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【精神医学】クレプトマニア(窃盗症)

少し前に短編小説としてクレプトマニア(窃盗症)について取り上げた。

金銭的な問題で盗むという人間も存在している一方で盗んでも意味のないようなものでも盗まざるを得ない人間がいるという事実が気になっていた。

そこで今回は現役精神科医が作ったカスタムGPTを利用しながら、気になったことを調べた。


解説動画

なぜ盗むことをやめられないのか

クレプトマニアが繰り返してしまうのは、強い衝動や欲求が心の中で抑えきれないほど高まるからなんだ。これは、脳の「報酬系」という部分が関係していると考えられている。盗むことで一時的にストレスが和らいだり、快感を得られたりすることで、その行為が脳に「報酬」として記憶され、また繰り返そうとしてしまうんだね。 さらに、クレプトマニアの人はしばしば不安や抑うつといった他の感情的な問題を抱えていることが多いんだ。そのため、ストレスを感じると、盗むことで一時的な解放感を得ようとしてしまうんだよ。

精神科医益田裕介(試作1.20)

罰を与えるだけでは意味がないのか

残念ながら多くのケースでは、治療を受ける前に刑務所に入ってしまうことが多いんだ。特にクレプトマニアや盗撮のような衝動制御障害の場合、行為自体が法に触れるから、まずは罰として刑務所に行くという道が優先されてしまうことがある。

でも、根本にあるのは精神的な問題や脳の機能に関わる部分だから、刑務所での罰だけでは本当の意味での再発防止にはつながらないんだよね。海外では、刑務所に代わって治療プログラムやリハビリテーションを提供するケースも増えてきているんだけど、日本ではまだその仕組みが十分整っていないこともあるね。

本当は、治療やカウンセリングを受けて、衝動をコントロールする方法を学ぶ方が、再発防止に効果的なんだけど、社会全体でその意識を高めることが必要だね。難しい問題だけど、こういった障害に対する理解がもっと広がるといいなと思うよ。

精神科医益田裕介(試作1.20)

海外の具体的な事例について

アメリカの事例

治療裁判所
1989年に薬物中毒で繰り返し刑務所に出入りする人間の問題に対処するために作られた。
以降、少年薬物治療裁判所、飲酒運転/飲酒運転裁判所、家庭治療裁判所、メンタルヘルス裁判所、退役軍人治療裁判所、部族の癒しからウェルネスコートといった様々な裁判所が作られていく。

薬物治療の具体的なステップ

全米治療裁判所リソースセンター(NTCRC)

上記サイトの資料、Adult-Treatment-Court-Best-Practice-Standards-I-VI_VIII_X-finalをChatGPTにまとめてもらう。


この文書は、成人治療裁判所のベストプラクティス基準に関するガイドラインで、薬物依存やメンタルヘルス問題を抱える被告人に対して、効果的な治療と社会復帰を支援するための標準的な手法を提供しています。以下の主要なポイントが強調されています。

  1. 対象者の選定基準
    治療裁判所は、高リスクで高ニーズの被告人を対象とし、治療が効果的かつ必要な人を早期に見つけ、プログラムに参加させることを重視しています。リスク評価ツールや臨床診断を用いて、客観的かつ公平な選定が行われます。

  2. 公平性と包括性の確保
    社会的・文化的な背景や経済状況によって治療へのアクセスに格差が生じないよう配慮しています。文化的に適切な治療や補完的なサービスが提供され、必要なサポートが平等に受けられる環境を整えています。また、治療費用についても負担軽減の対策が取られています。

  3. 裁判官の役割と責任
    裁判官は治療裁判所における重要な存在で、定期的な監督や支援を通じて、参加者の治療プログラムの成功をサポートします。研究によると、裁判官の積極的な関与が参加者のモチベーションを高め、治療効果を向上させることが示されています。

  4. インセンティブと制裁
    参加者の行動や進捗に応じて、適切なインセンティブや制裁を設け、行動変容を促進します。罰則としての拘禁は慎重に運用され、逆効果を防ぐために、適切な状況判断が求められます。

  5. メンタルヘルスとトラウマ治療の管理
    治療裁判所は、参加者の精神的・感情的なニーズに対応するため、個別にカスタマイズされた治療計画を策定し、持続的な支援を行います。依存症治療やトラウマケアに関する最新の研究を基に、適切なサポート体制が構築されています。

このガイドラインは、治療裁判所の効果を最大限に引き出し、参加者の更生を支援するためのエビデンスベースの方法を示しており、全国で広く採用されています​。


タイプ別の資料もあるのでそれも見ていこう。
https://ntcrc.org/resources-by-court-type/

メンタルヘルス裁判所について

Mental Health Court Essential Elements、Mental Health Courts: A Primer for Policymakers and Practitioners、Developing a Mental Health Court: An Interdisciplinary Curriculumについてまとめてもらう。

