明日の臨床で使える関節モビライゼーション勉強会講義ノート 近位脛腓関節①2024/11/15
講師:有松 慎治
理学療法士・スポーツトレーナー
経歴
2009年:理学療法士資格取得
2009年〜2013年:整形外科で勤務し、リハビリテーションに従事
2010年〜:院内でインソール作成を開始し、多様な患者の足の悩みに対応
2013年〜:岡山に「あし屋」を設立し、スポーツをする子供からプロアスリートまでを対象に、オーダーメイドインソールの作成と足の総合ケアを提供
専門分野
足の動作分析と関節運動学を基盤としたリハビリテーションおよびスポーツトレーニング。関節の評価と姿勢改善を目的としたアプローチを提供。セミナー内容
今回のセミナーでは、特殊手技に頼らず、関節運動学に基づいた関節の評価方法と、正しい関節の動かし方を習得することを目的としています。
今回は膝関節の3関節の1つ
近位脛腓関節のモビライゼーション
3軸方向に動くのでその評価と動かし方を身に付けてもらう
モビライゼーションをするセラピストには絶対覚えてもらいたい意義
近位脛腓関節のモビライゼーションは、以下の理由で臨床的に有効です。
関節可動域の改善:上脛腓関節の滑りや回旋を促進し、足関節の背屈制限や膝関節周囲の緊張を緩和します。
組織伸張:関節包および靭帯の伸張を図り、関節の安定性を維持しながら可動域を向上させます。特に、関節包や外側側副靭帯の伸展性が向上すると、膝や足関節の運動時の過負荷を軽減できます。
疼痛軽減:腓骨頭の適切な位置と可動性を取り戻すことで、膝関節外側や足関節の痛みを緩和し、患者の動作をスムーズにします。
上脛腓関節の解剖学と機能
関節構造:上脛腓関節は腓骨頭と脛骨の外側顆で構成され、関節包によって囲まれています。腓骨頭には、膝関節に関与する靭帯(外側側副靭帯、腓腹筋腱)および筋(腓腹筋外側頭や膝窩筋)が付着し、膝や足関節の動作において安定性と動作の自由度を提供します。
腓骨の可動性:腓骨頭は、足関節の背屈時に僅かに前方に滑り、底屈時には後方に滑ります。この微細な動きは、腓骨が足関節の力学に対応するために不可欠であり、可動性が制限されると腓骨の動きが不十分になり、膝や足関節に過度の負荷が生じます。
動作機能:上脛腓関節が滑らかに動作することで、足関節背屈や底屈の際の力の伝達がスムーズに行われ、足関節および膝関節の機能向上に寄与します。
触診技術を高めるタッチの基本的な指の配置と圧力
腓骨頭を的確に触知しながら、関節の動きを感じ取り、患者に負担をかけずにモビライゼーションを行うために重要
タッチの基本的な指の配置と圧力
親指と示指の役割
①腓骨頭を把持する際、親指を腓骨頭の前面に、示指と中指を腓骨頭の後面または側面に配置します。親指は腓骨頭を安定的に把持するために広い面で接触し、示指と中指は腓骨頭を包むように軽く触れることで、安定性と感覚の両方を得ます。
②指の配置は腓骨頭を包み込む形が理想的で、骨の輪郭をしっかりと感じ取るようにします。
圧力の調整
①軽い圧力で腓骨頭を触れることが大切です。腓骨頭には腓骨神経が走行しており、過度な圧力は神経圧迫を引き起こしやすいため、患者に不快感を与えないよう、圧は最小限に保ちます。
②圧力は、触れる程度の軽さで腓骨頭の動きや関節包の抵抗を感じ取れるようにします。腓骨の前後方向や回旋動作の抵抗を感じ取り、患者がリラックスできる圧力を保ちます。
腓骨頭の触知と確認
解剖学的構造の明確な触知
①腓骨頭の前面と後面を触知し、腓骨頭の動きやすさと関節の遊びを確認します。腓骨頭の周囲にある軟部組織(靭帯や腓骨筋など)の硬さや抵抗も把握し、関節包の柔軟性を感じ取ります。
②腓骨頭を滑らせる際、指がしっかりと腓骨頭の位置を捉えているかを常に意識し、骨の輪郭を失わないよう注意します。
腓骨周辺の神経走行と筋群の確認
腓骨頭周囲には腓骨神経や腓骨筋が走行しているため、これらの解剖学的構造を意識しながら触診を行います。特に腓骨神経への圧迫を避けるために、腓骨頭の後面を把持する際は慎重に触れ、軽い圧で感覚を確認します。