ちーかま

新選組と恋乱大好きな似非歴女 おもに恋乱の動画と二次小説が多め 最近はアンジェリー…

ちーかま

新選組と恋乱大好きな似非歴女 おもに恋乱の動画と二次小説が多め 最近はアンジェリークの二次小説も掲載しています

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  • 天下統一 恋の乱SS

    note限定の恋乱ショートストーリー置場

  • アンジェリークSS

    アンジェリークのSS

  • 歴史SS

    主に幕末を背景とした歴史SS置場

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    薄桜鬼のショートストーリー置き場

  • 自分のこととか

    自分のことや、動画の作り方等を語っています

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金木犀【織田信長】-天下統一 恋の乱- ✎

私の目の前には金木犀があった。 枝にそっと指を添え軽くしならせると、山吹色の花から甘い香りがする。 「もうこんなに咲きましたよ」 しかし私の呟きに答える声は無い。 『甘い香りがするだけの木に何の思い入れがある?』 信長様はあの日そう言った。 「可憐ではないですか」 「くだらぬ」 そう言いながら私を引き寄せ、強く抱きしめた。 「貴様の存在に勝る花など、この世には何処にも無い」 信長様のあまりにも自信に満ち溢れた言葉に、私は一瞬言葉が詰まった。 「そうであろう?」 恥ずかしさで顔が熱くなる。 赤い顔を隠すように俯いた私の髪に、信長様は額に、頬にと優しい口づけを降らせる。 私にとって信長様は、金木犀よりも甘い存在だった。 金木犀が香る夜、私は初めて信長様に抱かれた。 骨太な指が私の体に触れる。 まるで壊れ物を手にするかの様に優しく。 次第に私の身体は熱を帯び、甘い吐息が洩れる。 経験した事の無い快楽にのまれそうになると同時に、あられもない自分の姿を想像してしまい、私の頭の中は羞恥でいっぱいになった。 顔を伏せ、声を抑えるように唇を噛むと、優しく唇を啄まれた。 「抑えるな。何もかも俺に晒せ。貴様の全てを見せろ」 深く繋がる度に、肌を吸われる度に、甘い声が上がる。 やがて何もかもが蕩けてしまった私は、ただ本能のままに信長様の身体に縋りついた。 「離れないで…」 「離さぬ…必ず…貴様の元に帰る」 「約束…して…」 「………」 その返事は私の喘ぎ声に隠され、聞こえることはなかった。 恋い焦がれても、信長様はもう何処にも居ない。 「ふっ…」 一人寝も慣れたはずなのに、寂しくて涙が零れた。 「うっ…」 流れる涙が褥を濡らすのも構わず、声を上げて泣いた。 「…」 泣き疲れた私は褥を離れ、庭へと降りた。 ひんやりとした空気の中、金木犀の香りを頼りに前に進む。 自分の足音だけが響く中 ガサッ 何かが動く音が聞こえた。 逃げろと頭の中ではわかっているのに、恐怖で体が動かない。 ガサッ…ガサガサッ 目を見開き固まる私の前に、何か黒い影が立ちふさがった。 「ひぃ!たっ狸?」 恐ろしさのあまりに目を瞑り、その場にうずくまった。 「誰が狸だ!この阿呆が!」 聞いたことのある声が頭上から聞こえた。 「この俺を狸と間違えるようなおなごなど、どこを探しても貴様以外おらぬぞ」 恐る恐る目を開いた。 「再会の第一声が『狸』など、貴様の様な色気の無い女は初めてだ」 そこには愛おしい人がいた。 「信長…様?」 「それ以外の何者だと言うのだ」 骨太な指が私の頬に触れる。 「本物…ですか?」 「疑うなら己が自身で確かめてみるがいい」 私は手を伸ばし、端正な顔立ちをそっとなぞった。 「本物…」 「ふん…他にもっと言うことがあろう」 「あっ…」 気がつけば私は信長様に抱きかかえられていた。 「遅くなったが…帰ったぞ」 「でも…信長様は…」 「この俺が貴様との約束を反古にすると思ったのか?簡単には死なぬ。たとえ地獄に落ちてもな」 私はもう一度信長様の顔へと手を伸ばした。 「あたたかい…」 「当たり前であろう。生きているからな」 目から熱いものが込み上げて 「お帰りなさい!」 金木犀の花が香る中、私は信長様の首に縋りついた。 ⋆⋅⋅⋅⊱∘──────∘⊰⋅⋅⋅⋆ 笹川美和さんの『金木犀』で動画を作りたくて でも上手く繋がらないから止めて 再度コネ(ノ)`ω´(ヾ)コネしてアップして 半月ほど経ってからまたコネ(ノ)`ω´(ヾ)コネし直して ほとんど変化無いけどね… SSは少しだけ加筆修正しました やっぱりね 信長さまが好きだ(´・Д・)」!

    • 守護聖オリヴィエの夢の力 ~アンジェリーク➃~ ✎

      日曜日の昼下がり。 王立研究所には私、オリヴィエと、ルヴァ、ゼフェルの三人の守護聖が集まっていた。 「夢がもたらす美しき力♡エリューシオンとフェリシア、この二つの大陸へと再び贈る。夢見る美しさよ!今その心に宿れ!」 二つの大地に向かって私が手をかざすと、ピンク色の閃光が地を這い、やがてキラキラと輝き出した。 「うーん…我ながら上出来♪」 極彩色に染めた髪をかき上げると、のんびりとした声が聞こえてくる。 「あ~オリヴィエ、有難うございます。貴方の夢のサクリアのおかげ

      • 守護聖ゼフェルの不機嫌な理由 ~アンジェリーク③~ ✎

        鋼の守護聖である俺、ゼフェルは以前育成に参加した二つの大陸を眺めていた。 エリューシオンとフェリシア。 現女王陛下とその補佐官が育てた大陸だ。 初めは女王試験に協力する事も、女王候補生の二人と関わりを持つことも嫌で仕方がなかった。 そもそも鋼の守護聖として目覚めた事自体が、俺自身に強い嫌悪感を与えていたからだ。 『こんな力なんか要らねぇ』 ずっとそう思っていた。 アイツと出会うまでは…。 「ゼフェル様、フェリシアにお力をお貸しください」 女王試験が始まってか

        • 守護聖ルヴァのある一日 ~アンジェリーク②~ ✎

          私は漆黒の空の下にいました。 空には流星群。 心地よい夜風が頬をくすぐります。 「アンジェリーク。実は…私は貴女に伝えたい事があるのです」 何処かで聞いたことがある台詞でした。 目の前には金の髪の女王候補がいて 「私は…」 私の指が彼女の柔らかな髪に触れ (待ってください。彼女は大切な女王候補生で…) 「貴女を」 私の腕が彼女のか細い肩を引き寄せ (いけません…そんな…そんな…) 「いけません!そんな破廉恥な事を!」  「うぉ!」 聞き慣れた叫び声