「Mental Health Court Essential Elements」
この文書は、米国の精神保健裁判所(Mental Health Court)の重要な要素を定義し、精神疾患を持つ被告人への対応を改善するために設計されたガイドです。特に、司法と地域社会での治療計画の監督、治療サービスへのリンク、裁判所要件のモニタリング、参加者の持続可能な支援といった10の要素を挙げています。また、これらの要素が多様な裁判所においてどのように実現されるかに焦点を当てています。

「Mental Health Courts: A Primer for Policymakers and Practitioners」:このガイドは、政策決定者と実務者向けに精神保健裁判所の基本を説明しています。精神疾患を持つ個人が刑事司法制度に巻き込まれる背景や、これらの個人が裁判を通じて得られる治療的な利益、治療法の違い、法的なプロセスなどに焦点を当てています。また、薬物裁判所との違い、未成年者向けの精神保健裁判所についても言及されています。

「Developing a Mental Health Court: An Interdisciplinary Curriculum」:このカリキュラムは、精神保健裁判所を設立または改善するための多分野にわたるリソースです。裁判所の設計と運用に関するモジュールを提供し、裁判所チームの役割、目標の設定、対象者の選定、ケースプランの作成、プログラムの持続的な運営についての具体的な学習目標を示しています。また、実際の裁判所チームの例や仮想のシナリオを通じて学習を進めることができます。


刑罰から治療へのシフトに関する提言

「精神疾患と依存症の犯罪化における治療法学の考察」(ミーガン・テスタJournal of the American Academy of Psychiatry and the Law Online、2021年11月)の中では収監されている人々の約16%が深刻な精神疾患を患っているというこれに対して逮捕し投獄し前歴を付ける前の段階で治療ができないかという提言がなされている。

その他にも今回の主題であった行為依存症については

「行動依存症と刑事責任」オースティン・W・ブラムとジョン・E・グラント
Journal of the American Academy of Psychiatry and the Law Online 2017年12月号

上記文章の中では個人が必要のないものを繰り返し盗むことは確かに精神障害として認識はされるが、実際の裁判で無罪となることは難しい。
衝動が抑えられなかったのか、抑えなかったのかという判断ができない。
治療法としては認知行動療法(CBT)やオピオイド拮抗薬(例:ナルトレキソン)を用いた治療が行われる。

さらには盗癖患者には人格障害を併発している例もあるとの結果も報告されている。

日本の場合

法務省の再犯防止推進白書、令和5年版再犯防止推進白書(令和4年度再犯の防止等に関する施策)を見ていく。

窃盗については出所したものの再び戻ってきた人間の割合は減少傾向にはあるものの比較的には高い水準にあるといえる。さらに過去の白書では高齢者の多さが指摘されていた。

令和5年版再犯防止推進白書、第一章、第2節 再犯の防止等に関する施策の成果指標、P25

WHOの定義

またWHOの国際疾病分類ICD-11では衝動制御障害の中に盗癖の分類が存在する。

ChatGPTによるまとめ

クレプトマニア(窃盗癖)は、強い衝動により物を盗む行動を繰り返す精神疾患です。この衝動は、個人的な使用や金銭的利益のためではなく、衝動そのものが目的となっています。盗みを行う前には緊張感や感情の高まりがあり、行為中やその後に快感や安堵感を感じるのが特徴です。

主な特徴:

  • 衝動の抑制が困難:物を盗む衝動が強く、抑えられない。

  • 動機の欠如:盗んだ物は個人的に必要ではなく、金銭的利益も目的としない。

  • 感情の変化:盗みの前に緊張が高まり、行為中や後に快感や安堵を感じる。

クレプトマニアの診断基準:

  • 知的障害や他の精神疾患(躁病エピソードなど)、薬物中毒の影響では説明できない。

  • 一部の患者は盗みの際に記憶喪失や解離性症状を経験し、感情の高まりを覚えていないこともある。

合併症と治療の重要性:

  • クレプトマニアの患者には、うつ病や不安障害、物質使用障害を併発するケースが多いことが知られています。

  • 治療には、感情的な要因と行動の関連を理解し、適切な支援を行うことが求められます。

発症と性差:

  • 多くの場合、青年期後期に発症し、女性に多く見られるが、症状の重さに性差は見られません。

クレプトマニアは、自己制御が難しく、盗みの行為自体に強い感情的な満足を感じるため、専門的な治療が必要とされる疾患です。

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