彼女の秘密
最近気になってる事があるんだ。
教室の窓際にいるあの子。
休み時間だってのにいつも頬杖ついて空を眺めながら座ってる。誰かと楽しく会話する様子も見た事がない。
少し茶色のロングヘアー。時々見える八重歯。
じっくり見た事はないがスタイルも良さそうだし、かなりの美少女だ。
『よう!』
『なに…』
『いや、いつも一人だから気になってさ!』
『うるさい…』
『僕も転校してきたばっかで友達少なくてさ。仲良くなれたらなぁって』
『黙って…死にたくなければ私に近づかないで』
死にたくなければってまで言われたらさすがに会話を続ける根性はない。その日は大人しく自分の席に引き上げた。
それから数日、僕は彼女を観察してみる事にした。
授業中は真面目だし成績優秀。いたって普通の女の子だ。
彼女の幼馴染に聞いたんだが、昔は野球部のマネージャーとかやって活発な子だったらしい。でもこの学校に入学してからは誰とも交わろうとしなくなってしまったみたい。理由はわからないそうだ。
ある日の放課後もう一回話しかけてみることにした。
『なあ、帰るなら一緒に帰らないか?』
『なに?言ったはずよ?死にたいの?』
『物騒な冗談はやめてくれよ。ただ気になってさ。なんでいつも一人なんだ?』
『うるさい…私に関わらないで』
彼女はカバンを抱えてさっと背を向け離れていった。僕はその後ろ姿を見送るしかなかった。
『しょうがない、一人で帰ろ』
なんか今日は街が賑やかだな。そういやハロウィンか。帰り道は仮装した子供達や若者で溢れてる。
公園にさしかかったとき、ある風景が目に飛び込んできた。薄暗くて良く見えないが間違いない彼女だ。誰かと向かい合っているように見える。
そして背伸びをする様に彼女は顔を相手の顔へ…
まぢか!キスしてやがる!
まあ年頃の男女だから悪いことじゃないか…
でも次の瞬間、彼女の相手は崩れ落ちるように倒れた…
何が起きた?
その後、彼女は何もなかったかの様にこちらに向かって歩いてくる。
『見てたでしょ?』
『なんの話だ?』
『言ったはずよ…私に関わるなって。』
ゆっくりと彼女が近づいてくる。
うっすらと笑みを浮かべる口元から見える八重歯がいつもより大きくみえた。
なぜだ?身体が動かない…
彼女が目の前に迫ってくる。
よく見ると彼女の口元は赤く染まっていた。
血まみれ?マジか?ハロウィンの仮装だよな?
次の瞬間、彼女の八重歯は僕の首に食い込んでいた…
嘘だろ?段々と身体の力が抜けていく…
『忠告を聞かない貴方が悪いのよ…』
薄れていく意識の中、
最後に彼女の囁きが耳に響いた
『Trick or Treat…』