小さな祈り 【前田利家】-天下統一 恋の乱- ✎ 3 ちーかま 2023年10月8日 12:56 「で?今日は陽菜ちゃんと何で喧嘩したの?」「してねぇよ!ちょっと言い合いになっただけで…」陽菜は俺、前田利家の幼なじみで…今は恋仲の関係だ。だが今朝些細な事で言い合いになり、謝る事もなく今に至る。「だからそれが喧嘩でしょ」秀吉の呆れ顔を無視して、俺は御屋形様の元へと向かう。襖を活勢いよく開けると、甘味を口にしている御屋形様と陽菜がいた。「犬、猿、揃ったか」「はいっ!」「はっ!」御屋形様の呼び声に背筋が伸びる。が、御屋形様の隣にいる陽菜が気になり、別の意味の緊張が走った。陽菜も気まずい思いでいっぱいなのだろう。御屋形様に茶を出したところで、そそくさと退出しようとしている。「貴様も此処にいろ」「えっ?私ですか?」「それ以外誰がいる?」陽菜は酷く緊張した顔で、俺の隣に腰を下ろした。「今日呼び出したのは他でもない…貴様ら、今城下で流行りの甘味を買ってこい」「えっ?」秀吉が気の抜けた声を上げた。「それが任務ですか?」俺も驚きが隠せない。「わかりました。美味しい甘味を買って参りますね」陽菜はにこりと微笑み、秀吉へと視線を向けた。「大変申し訳ございませんが、秀吉様に同行をお願い…」陽菜が言いかけたところで、御屋形様が俺に視線を向けて言い放った。「犬、貴様が同行しろ。猿には別の用事を言いつける」「えっ?俺?」「わんこくん残念だなぁ。俺も城下巡りしたかったけど、御屋形様の命とあらば仕方がないね」ちらりと視線を陽菜に向けると、陽菜は引き攣った顔を隠せないでいる。「さっさと出かけろ」「はっはい!かしこまりました」「承知しました」俺と陽菜は渋々、御屋形様の部屋から退出をした。城下まで来たのは良いが、さっきからずっと俺達の間には妙な空気が漂っていた。「早く買って帰らなきゃね」「おっおぅ…」会話の一つも成立しない俺達の心の中はきっと『早く帰りたい』でいっぱいなのだと思う。ほどなくして俺達は目的の菓子を手に入れ、清州城へと向った。「…」「…」会話の無い時間は酷く長くて、俺達は居心地の悪さを感じていた。「…犬千代、あのね」「なっなんだ?」突然陽菜に名を呼ばれ、声がひっくり返る。陽菜が次の言葉を発しようとしたその時、突然雷鳴が響き渡り、雨が降り出してきた。「ちっ…濡れるぞ」俺は咄嗟に陽菜の体を引き寄せ、庇うようにして近くの軒下へと走った。「濡れてないか?」「私は大丈夫。犬千代が庇ってくれたから」そう言いながら陽菜は手ぬぐいを取り出し、濡れた俺の着物を拭く。「犬千代、屈んで。頭が拭けない」「おぅ」屈んで陽菜と同じ目線になった時、俺は口喧嘩をしていた事を思い出した。俺は一瞬気まずそうな顔をしたのだろう。陽菜も気づいたようで、黙って俺の髪を拭いている。「…」「…」また重い沈黙が二人を襲う。「…くしゅん」だがそれを破るかのように、陽菜がくしゃみをした。「やっぱお前体濡らしたんじゃねぇか」「えっ?大丈夫だよ」「嘘つけ」俺は陽菜の肩を抱き寄せた。「これでちょっとはあったかいだろ」「うっ…うん」陽菜の体から強ばっているのがわかる。「雨止んだら担いで帰るからな」「じっ自分で歩けるよ」「馬鹿、あちこちにぬかるみが出来てる。足滑らせたら危ねぇだろう」俺はまた、口喧嘩をしていた事を思い出した。が、もうそんな事はもうどうでも良い。俺は心の中で小さく祈った。俺の想いを上手く言葉に出来るように。俺の想いが陽菜へ届くようにと。「お前の事…俺が守るんだって決めてんだ、ずっと前から。だから甘えろ」驚いたように陽菜が俺の顔を見上げた。「犬千代」「なんだ?」「ごめんね。有難う」「俺も…悪かった」「ふふっ」「なんだよ?」「何時もと一緒だなぁって。喧嘩しても、結局どちらからとなく謝って終わっちゃう」「まぁな」俺は陽菜を抱きしめる力を強くした。「お前みたいなはねっかえりの相手出来るのは、俺しか居ないだろ」「うん…」陽菜も俺に体を預け、小さく頷いた。「犬千代…」「なんだ?」「大好きだよ」「俺も…お前に負けないくらい…」雨がざっと強くなり、俺の声はかき消された。だが陽菜に言葉は届いたのだろう。陽菜は真っ赤な顔をして、背伸びをしながら俺の頬に口づけを落とした。✎ ------------------------動画の方は先にアップしててふと「久しぶりにnoteに投稿しよう!」と思ってSSは急きょ作成φ=φ_(:P 」∠)_不器用な犬千代が…♡ カワ (๑´д`๑) ユス … ♡そして秀吉さまと絡むのが好きですこの歌は結構好き(●´ω`●)歌詞も歌声も優しくてほっこりします いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #動画 #二次小説 #徳永英明 #前田利家 #天下統一恋の乱 #恋乱 #恋の乱 #小さな祈り 3