        金木犀【織田信長】-天下統一 恋の乱- ✎

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        • 天下統一 恋の乱SS
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        • 自分のこととか
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          プロローグ ~アンジェリーク①~ ✎

          「アンジェリーク、『流星』を知っていますか?流星とは宇宙空間にある直径1ミリメートルから数センチメートル程の塵が大気に飛び込み大気と激しく衝突し…あ~今日はこの様な難しい話をするために呼び出したのではないのです。流星の事を調べていたらね…今晩、この丘で流星群が観測できると知りまして。それをぜひ貴女に見せたくて…いえ、貴女と一緒に見たくて、こんな夜遅くに貴女を誘ったのです」 少し赤い顔をしたルヴァ様が夜空を指差す。 私はその指先にある空を見上げた。 「わぁ…」 漆黒の空

          プロローグ ~アンジェリーク①~ ✎

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          毒の花【服部半蔵】-天下統一 恋の乱- ✎

          私、服部半蔵【正成】は現当主である服部保長の六男として誕生したらしいです。 なぜ疑問形かと? 私が物心ついた頃には長兄である【正茂】しか側にいなかったからです。 服部の里の者は皆毒に精通した者ばかり。 毒に対する耐性がつかなかった者には【死】という選択肢しかありません。 「正成、食事の時間だ。行こう」 私と十歳以上離れていた正茂は、見知らぬ母、姿を見せぬ父に代わり、良く面倒を見てくれました。 「はい!兄上様」 「服部の里に生まれた以上、毒の耐性をつけて生き残らなければいけない。敗者の待つ先は死だ。正成は敗者になってはいけないよ。正成、生きなさい」 「はい!」 服部の里には似つかわしくない、あたたかな家族の光景。 この【異常】な兄弟愛は完全に里の中では浮いていいました。 いえ、当時の私はこれが【異常】だとは知らなかったのです。 そして私はこの穏やかな幸せが長く続くと信じていました。 兄には一つだけ致命的な欠点がありました。 兄は身体が弱く、よく咳をしていました。 毒に耐性のある体だからこそ薬が効かず、治療のしようがない。 身体が弱い長兄を跡継ぎに置くことに疑問視する者は少なくなく、健康な私を跡継ぎにと父に進言する者も数人いたようです。 しかし父はそれに対しては終始無言を貫き通していました。 ある日の事でした。 私は兄に連れられ、何時もの森にある泉へと水を汲みに出かけました。 その泉の周りには毒草が生茂り、泉は毒水と化していました。 その泉に触れられるのは一部の服部の里の者のみ。 免疫の無い者は触れただけで死に至るのです。 「正成、来てごらん。水辺に新種の薬草が生えているよ」 私は素直に兄の側に膝をつき、水辺を覗き込みました。 「あぁ…本当だ。摘んで帰り…」 そう呟いた瞬間、私の顔面は泉の中に沈められていました。 顔を上げたくても、頭を押さえつけられているので、息継ぎさえ出来ません。 兄に助けを呼ぼうとすれば大量の毒水が口の中に入り、喉に焼けるような痛みが走りました。 「正成ごめん…ごめんよ…お前がいたら私は跡継ぎになれない。ほんの少し体が弱いだけで私を蔑ろにしようとするんだ。皆で健康なお前こそが跡継ぎに相応しいと言うんだ」 力が緩んだ一瞬顔を上げ呼吸をするものの、また直ぐに押さえつけられる。 押さえつける力は徐々に増していき、私の体の半分は泉に浸かっていました。 口から、皮膚から毒水を吸収した私の意識は朦朧とし、体も徐々に痺れていきました。 死ぬ? そんな言葉が頭を過る中、兄の狂った様な声がくぐもって聞こえます。 「私は…私は敗者じゃない!勝者だ!勝ったんだ!」 その瞬間、私は負けようとしているのだと気づきました。 そして兄の「敗者になるな」「生きろ」と言った言葉が脳裏を過りました。 私の中では父よりも強い、絶対的存在である…絶対的存在であった兄の言葉が…。 私は力を振り絞り、わざと泉に沈むようにと徐々に体を進めました。 (一か八か…兄上様が気を抜いているなら、勝算はある) 兄の腕が泉に浸かったであろう辺りで、私は力を振り絞り体を反転させました。 バシャ バシャ 泉に体を打ち付ける様な音が何回か響きました。 顔面が泉から出た瞬間、私はがむしゃらに側にいるはずの兄に飛びつきました。 「がはっ?!」 「形勢逆転…ですね」 ほぼ全身が毒水に濡れた私の体は酷く痺れていましたし、毒水を大量に飲んだ私の意識は薄れていました。 が、皮肉にも兄の『死ぬな』の一言が私を奮い立たせていました。 「ゴホッ」 (私より毒の免疫が高い兄上様にこの毒水は効かない…力でも敵わない…ならば) 私は兄の首を締めながら、その体を泉に沈めようと思いっきり力を入れました。 「ごふっ!」 兄は何度何度も抵抗をしましたが、私は生き伸びる為に必死で首を締め続け、兄の体を泉に沈めようとしました。 「………」 美しく冷淡な相貌は苦悶の表情を浮かべ、鍛えられた逞しい体もやがて抵抗を止めてしまいました。 どのくらいそうしていたのでしょうか。 兄に馬乗りになったまま硬直していた私は、痺れる体を引きずりながら水際へと這って横たわりました。 やがて誰かが近づき 「正成」 冷たく感情の無いその声で私の名が呼ばれました。 「良くやった」 「………」 「里に戻ったら私の部屋に来なさい」 「はっ…ぃ…父上…」 私はそこで意識を失いました。 今夜はここまでにしておきましょうか。 もっと知りたいと…? ふふっ…貴女は困った人ですね。 ではまた私の気が向いたらお話しましょう。 気が向けば…ですがね。 *𝃯┄┄┄┄┄┄𝃯* 前々から半蔵さんストは書いてみたくて いや…一つnoteに掲載済みなんですが 妖しさだけで書いたSS【99/100騙しの半蔵】ってやつ 今回は半蔵さんの過去を書いてみたくて…書きましたが力不足l||li(っω`-。)il||l ちなみに服部半蔵正成という人は、史実では忍と言うより武人のようです

          毒の花【服部半蔵】-天下統一 恋の乱- ✎

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          風鈴 ✎

          縁側で一人夕涼みをしていた。 少しだけ冷たくなった秋の風が吹く。 軒下の風鈴がチリンと鳴った。 ふと人の気配を感じて振り向いた。 でも誰もいない。 いるはずがない。 この家には私一人。 あの人は戦に行ってしまってそれっきり。 もうわかってるはずなのに…まだ諦められない自分がいる。 陽がすっかり落ちた後もぼんやりしていた。 「晩ごはん…食べなきゃ」 一人での食事はもはや義務だった。 台所へと向かおうと立ち上がろうとしたその時、強い風が吹いた。 風鈴は千

