狙いの透けて見えるマーケティング担当者のスーツを想像しては吐き気を催し、際限なく新商品が供給され続けるコンビニという場の内装そのものが全く新しげを成さないことに気付いたのは未知の味がもはやコーナーに存在しなくなった時だった。
そんな時にあえて定番の味に挑戦するなんて新境地を見せてくれたのは、果たして僕が飽きることに飽きないから、なのかな?