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説得力の時代 人間の持ち味そのものだよ
相手の不安とか心配を解決しながら、お互いの利害を調整できるのが説得力だよ。
これは、どんなにAIが発達しても、やっぱりなくならないだろうね。
何故かと言うと、相手の実現したいものを探りながら、まずは肯定しなくちゃいけないからね。
そうでないと、対立が続いて、結局は、意見の言い合いで終わってしまうからね。
だから、「自分がこうしたい」とか、「自分はこう考えている」だけでは、説得は絶対できないんだよ。
昔、西武ライオンズに広岡監督という名監督がいたんだよ。
そして田淵というバッターがいたんだけれども、ファースト守らせたいと広岡監督は思っていたそうだよ。
だけど、田淵はもともとキャッチャーで、その後、不摂生がたたって肥満になって、指名打者をやっていたんだね。
昔マンガで「がんばれ、たぶちくん」というのがあったけれど、そのモデルになったのがこの田淵選手だよ。
田淵選手はファーストの練習は始めたけれども、守備に不安があって、なかなか「やりましす」と言わなかったんだね。
そして、ここが広岡監督の偉いところだけど、無理矢理、命令してやらせなかったんだよ。
何故かというと、命令してやらされるというのでは、本当の底力を発揮しないからね。
自発的にやらなければ、本当に強いチームにはならないと、広岡監督は考えていたんだろうね。
そして広岡監督は待つことにしたんだけれども、結局、シーズンが終わって、日本シリーズに入ってから、初めて田淵の1塁守備が実現したんだよ。
田淵がどうして1塁守備をやる気になったかというと、初めて日本シリーズに進出できて、「何が何でも、日本一になってやる」と思ったんだね。
そこで「自分がファーストを守ることで、チームに貢献できるならやります」という気持ちになったんだよ。
広岡監督はそこまで、田淵のやる気が出てくるのを待っていたんだよ。
これはすごいことだと思うよ。
人間の心の動きをしっかり見て、意欲を出すタイミングで説得をしたわけだからね。
これこそ名監督の仕事だよ。
組織にイエスマンというのがいるけど、こういう人には説得力はないんだよ。
ただ上の命令を鵜呑みにして、下にやらせるだけでは、ただの権威主義にしか過ぎないからね。
こういう軍隊型カルチャーの組織は、だんだんダメになっていくと思うよ。
やっぱり説得力というのは、相手を心から尊敬するマインドがどうしても必要なんだよ。
人間と人間が、本当の意味で平等で、お互いの共通の目的に向かって、高め合っていくという気持ちがなければ、説得力は出てこないと思うよ。
だから、AIの時代に入っても、本当に説得力のある人間は、人間味のある仕事をやり続けるだろうね。