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          ひまわり【伊達成実】-天下統一 恋の乱- ✎

          天下統一 恋の乱の二次小説です ヒロインの名は陽菜です 背中を焼くような日差しを浴びながら、俺、伊達成実は庭弄りをしていた。 「珍しいな。お前が土いじりなんて」 振り向けば、陽を背に小十郎が俺を見下ろしていた。 「あっ?これか?じぃに続けってなー」 「伊庭野様は盆栽と生け花だろう」 小十郎のツッコミを軽く受け流し、俺は手を動かし続ける。 「…陽菜が置いていった花だな」 「大きく咲いただろ?やっぱり育てた奴の性格が出るんだよな」   俺は立ち上がり、目の前のひまわりを見下す。 「俺みたいな花だって言ってたんだ。太陽みたいで、陽に向かって真っ直ぐに咲いて」 「お前…自分の事を美化していないか?」 「なんだよ!せっかく人が思い出に浸ってるってのによ!」 振り向くと複雑そうな顔で、小十郎が立ち尽くしていた。 「泣くくらい後悔するくらいなら、引き止めれば良かったろうに」 「泣いてねぇよ」 陽菜を引き止めるのは簡単だった。 「でも…あの時の俺じゃあ…駄目だったんだよ」 俺は陽菜と一緒にひまわりの種を植えた事を思い出していた。 「これは夏に咲く【ひまわり】って名前の花の種なんです」 「へぇ~どんな花が咲くんだ」 「黄色い花弁の大きな花が咲くんですよ。太陽に向かって真っ直ぐに堂々と咲いて、成実様みたいなんです」 顔を赤らめ微笑む陽菜に胸が高鳴った。 そのまま引き寄せて唇を重ねた。 陽菜は一瞬体を硬くしたが、俺に身を任せるように体を預けてきた。 「好きだ…」 そう呟くと、陽菜は泣きそうな顔で「私もです」と答えた。 ただただ幸せだった。 だがある日、陽菜は京に帰ると言い出した。 「じぃに何か言われたのか?」 陽菜は黙って首を振ると、意を決したように言葉を紡いだ。 「成実様は私と居ると過去の事を思い出しそうになっています。私はそれが良い事なのかそうでないのかは…わかりません。思い出したその時に辛い思いをされるのなら、側で支えたいって思ってます」 「だったら…」 「でも、記憶を取り戻す事は本当に成実様の為になるのでしょうか?私は成実様には何時も笑っていて欲しくて…苦しそうな顔は見ていられなくて…その時が来た時の覚悟が…出来ないんです」 俺は何も言えなかった。    今ここで「行くな」と言っても、それはあまりにも軽い言葉にしかならない。 「ごめんなさい。ひまわりの咲くところ、二人で見たかったです…」 陽菜は静かに立ち上がり、俺の部屋を出ていく。  俺は立ち上がる事も引き止める事も出来なかった。 「あーあ!土いじりも体力使うなー」 俺は背伸びをして、縁側へと向かう。   「成実」 「なんだ?」 「今晩は酒でも飲むか?」 「ん…」 「笑っていない成実は気持ち悪いからな」 「なんだよ!それ!気持ち悪いっとのはよ!」 「らしくないと言うことだ」 小十郎は気遣う様に笑うわけでもなく、何時もの涼しい顔をしていた。 それがこいつなりの気遣いだということが痛いほどわかる。 「じゃあ小十郎の奢りな」 「あぁ」 俺は目を凝らし、翳りゆく太陽を眺めた。 (俺は陽菜の太陽にはなれなかった…でもいつか) 堂々と咲くひまわりは夕日を浴びながら、夏の風に身を任せ揺られていた ꕀ꙳ 初! 初! 初!成実さまSS 成実さまのED全部見てないけど(;・ω・)ゲフン スチル全部集めてないけど(;・ω・)ゲフン 嫌いじゃないから(笑)

          ひまわり【伊達成実】-天下統一 恋の乱- ✎

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          First Love【片倉小十郎】-天下統一 恋の乱- ✎

