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第七偵察隊

日本唯一の機甲師団である第七師団の偵察隊である第七偵察隊は、他の偵察隊とはちょっと違う。
戦車を装備しているのが特徴だ。

機甲科職種は戦車だけでなく、偵察職種もあって新隊員の後期教育は一緒に行われる。
やることは戦車についての教育で「偵察」の教育はあまりない。
なので偵察隊へ配属が決まっている新隊員は偵察隊へ行ってから偵察の教育を受けることになる。
「初級偵察」である。

私の同期生も第七偵察隊へ配属された者が数名いる。
中には偵察隊希望で入隊した者がいて、偵察隊員がバイクに跨り右腕を上げている自衛官募集のポスターを見て憧れて入隊し、偵察隊へ真っ直ぐ希望通りになって来たのに・・・戦車班へ配属となりバイクには乗れないと知り絶望して退職したのも居た。

岡山出身で身体が小さな同期生が居たが彼は体重が50キロも無く、戦車の閉鎖器の開閉レバーに全体重を乗せても50キロある閉鎖器は開かなかった。
そんな同期生が偵察隊員となり戦車班へ配属された。
彼は先任助教に質問した。
「なんで偵察隊に戦車があるのですか?なにするんですか?」と。

先任助教は陸教でも助教をしていた2曹で各班長も畏れる鬼班長であったが、その質問に悲し気に答えたのをよく覚えている。

「偵察隊の戦車はな、威力偵察に使われる。威力偵察とは敵が上陸して来たら真っ先に戦車で行って戦車砲で敵を撃って、敵がどのくらい反撃してきたか反応を見て敵の兵力偵察する・・・・つまり生きては帰れんということだ」と・・・。

質問した同期はそれを聴いて驚いて何も言えなくなった。
「敵が撃って来た弾が何発か数えるかいの・・・」と配属前に笑い話にして言っていた。

各部隊へ配属後彼とは一度だけ戦車での訓練中にお互い装填手として戦車に乗っているところをすれ違ったのが彼を見た最後であった。

今も第七偵察隊は90式戦車を装備している。

七偵以外の偵察隊は「偵察戦闘大隊」に改編になって16式機動戦闘車が配備されているが、戦車のような装甲も無い機動戦闘車でまさか威力偵察を・・・想像したくない話だね。


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