君の行方 【明智光秀】-天下統一 恋の乱- ✎ 5 ちーかま 2024年5月29日 00:07 天下統一恋の乱の二次小説ですヒロインの名は陽菜です。「比叡山を焼き討ちに処す」「御屋形様!お待ちください」私、明智光秀は声を荒らげ、御屋形様の前に出た。「人質はどうするのですか?」「見殺しにする」冷たく言い放たれた言葉に、全身に寒気が走った。「陽菜は…陽菜を見殺しにされると…」陽菜は私の大切な人だ。それを知った朝倉に、人質に取られてしまったのだ。「女一人の為に計画は変えぬ。それとも貴様は戦に色恋を持ち込むと言うのか?」「…」私は唇を強く噛んだ。口の中に鉄の味が広がっていく。「光秀、貴様には比叡山焼き討ちの命を与える」冷水を浴びせられように体が冷えていく。身体の震えが止まらない。「私に陽菜をみすみす見殺しにしろと…そうおっしゃるのですか?」「だったらなんだと言うのだ」顔を上げると御屋形様は冷たい目で私を見下ろしていた。「御屋形様!俺を別部隊として…」「ならぬ!」陽菜の幼馴染である利家が堪らず声を上げたが、御屋形様の冷たい声に遮られる。「比叡山に居る者は全て焼き払え。光秀…貴様の手でな」御屋形様は冷たく言い放ち、その場を立ち去った。「私は…どうしたら」もう迷う時間は無かった。比叡山は目の前にあり、合図を送れば火が放たれる手筈だ。(こちらの策が漏れる事を恐れ、朝倉に探りを入れる事すら出来なかった…)火が放たれた後、業火の中に飛び込み陽菜を探す事も出来る。 だが、それでは罪無き民や民兵を安全な場所に誘導する事が出来ない。(陽菜と多くの命…どちらかを選べと言われれば、どちらを選ぶか心は決まっている。しかし…)静まり返る闇の中で影が動いた。「比叡山の僧兵か?!」瞬時に刀を抜き構えると、その影は手を上げながら私の前に立ちはだかった。 「秀吉…」「気配は消したつもりだったけど、さすが光秀さん、誤魔化せなかったか」 おどけた様子に気を削がれ、刀を下ろす。 「一体何故此処に?」「御屋形様の命です」「まさか…」(私が裏切らぬように秀吉を…)「火を放ったら混乱に便乗して陽菜ちゃんを助けに行ってください。俺が罪無き人達を安全な所に誘導します」御屋形様の命とは俄に信じられず困惑していると、秀吉は私の肩を強く掴んだ。 「時間が無い。比叡山側に気取られる前に!」私は頷き、比叡山の方を睨んだ。「火を放て」 やがて小さな火は炎となり、比叡山を赤く染め始める。 「秀吉、感謝します」 「礼なら御屋形様に。武運を祈ります」私は燃える延暦寺と走り出した。混乱の中抵抗する僧兵を倒しながら陽菜を探す。炎が広がる最中、焦りだけが募っていく。そんな中、男女の諍う声が聞こえた。(まさか…)「陽菜!」「光秀様!」陽菜の傍らには朝倉義景がいた。朝倉は私の存在に気づき、陽菜を引き寄せてその白い喉元に刃を当てた。「ははっ…ついてやがる。貴様の首を差し出せば、あの織田信長も動揺し戦力が削がれるだろう。刀を捨てろ。さすれば女は助けてやる」「くっ…」私は静かに刀を手放した。「ははっ!こりゃあ良い!第六天魔王の側近とあろうものが、女一人の為に命を差し出すとはな!」陽菜はもがく事も出来ず、その顔に恐怖を浮かべている。朝倉は陽菜を盾にしたまま私の刀に近づき、足でそれを蹴り飛ばした。「明智!死ねぃ!女は後で貴様の元に送ってやるわ!」陽菜を突き飛ばした朝倉は、私へと斬りかかってきた。「ぐっ…」「光秀様!」私の脇腹に刃が食い込む。しかし次の瞬間、私の右手は朝倉の首を掴み締め上げていた。「ぐふっ」喘ぐ朝倉を私は冷たい眼差しで見上げる。「信長様はその様な事で心乱すほど、弱い方ではありません。だからこそ私はあの御方についていくと決めたのです。あの御方を見くびらないでいただきたい」「かはっ」苦しげな顔をする朝倉の首にかけた手に、さらに力を込める。「陽菜触れ、あまつさえ盾にするなど…この下衆が」「がっ…」朝倉は口から泡を吹き意識を手放したと同時に、朝倉を体を放り投げる。ドサリと朝倉が倒れると、陽菜が私の元へと駆け寄ってきた。「光秀様!」「陽菜!」私の胸の中に飛び込む小さな体を、私は強く抱きしめた。「遅くなりました…怪我はありませんか?」「いいえ…光秀様が来てくれたおかげで大丈夫です」揺れる瞳に愛おしさが募る。「私が…怖くありませんか?」一瞬戸惑う様な眼差しを向けたものの、陽菜は頭を振り精一杯の笑みを浮かべる。「光秀様が守ってくださいました。だから…怖くはありません」そう言って私にしがみつく。そんな彼女を愛おしく想い、私は強く抱きしめた。「さぁ、帰りましょう」「はい…」燃え盛る炎の中、そう呟く陽菜の言葉を塞ぐように私は唇を重ねた。延暦寺を出ると、燃え盛る比叡山を見つめる御屋形様がいた。「御屋形様…」「光秀、貴様の目的は果たしたようだな」御屋形様は私の傍らにいる陽菜へと視線を走らせる。「貴様の葛藤する姿をもう少し楽しもうと思ったが、女に死なれて意気消沈する貴様など使い物にならぬかな」「御屋形様、恩情感謝します」「単なる気紛れだ」隣の陽菜も慌てて頭を下げる。「信長様、有難うございました」「女…」「はっはい」「動けるのなら怪我人の手当をしろ。今は猫の手も借りたいくらいだからな」「はい!」薄く笑みを浮かべた御屋形様は私達に背を向け歩き出す。「陽菜、行きましょう」「はい」私達は固く手を結び、燃え盛る比叡山を後にするのだった。ꕀ꙳動画【君の行方】のワンシーンを文字にしてみました。歴史に詳しい方が見たら穴だらけだと思うのですが(*/ω\*)なんにせ私は似非歴女なので。光秀さまは優しい印象なのですが、敢えて容赦ない様を書きましたが…如何だったでしょうか?光秀は『下衆』なんて言葉は使わないだろうなぁと思いながら、わざと書きました。信長さまも甘いなぁと思いつつ(〃ω〃)エヘヘ。信長さまは本当はちゃんと優しい人だからね。書いてから思い出したけど、光秀さまの本編のラストって比叡山の焼き討ちの話で、浅井長政殿と対決するんだよね(確か)さらっと公式の小説で確認したら、綺麗にまとめたなぁって感じだった。 いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #動画 #創作大賞2024 #誕生日 #オールカテゴリ部門 #明智光秀 #天下統一恋の乱 #恋乱 #恋の乱 #五月二十九日 5