          天下統一 恋の乱の二次小説です ヒロインの名前は『陽菜』です 「お断りします」 俺、片倉小十郎は姉である片倉喜多に向かってはっきりと断りの言葉を告げた。 姉は「やっぱりね」と呟き、ため息をつく。 「姉さんだって俺が縁談を持ちかけられたら断る事くらいわかっているでしょう。俺は陽菜と…」 「小十郎!」 突然姉が大きな声を出し、俺にまっすぐに向き合った。 「私も陽菜ちゃんがお嫁に来てくれたらって…ずっと思ってる。それを楽しみにしている。でもね…『好き』という感情だけでは幸せにはなれないし、幸せにしてあげられないのよ」 「………」 俺が黙りこくると部屋の中は静寂に包まれた。 「俺は…」 言葉を発すると同時に、襖の向こうで衣擦れの音が響く。 (まさか…) 慌てて襖を開けると、そこには陽菜が立ち尽くしていた。 「ごめんなさい…立ち聞きするつもりは…」   陽菜は泣くのを我慢するような顔をして、その場を立ち去った。 「陽菜!」 後を追おうとすると、姉が俺を制止した。 「私が行くわ」 部屋で一人膝を抱え泣いていると、襖の向こうに人の気配を感じた。 「陽菜ちゃん…良いかしら」 「喜多さん…」 遠慮がちに喜多さんが部屋に入ってくる。 喜多さんはうずくまる私に「ごめんなさい」と呟いた。 「そんな…喜多さんは悪くない…」 「さっき小十郎に言ったのは全部本心よ。陽菜ちゃんが小十郎の元に嫁いでくれたらどんなに良いだろうって思う。でもそのせいで陽菜ちゃんが酷く苦労したり、悲しい目に合うんじないかって…怖くなる気持ちもあるの」 喜多さんは泣き笑いの顔で、涙で濡れる私の頬に指を走らせる。 「私はね、小十郎より陽菜ちゃんの気持ちを優先したいわ」 喜多さんは優しく私に微笑みかける。 「だって、小十郎に負けないくらい陽菜ちゃんが大好きだもの」 私は喜多さんに縋りつき、大声を上げて泣いた。 縁談を断ってから数日、陽菜の様子がおかしい。 何か考え事をしているようで、心此処にあらずといった感じだ。 さらに縁談の話を聞かれたせいで気まずい事もあり、俺達はまともに話も出来ていない状態だった。 (縁談は断ったとはっきり告げるか…) 縁側で一人煙管を味わっていると、誰かが近づく気配がした。 「小十郎様、甘味とお茶はいかがですか?」 「陽菜…」 陽菜は何時も通りの笑を浮かべている。 「あぁ、いただこうか。隣に座りなさい」 「はい」 菓子と茶を口にしている間、陽菜は黙って俺の様子を眺めている。 「どうした?」 「小十郎様にお話があります」 「…言いなさい」 「私、京に帰ります」 突然の告白に後ろ頭を殴られたような衝撃を受ける。 「縁談なら…」 「縁談の事は関係ありません」 陽菜は真っ直ぐに俺に向き合い、言葉を続ける。 「ずっと…小十郎様の為に出来ることを考えていました。私は小十郎様の中にある『義』を貫いて欲しいと考えました。だから小十郎様をお側で支えたいと思いました。でも…私じゃ駄目なんです」 陽菜は涙を流しながら言葉を続ける。 「想う気持ちが強くても…私が単なる小料理屋の娘である事は覆せない。私が武家の娘になることはない。好きだなんて綺麗ごとだけでは、小十郎様を生涯お支えする事は出来ないんです」 何も言い返せなかった。 いや…「そんな事はない」と言いたかった。 だが、これが俺達の現実で、陽菜の言う事はあまりにも正論過ぎて、言葉が出なかった。 「だからさよならします」 目に涙を溜めながら微笑む陽菜が愛おし過ぎて、俺はただ黙ってその小さな体を抱きしめた。        その日の夜はお互いを激しく求めあった。 これから訪れる『別れ』の隙間を埋め尽くすように。 触れるたびに愛おしさが募る。 口づけると陽菜が小さく笑った。 「どうした?」 「ふふっ…小十郎様の口づけは何時も苦いんです。煙草草の香り」 「嫌だったか?」 「いいえ」 陽菜は少し身を起こして、俺に口づける。 その仕草が堪らなく愛おしくて、俺はさらに強く抱きしめた。 「小十郎様が私を愛してくれた証を、たくさん刻んでください。離れても…貴方を思い出せるように」 陽菜が奥州を立って一週間ほど経ったある日の夜、縁側で一人佇んでいると意外な客人が現れた。 「よぉ、湿気た面してるな」 「景親伯父さん…」 「邪魔するぞ」 伯父は徳利と猪口を手にしながら、俺の隣に座った。 「何の用ですか?」 「ん?可愛い甥っ子が失恋したって聞いてな…泣いてるんじゃないかって思って馳せ参じたわけよ」 「子供じゃあるまいし…泣くわけがないでしょう」 伯父は俺の隣で勝手に晩酌を始める。 「まぁ、人生は出会いと別れの連続だからな。その中で一回くらい泣いたって罰は当たらねぇよ」 「早くも酔ってるんですか?」 苛立ちを感じながら、伯父の手から猪口を奪う。 中の酒を一気に煽ると、喉に焼けつくような刺激が走った。 「おぃおぃ、やけ酒とはいただけねぇな」 伯父は面白いものを見たように笑いながら、俺の手の中の猪口に酒を注ぐ。 「まぁ、初恋ってもんは男も女も忘れられないって言うからな」 「誰が初恋ですか?」 「お前がだよ」 「子供じゃあるまいし」 苛立ちを隠すように伯父に背を向ける。 「初恋だろ?今までの中で、あんなに本気で好きになったおなごは居ないだろうよ」 「………」 「惜しかったなぁ。俺だったら二人手を繋いで逃避行したな」 「またそんないい加減な事を…」 俺は震える肩を静めるのが精一杯だった。 「おぃおぃ、泣いてんのか?」 「そんなわけ無いでしょう!」 振り向き、目に入った伯父の姿が何故かぼやけて見える。 「やっぱり泣いてんじゃねぇか」 笑う伯父の顔がさらに歪んで見える。 「人払いしてっから…好きなだけ泣け。見てるのは俺と空の月くらいだからよ」 「………」 俺はみっともなく伯父に縋りつき、声を押し殺した。 いくつかの季節が巡り、うららかな春の日に俺は祝言を上げた。 身支度をしながらソワソワしていると、勢い良く襖が開き成実が部屋に乗り込んできた。 「まだ身支度終わらないのか?花嫁はとっくに支度が済んでんぞ」 「何故お前がそれを知っている」 「何故って、さっき会ってきた…たたた!小十郎!脇腹抓るな!」 「勝手に人の嫁の部屋に入るなど…良い度胸だな!」 「ほらほら小十郎、嫁さんがさっきからお前が迎えに来るのを待ちかねてるぞ!」 「景親伯父さんも見たんですか?」 「そりゃ、可愛い甥の嫁さんだからな。早くに挨拶しないと失礼だろう」 二人をジロリと睨みつけたが、二人ともどこ吹く風といった感じだ。 俺は足早に彼女の居る部屋へと向かった。 「小十郎様!」 そこには白無垢に包まれた、美しい花嫁がいた。 立ち上がろうとする彼女の手を慌てて取った。 「小十郎様」 「ん?どうした?」 彼女は満面の笑を浮かべ、俺に告げた。 「幸せになりましょう。二人で」 俺の手を小さな手が握りめる。 「あぁ、必ず」 俺はその小さな手を強く握りしめた。 ー ෆ YouTubeに小十郎様の動画をアップした時「久しぶりにSS書きたいなぁ」と思いコネ(ノ)`ω´(ヾ)コネしていました 頭に浮かぶ場面を繋ぎ合わせ、コネ(ノ)`ω´(ヾ)コネすること数日 久しぶりのSSだったので 『書ける?(゚Д゚;≡;゚д゚)?私書ける?』 と心配しましたが、なんとか形にはなりました(笑) いくつかボツった場面があります 京に帰る陽菜を送り出す時に雨が降り出し、雨に濡れながらしょぼんってなる小十郎さまとか 成実さまが「それなら俺が陽菜を奪う!」って言うとか ボツった代わりに景親さんの出番ヽ(•̀ω•́ )ゝ 喜多さんも結構好き乁( ˙ω˙ 乁)しゃー

          First Love【片倉小十郎】-天下統一 恋の乱- ✎

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          双月㈡【藤林朔夜】-天下統一 恋の乱- ✎

          双子の兄である弦夜に呼び出された俺は、山道を急いだ。 「普段着で来いよ」 定期連絡だと言いながらも「普段着で来い」の意味がまったくわからなかったが、俺は指示にしたがった。 やがて弦夜が指定した庵に着いた。 庭の方に回ると、縁側で杯を持って佇む弦夜がいた。 弦夜は何時もの着崩した着流しではなく、仕立ての良い着物に身をつけていた。 「おー朔夜。早くこっち来いよ。美味い酒を飲ませてやるからよ!」 苛立ちを感じながら弦夜の元へと急ぐ。 「どういう事だ?定期連絡ではないのか?」 「ん?まぁ座れよ」 そう言いながら弦夜は杯を俺に手渡した。 「政宗から美味い酒をもらってよ。朔夜にも飲ませてやろうと思ってな」 「政宗様と呼べ」 「小十郎さんと一緒な事言ってら」 弦夜は反省する様子もなく、俺の手の中の杯に酒を注ぐ。 「朔…知ってっか?今日は俺達の『誕生日』なんだってよ」 「なんだそれは?」 「んー…要約すると美味い酒が飲める日ってことだな」 「忍は酒など飲まない」 「まぁまぁ…見てみろ」 弦夜は俺の持つ杯に自分の杯を軽く当てた。 「空にしかないはずの月が、今夜は特別に地上に降りてきている」 杯に視線を落とすと、それぞれの杯の中に月が映ったいた。 「な?今夜は特別だろ?月見酒と洒落こもうぜ」 「………」 俺は黙って酒を煽った。 喉に熱さを感じる中、口の中には何とも言えない余韻が漂っている。 空になった杯を弦夜へと差し出した。 「今夜は特別だ。月が綺麗だからな」 再度杯に酒を満たすと、中に月が浮かぶ。 俺は弦夜の杯に自分の杯をそっと重ねた。 「双子月だな」 弦夜がふっと笑みを漏らす。 「俺達と同じだ」 「弦と一緒にするな」 「一緒だろ?朔は俺の半身、俺は朔の半身なんだからよ」 「………」 「今晩は任務の事は忘れて、朝まで飲み明かそうぜ」 「今日だけだ…」 俺達は空が白むまで、二人きりで酒を飲み交わした。 ꔛ‬𖤐 弦夜&朔夜( ᐛ )( ᐖ ) 🍰*˖…ꕤ𝙷𝚊𝚙𝚙𝚢 𝙱𝚒𝚛𝚝𝚑𝚍𝚊𝚢ꕤ…˖*🎂 たまにはしがらみを捨てて、二人でお酒を酌み交わすのも良いかなぁと思いました(*´艸`)

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          双月 ㈠【藤林弦夜】-天下統一 恋の乱- ✎

          正式に伊達の忍になってからどのくらい経っただろう。 俺は目の前に差し出された報酬を目の前にして、ため息を一つついた。 「なんだ?不満か?」 何時も堅苦しい小十郎さんが俺のため息に反応して、顔を引きつらせる。 「不満つーかよ…美味い酒とか出てこないかなぁ…なんてな」 「何?」 立ち上がろうとする小十郎さんを、隣で黙っていた政宗が静かに制する。 「弦夜の望みは酒か?」 政宗が俺に真っ直ぐに向き合った。 「んー?なんか今日は俺の『誕生日』ってやつらしいから、美味いもんでも出てこないかなぁーなんてね」 「誕生日とはなんだ?」 小十郎さんが眉間に皺を寄せながら、さらに俺に問いかけてくる。 「俺もよく知らねぇよ。通りすがりの宣教師に聞いただけだからな。美味いもん食って良い日だって事しか理解出来なかったし」 「よく知らない事を押し付けるな」 「小十郎」 黙って俺達の話を聞いていた政宗が口を開いた。 「あれを弦夜に渡せ」 「あれでございますか?」 「そうだ」 小十郎さんは渋々席を外し、俺は政宗と二人きりになった。 「弦夜には確か双子の弟が居たな」 「良く憶えてんじゃん。まぁ…たまにしか会わねぇけどな」 「ならばその弟と飲むが良い」 部屋に戻った小十郎さんが俺の前に酒瓶をドンッと置いた。 「政宗様の秘蔵の酒だ」 「えっ?マジで?」 「あの廃寺で飲むには勿体無い酒だぞ。心して飲め」 「はいはい。じゃあもう一つの面倒くさい仕事も張り切って終わらせて、さっさと帰るとするか」 小十郎さんが背中越しに何が叫んでいたが、俺は無視して報酬を手に部屋を出た。 俺は定期連絡だと言い、双子の弟の朔夜を廃寺の近くにある庵に呼び出した。 俺は庭先を眺めながら、杯と酒を用意する。 薄暗くなった空には上弦の三日月が浮かんでいる。 杯に酒を満たすと、杯の中にぼんやりと月が映った。 「朔…早く来いよ。秘蔵の酒を全部飲んじまうぞ」 酒を煽ると、庭先に人の気配がした。 「おー朔夜。早くこっち来いよ。美味い酒を飲ませてやるからよ!」 朔夜編に続くꕀ꙳

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          CORE PRIDE【織田信長】-天下統一 恋の乱- ✎

          燃える城の中に鯉口を切る音が響く。 目の前の男は慄き、魔物でも見るかのような顔つきで見上げている。 刀を抜くと、その刀身は蒼く美しい輝きを放った。 「ひぃ…」 男が声を上げると同時に、俺の手にある刀が風を切る。 シュッ 軽い音と同時に、男の頭上にあった髷が地に落ちた。 「去れ」 冷たく言い放つと、男は慌てふためきながら俺の前から立ち去った。 「御屋形様…よろしいのですか?」 「何がだ?」 刀を鞘に収めながら光秀の方を振り向くと、光秀は薄く笑みを浮かべていた。 「いえ…なんでもありません」 「ふん…おかしな奴だ」 俺が殺生しなかった事が珍しいのだろう。 「命を奪うだけが力ではない…そう教わった」 光秀は「誰から?」とは問わずただ「そうですか」と答えた。 「それは良うございました」 そう言葉を発した瞬間、光秀の愛刀が閃光を放った。 ザシュ 鈍い音と断末魔の叫び声が耳に響く。 「チッ…油断したか」 「いえ…完全に気配を消していましたから」 気がつけば俺達は囲まれていた。 「見たところ雑魚ばかりだな。光秀、燃え広がる前に一気に切り抜ける!」 「御意」 背中合わせになった光秀に声をかけ、同時に雑魚どもの中に飛び込む。 「此処で立ち止まるわけには行かぬ。俺には帰りを待つ者がいるからな」 俺が帰る場所。 貴様の元へと帰ってみせる。 ꕀ꙳ アメブロに『熱くなる主題歌』てお題がありました 動画で使ってるUVERworldの『CORE PRIDE』ってアニメの主題歌らしい アメブロは自分のYouTubeと直接リンクさせてないのて、こちらに書きました あんまり歌詞と関係ない内容になったけど ヒロインと出会い変わっていく信長さまを書きたかったから あと光秀さまも書きたかった 信長さまて光秀さまのコンビは最高です (´・Д・)」信光!最高! ※信光=単に信長さまと光秀さまコンビのこと びーえるとはちゃうよ

          CORE PRIDE【織田信長】-天下統一 恋の乱- ✎

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          君の行方 【明智光秀】-天下統一 恋の乱- ✎

          天下統一恋の乱の二次小説です ヒロインの名は陽菜です。 「比叡山を焼き討ちに処す」 「御屋形様!お待ちください」 私、明智光秀は声を荒らげ、御屋形様の前に出た。 「人質はどうするのですか?」 「見殺しにする」 冷たく言い放たれた言葉に、全身に寒気が走った。 「陽菜は…陽菜を見殺しにされると…」 陽菜は私の大切な人だ。 それを知った朝倉に、人質に取られてしまったのだ。 「女一人の為に計画は変えぬ。それとも貴様は戦に色恋を持ち込むと言うのか?」 「…」 私は唇を強く噛んだ。 口の中に鉄の味が広がっていく。 「光秀、貴様には比叡山焼き討ちの命を与える」 冷水を浴びせられように体が冷えていく。 身体の震えが止まらない。 「私に陽菜をみすみす見殺しにしろと…そうおっしゃるのですか?」 「だったらなんだと言うのだ」 顔を上げると御屋形様は冷たい目で私を見下ろしていた。 「御屋形様!俺を別部隊として…」 「ならぬ!」 陽菜の幼馴染である利家が堪らず声を上げたが、御屋形様の冷たい声に遮られる。 「比叡山に居る者は全て焼き払え。光秀…貴様の手でな」 御屋形様は冷たく言い放ち、その場を立ち去った。 「私は…どうしたら」 もう迷う時間は無かった。 比叡山は目の前にあり、合図を送れば火が放たれる手筈だ。 (こちらの策が漏れる事を恐れ、朝倉に探りを入れる事すら出来なかった…) 火が放たれた後、業火の中に飛び込み陽菜を探す事も出来る。  だが、それでは罪無き民や民兵を安全な場所に誘導する事が出来ない。 (陽菜と多くの命…どちらかを選べと言われれば、どちらを選ぶか心は決まっている。しかし…) 静まり返る闇の中で影が動いた。 「比叡山の僧兵か?!」 瞬時に刀を抜き構えると、その影は手を上げながら私の前に立ちはだかった。   「秀吉…」 「気配は消したつもりだったけど、さすが光秀さん、誤魔化せなかったか」  おどけた様子に気を削がれ、刀を下ろす。   「一体何故此処に?」 「御屋形様の命です」 「まさか…」 (私が裏切らぬように秀吉を…) 「火を放ったら混乱に便乗して陽菜ちゃんを助けに行ってください。俺が罪無き人達を安全な所に誘導します」 御屋形様の命とは俄に信じられず困惑していると、秀吉は私の肩を強く掴んだ。  「時間が無い。比叡山側に気取られる前に!」 私は頷き、比叡山の方を睨んだ。 「火を放て」  やがて小さな火は炎となり、比叡山を赤く染め始める。   「秀吉、感謝します」   「礼なら御屋形様に。武運を祈ります」 私は燃える延暦寺と走り出した。 混乱の中抵抗する僧兵を倒しながら陽菜を探す。 炎が広がる最中、焦りだけが募っていく。 そんな中、男女の諍う声が聞こえた。 (まさか…) 「陽菜!」 「光秀様!」 陽菜の傍らには朝倉義景がいた。 朝倉は私の存在に気づき、陽菜を引き寄せてその白い喉元に刃を当てた。 「ははっ…ついてやがる。貴様の首を差し出せば、あの織田信長も動揺し戦力が削がれるだろう。刀を捨てろ。さすれば女は助けてやる」 「くっ…」 私は静かに刀を手放した。 「ははっ!こりゃあ良い!第六天魔王の側近とあろうものが、女一人の為に命を差し出すとはな!」 陽菜はもがく事も出来ず、その顔に恐怖を浮かべている。 朝倉は陽菜を盾にしたまま私の刀に近づき、足でそれを蹴り飛ばした。 「明智!死ねぃ!女は後で貴様の元に送ってやるわ!」 陽菜を突き飛ばした朝倉は、私へと斬りかかってきた。 「ぐっ…」 「光秀様!」 私の脇腹に刃が食い込む。 しかし次の瞬間、私の右手は朝倉の首を掴み締め上げていた。 「ぐふっ」 喘ぐ朝倉を私は冷たい眼差しで見上げる。 「信長様はその様な事で心乱すほど、弱い方ではありません。だからこそ私はあの御方についていくと決めたのです。あの御方を見くびらないでいただきたい」 「かはっ」 苦しげな顔をする朝倉の首にかけた手に、さらに力を込める。 「陽菜触れ、あまつさえ盾にするなど…この下衆が」 「がっ…」 朝倉は口から泡を吹き意識を手放したと同時に、朝倉を体を放り投げる。 ドサリと朝倉が倒れると、陽菜が私の元へと駆け寄ってきた。 「光秀様!」 「陽菜!」 私の胸の中に飛び込む小さな体を、私は強く抱きしめた。 「遅くなりました…怪我はありませんか?」 「いいえ…光秀様が来てくれたおかげで大丈夫です」 揺れる瞳に愛おしさが募る。 「私が…怖くありませんか?」 一瞬戸惑う様な眼差しを向けたものの、陽菜は頭を振り精一杯の笑みを浮かべる。 「光秀様が守ってくださいました。だから…怖くはありません」 そう言って私にしがみつく。 そんな彼女を愛おしく想い、私は強く抱きしめた。 「さぁ、帰りましょう」 「はい…」 燃え盛る炎の中、そう呟く陽菜の言葉を塞ぐように私は唇を重ねた。 延暦寺を出ると、燃え盛る比叡山を見つめる御屋形様がいた。 「御屋形様…」 「光秀、貴様の目的は果たしたようだな」 御屋形様は私の傍らにいる陽菜へと視線を走らせる。 「貴様の葛藤する姿をもう少し楽しもうと思ったが、女に死なれて意気消沈する貴様など使い物にならぬかな」 「御屋形様、恩情感謝します」 「単なる気紛れだ」 隣の陽菜も慌てて頭を下げる。 「信長様、有難うございました」 「女…」 「はっはい」 「動けるのなら怪我人の手当をしろ。今は猫の手も借りたいくらいだからな」 「はい!」 薄く笑みを浮かべた御屋形様は私達に背を向け歩き出す。 「陽菜、行きましょう」 「はい」 私達は固く手を結び、燃え盛る比叡山を後にするのだった。 ꕀ꙳ 動画【君の行方】のワンシーンを文字にしてみました。 歴史に詳しい方が見たら穴だらけだと思うのですが(*/ω\*)なんにせ私は似非歴女なので。 光秀さまは優しい印象なのですが、敢えて容赦ない様を書きましたが…如何だったでしょうか? 光秀は『下衆』なんて言葉は使わないだろうなぁと思いながら、わざと書きました。 信長さまも甘いなぁと思いつつ(〃ω〃)エヘヘ。 信長さまは本当はちゃんと優しい人だからね。 書いてから思い出したけど、光秀さまの本編のラストって比叡山の焼き討ちの話で、浅井長政殿と対決するんだよね(確か) さらっと公式の小説で確認したら、綺麗にまとめたなぁって感じだった。

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          EVERY【織田信長】-天下統一 恋の乱- ✎

          ※天下統一 恋の乱の二次小説です ヒロインの名は陽菜です 信長様にお客様が来ていると聞き、私は広間へお茶と茶菓子を持っていった。 広間からは何やら早口の言葉が聞こえてくる。 (聞いたことある声…もしかしたら) 襖を開けると、想像通りそこにはフランシスコ・ザビエールとルイス・フロイスがいた。 「ザビちゃん!ルイちゃん!お客様って二人の事だったのね」 「あら!陽菜!元気ソウね」 「久しぶりダナ陽菜、ジャマしてるぞ」 二人とは軽く挨拶を交わし、後で時間を作ることになった。 ザビちゃんとルイちゃんは『かとりっく教会』の宣教師で、変わった品物があるとこうやって登城し、信長様に献上しているのだ。 難しいことはわからないが、異国との交流はこの日の本の国を豊かにする為に必要な事らしい。 しばらく庭掃除をしていると信長様が広間から出てきた。 私はわずかに眉間に皺が寄っていたのを見逃さなかった。 (どうしたんだろう?面白い物がなかったのかな?) 入れ違いに広間に入ると、ザビちゃんとルイちゃんが何やら揉めていた。 「ザビが悪いゾ。Mr.ノブナガに『LOVE』を連呼スルから、メチャ警戒してたゾ」 「失礼ネ!『LOVE』は万人に与えラレルものよ」 「サビみたいな顔のヤツに言われタラ、警戒シタクもナルヨ」 「なんデスって!キィィー!」 私は二人の間に入り込んだ。 「まぁまぁ二人とも落ち着いて。えっと…『らぶ』はばれんたいんの時も聞いた言葉で…確か『愛してます』って意味よね? 「ソウよ!陽菜は賢いワ!」 (いきなり同性から『愛してます』って言われたら、確かに戸惑うかも…) 「今日ハMr.ノブナガの誕生日ナンダ。だから今日は誕生日プレゼントを持ってきたんダゾ!」 「誕生日?誕生日って何?それの何がおめでたいの?」 私は初めて聞く言葉に首を傾げる。 「「Oh!No!誰も『誕生日』を知らないナンテ!」」 ザビちゃんとルイちゃんの言葉をまとめると、異国では生まれた日を祝う『誕生日』と言うお祭りがあるらしい。 家族や親しい知人、恋仲は贈り物を贈ったり、甘い『けーき』と言うお菓子を食べたりして祝うそうだ。 (けーきが何かがわからないけど、かすてらで代用出来るっぽい) 私は台所でさっそくかすてら作りに取り組んだ。 (問題は贈り物よ。信長様の欲しい物がまったくわからない…城下に出て探す時間はもう無いし) かすてらの甘い匂いが漂い始めると、ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。 「陽菜!なんか食うもんないか?鍛錬のし過ぎで腹減ってよ」 「わんこくんは食いしん坊だなぁ。今食べたら美味しい夕餉が入らなくなるよ」 予想通り犬千代と秀吉様が現れた。 「二人ともお疲れさま。ふふっ…夕餉まで時間あるものね」 私は棚からべっこうあめを取り出し、二人へ差し出した。 「疲れた体に甘いものがしみるぜ!」 「優しい味だね。おかわりもらっても良い?」 子供みたいに飴を頬張る二人を眺めていた私は、妙案を思いついた。 (そうだ!二人に聞いてみよう) 「ねぇねぇ、信長様の『欲しい物』か『貰ったら嬉しい物』を知らない?」 二人は顔を見合わせしばらく考えた後、秀吉様が「あぁ!」と声を上げる。 「秀吉、お前御屋形様が欲しい物知ってんのかよ?」 「知ってるも何も、わんこくんも貰ったら絶対に嬉しいと思うよ」 秀吉様がボソボソと犬千代に耳打ちすると、犬千代は真っ赤な顔をして慌てふためく。 「ばっ…馬鹿野郎!そんなもん…」 「嬉しいでしょ?」 「知るか!」 犬千代は真っ赤な顔をしたまま、一人立ち去ってしまった。 「あの…秀吉様。何か難しい物なのでしょうか?」 「うーん…陽菜ちゃん次第かな」 秀吉様は片目を瞑り、私にそっと耳打ちをした。 夕餉の後、私は信長様の部屋へとかすてらを持って行った。 「なんだ?今日のかすてらは量が多いな」 「今日は信長様の誕生日とお聞きしたので、特別にたくさん持ってきました」 「ふん…かすてらがたらふく食えるのなら、誕生日とやらも悪くはない…」 まんざら悪くない反応にホッとする反面、これから私が贈ろうとしている物がかすてらでは無いことが頭を悩ませる。 「どうした?物欲しそうな顔をして。貴様もかすてらを食いたいのか?」 「いえ…違います。えっと…」 どう切り出したら良いのかわからず、しどろもどろになる。 「大方あの宣教師達に『誕生日』の事を色々吹き込まれたのだろう。生まれた日を祝うなど…そんな事をして何の得がある?必要性がわからぬ」 「そう…ですよね」 「………」 私はすっかり意気消沈し、盆を持って退出をした。 「必要性か…お祝いしたいって気持ちだけじゃあ駄目なのかな。 湯浴みをしながら私はため息をついた。 正直、誕生日の必要性については自分もわからずじまいだった。 この国では新年を迎える度に一つ歳をとる。 無事に年を越せた事と同時に歳を重ねた事を祝う。 だからサビちゃん達が言う『誕生日』と言うものが良く理解出来ないのだ。 「でも…信長様が喜んでくれるなら…と思ったんだけど」 濡れた髪を手ぬぐいで拭いながら、静かな廊下を渡っていく。 ふと人の気配を感じ、私は顔を上げた。 「なんだ貴様その辛気臭い顔は」 「信長様…」 「気になって眠れぬではないか」 信長様は私の手を取り、ご自分の部屋へと向かっていく。 ドカリと座った信長様の前に、私は俯きながら正座をした。 「で?宣教師達に何を言われた?」 「今日は…信長様の誕生日なので、『けーき』と言う甘いお菓子と『贈り物』を用意して祝うと良いと言われました」 信長様の声はすこぶる不機嫌だ。 「ふん…それがさっきのかすてらだな。で?」 「えっ?」 「贈り物はどうした?」 「あっ…贈り物は…その…」 私の歯切れの悪い言葉に、信長様の苛々が募るのがわかる。 「無いのだな?」 「いえ…無いわけじゃなく」 「では寄越せ。今日は俺の誕生日だからな」 ここまで言われては、渡さないわけには行かない。 私は意を決し、信長様へとにじり寄った。 「では目を瞑ってください」 「うむ…」 意外にも信長様は素直に目を瞑ってくれた。 静かに近づき、顔をまじまじと眺める。 恋仲になったとはいえ、信長様の顔を観察する機会などあまりない。 (だって照れくさくて正視出来ないもの) 「まだか!?目を開けるぞ!」 焦れた信長様が声を張り上げる。 「もっもう少しお待ちください!」 「ふん…」 諦めたようにため息をつき、さらに固く目を瞑る姿が愛おしくて、胸がキュッと締めつけられる。 (喜んでくれるかな…) 秀吉様が『絶対に喜ぶ』と言った贈り物。 私はそっと信長様の唇に自分の唇を重ねた。 一瞬だけ触れて離れる。 その直後、目を開けた信長様と目があった。 「………」 信長様は目を大きく見開き、唖然とした顔をしている。 「もっ申し訳ございません!」 「待て!」 慌てて立ち上がり立ち去ろうとすると、信長様に手を引っ張られた。 体の均衡を崩した私は縺れるように信長様を押し倒してしまった。 端正な顔が目の前にあり、顔が熱くなってくる。 「申し訳ございません!」 「誰が帰って良いと言った」 「えっ?」 「今日は俺の『誕生日』で『特別な日』なのだろう?」 「はっ…はい」 「だったらもっと寄越せ」 「えっ!」 「遠慮は要らぬ。貴様すべてが俺のものであるように、俺のすべては貴様のものだ。全部くれてやる」 熱い視線に胸が高鳴る。 「俺に『らぶ』とやらを贈って良いのは貴様だけだ」 胸がキュッと甘く痛む。 「信長様…」 「なんだ」 「愛しています」 「俺もだ」 私は信長様の形の良い唇に、再度自分の唇を押し当てた。 甘い予感を感じながら。  ❥・・ ・・❥ 日本に『誕生日』が定着し始めたのは戦後しばらくしてからのこと。作中にある通り、それまでは新年に一つ歳を重ねるとされてきました。 織田信長が日本で初めて誕生日を祝ったと言われていますが、それはルイス・フロイスが信長の消滅を正当化する為に、信長の死後に書き記すしたのではないかと言われています(国内での記述書にそのような記録は無い)。 でも私は祝う! 信長さまハピバ✨(祝´∀`)ノ.+:。 ☆。:+.ヽ(´∀`祝)✨

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          葉桜 ✎

          京の市中を山南さんと巡回している時だった。 俺は雨に濡れた桜の木の下で立ち止まった。 花はとっくに散り、緑の葉が生い茂っている。 「………」 「土方くん、どうしたんだい?」 「山南さん、アンタは散り際の桜を見た事があるか?」 「あぁ…確か花の中心が赤くなっているような気がするね」 「その通りだ。だったら桜の花の中心が赤くなる理由を知っているか?」 「考えた事がなかったな…何故なんだい?」 山南さんは小首をかしげ、桜の木を見上げている。 「芹澤が桜の木の下に

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          永遠の詩【土方歳三】-薄桜鬼- ✎

          ※薄桜鬼の二次小説です 多くの仲間を戦で失い、別れを告げ来た俺は今、蝦夷の地にいた。 傍らには無理やり蝦夷まで乗り込んできた雪村がいる。 江戸へ帰す機会は幾度もあった。 だが頑固なコイツは俺の傍を離れなかった。 雪村は黙って書類の整理をしながら、文机の上にある湯呑みの中身を気にしている。 「雪村、お前は何故此処にいる?」 「えっ?」 「何故頑なに江戸に帰ることを拒んだ?」 雪村は俯き黙りこくる。 「今までの延長で俺の世話をやくためにいるのなら、必要ねぇ」 この蝦夷の地はやがて戦場になる。 そんなことはこいつも十分にわかっているはずだ。 「命の保証もねぇ、お前を守ることもしてやれねぇ、そのくらいわかってるな?」 俯く雪村の肩が震えている。 「最後の通告だ。江戸に帰れ」 わざと冷たく言い放ち背を向けた。 「嫌です」 「なんだと?」 振り返り睨みつけると、泣きそうな顔で歯を食いしばる雪村がいた。 「私は帰りません。此処にいます。皆さんとの約束を果たすためです」 「………」 「私は皆さんと約束しました。新選組の行く末を見届けると…」 「新選組はもう無い!」 大きな声で怒鳴ったが、雪村が怯むことはない。 「新選組はあります!まだ息づいています。それを一番知っているのは土方さん、貴方ではありませんか」 「なんだと?」 「貴方が新選組そのものです。仲間と死に別れ、決別を繰り返す…その度に皆の意志を抱えて来たのは貴方ではないですか!」 雪村は肩を震わせながら泣いていた。 「貴方がいる限り新選組は無くなりません。だから私は…」 気がつけば雪村の小さな体を抱きしめていた。 「新選組は今も武士の道標だと思うか?」 「はい…」 「俺はあいつらの…意志を引き継げていると思うか?」 「はい!」 雪村はしゃくりを上げながら言葉を続ける。 「皆が愛したものは今も貴方の中に…今も新選組に息づいています。だから見守らせてください。最後まで…この命が尽きるまで」 「頑固だな」 「土方さんには負けます」 「ふん…そんな俺に惚れたんだろ?」 途端に雪村の顔が真っ赤に染まる。 「気づいてないと思ったのか?俺はお前みたいに鈍感じゃねぇよ」 言い訳をしようとする雪村を唇で無理やり塞いだ。 「俺は終わりなんざ求めてねぇ…生きたいから足掻き続ける」 「はっ…」 雪村が息継ぎをしたのか返事をしたのかわからないまま、再度唇を塞ぐ。 「俺はきっとこれからも走り続ける。俺は待たねぇ。だからお前が必死についてこい」 「はい…」 俺達は無粋な大鳥が執務室に現れるまで、互いの体を離さなかった。 ー ෆ 土方さんの誕生日SSはガチなやつ書いたんですが 作った動画眺めているうちになんか書きたくなってしまいφ=φ_(:P 」∠)_ 動画と作中の台詞の一部はゲーム内の台詞をそのまま、もしくは少し変えたものです(無印の方で、真改の方は同じかは知りません) やっぱり私の中での土方さんは薄桜鬼(あくまでも無印の方)のイメージが強いなぁ

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