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守護聖ルヴァのある一日 ~アンジェリーク②~ ✎

私は漆黒の空の下にいました。

空には流星群。

心地よい夜風が頬をくすぐります。

「アンジェリーク。実は…私は貴女に伝えたい事があるのです」

何処かで聞いたことがある台詞でした。

目の前には金の髪の女王候補がいて

「私は…」

私の指が彼女の柔らかな髪に触れ

(待ってください。彼女は大切な女王候補生で…)

「貴女を」

私の腕が彼女のか細い肩を引き寄せ

(いけません…そんな…そんな…)

「いけません!そんな破廉恥な事を!」 

「うぉ!」

聞き慣れた叫び声が聞こえ、気がつけば私はベッドの上にいました。

「なんだよ?おっさん、寝ぼけてんのか?」

「ゼフェル?」

「あらあら~ん…んふふ♡けしからん夢でも見てたのかしら?」

「オリヴィエ…貴方まで」

ベッドの脇には不機嫌な顔のゼフェルと、面白そうに笑うオリヴィエがいました。

「何故二人が此処に?」

「忘れたのかよ?今日は王立研究所の視察日だろ!」

呆れ顔のゼフェルの言葉をオリヴィエが引き継ぎ言葉を続けます。

「ってかさぁー、ちょっと早起きして庭園を散歩してたらゼフェルに会ってさー、『まだルヴァのおっさんが起きてこねぇんだ』っなんて心配してるからさー、一緒に寝室まで様子見に来たってわ♡け♡」

「そうですか…それは心配をおかけしました。あ~しかし寝室には鍵がかかっていたと思うのですが?」

「そんなのこのゼフェル様にかかれば解錠くらいチョロいもんだぜ!」

ゼフェルは自慢げに細いピンを掲げました。

「あ~なるほど~。しかしゼフェル、それは不法侵入罪に問われるのでは?あ~確か聖地刑法第36条によれば…」

「だぁー!わかった!わかった!俺が悪ぅございました!」

難しい話は受付けないと言わんばかりのゼフェルの態度が面白くて、つい笑みが溢れました。

「で?どーんな夢見てたの?それも破廉恥な!なんて♡」

「あ~…」

私はナイトキャップ越しに頭を掻きながら

「いえ…それが~おぼえていなくて…」

嘘を言いました。

「ふぅ~ん…」

言えるわけがありません。

女王候補生だった頃の女王陛下に、自分の想いを告げようとした事を思い出していたなんて。




簡単に朝食を取った後、私はオリヴィエとゼフェルと伴に王立研究所へと向かいました。

そこには宇宙空間の様子を伺う女王陛下と補佐官ロザリアの姿もありました。

「あ~二人ともいらしていたんですね」

女王陛下…アンジェリークの姿を見て軽く動揺しましたが、私は何時も通り振る舞い声をかけました。

「ルヴァ、オリヴィエ…ゼフェルも…」

しかし彼女の顔は曇り、ロザリアも頭を抑えながら苦悶の表情でいます。

「なんかヤバイみたいだね」

「ヤバイって…宇宙の危機って事かよ?」

「まぁまぁ二人とも…先ずは状況を把握しなくては…ね。陛下、何が起きたのですか?」

「エリューシオンに侵略しようとしている者がいるの…」

エリューシオンとは先の女王を決める試験で、アンジェリークが育成していた大陸の事です。
 
「まさかフェリシアの連中じゃないだろな?」

「違いますわ!私が育てたフェリシアはエリューシオンと協定を結び、今も上手くやっています」

訝しげなゼフェルにロザリアが声を荒げ訴えると、オリヴィエが二人の中に入り「まぁまぁ」と仲裁を始めました。

「で?どんな状況?」

「何者かがフェリシアを焚き付けて、エリューシオンと戦争させようとしているのですわ。今は双方とも警戒している状態で…もし工業が発展しているフェリシアが武力を持って戦争に出れば、知力の長けたエリューシオンは対抗出来ませんわ…」

「ふーん…要はエリューシオンはルヴァに与えられた知性に長けてるけど、フェリシアはゼフェルの器用さの恩恵を強く受けてる…って事だよね」

「なんだよ!てめぇ嫌味かよ!」

「まぁまぁ…ゼフェル落ち着いて」

オリヴィエに噛みつくゼフェルを諌め、私は言葉を続けました。

「確かに女王試験ではバランスの良い大陸作りが理想でしたが…守護聖といえども人。どうしても『親密度』と『相性』と言うものが絡んでしまいますからね〜」

「で?どうするの?」

面白そうにニつのが大陸を眺めているオリヴィエに、私は告げました。

「オリヴィエ、貴方の力を貸してください」

「ふーん…そう来たか」

「あ~今の二つの大陸には美しい未来を夢見る力が不足しているのではないでしょうか?オリヴィエの力をもたらし、互いの大陸から使者を出して交友をさらに深められれば、双方はさらに発展していく…その事に気づかせることが出来れば…」  

「ルヴァ!素晴らしいわ!」

アンジェリークの表情がパッと明るくなり、私の元へ駆け寄ってきました。

「安易に干渉が出来ないから困っていたのよ」

エメラルド色の瞳が真っすぐに私の顔を見つめていて…

(ちっ近い…)

「あ~私にはこの様な意見をする事しか出来ませんから」

なんとか平常心を保とうとしますが…

(今朝の夢を思い出してしまって…邪な心では彼女の眩しい笑顔を受け止めきれない。隣にいるオリヴィエが意味有りげな笑みを浮かべているのも非常に気になります…)

一人私の焦りが募る中、オリヴィエが場の空気を変える様に手を叩きました。

「はい!はい!じゃあ~早速やっちゃうよ!」

「げ?今この場でやんのかよ?」

「ゼフェル~大陸に私達の力が届くのは一朝一夕じゃないんだよ。一刻一秒争う事態なんだから、今やるしかないじゃない」

オリヴィエはサラリと極彩色の髪をかき上げ、アンジェリークへと視線を送りました。

「女王陛下、良いね?」

「ええ!オリヴィエ、お願い」

オリヴィエがモニターに映る二つの大陸に手をかざすと、眩い光が大陸へと降り注いでいきます。

「夢がもたらす美しき力よ!エリューシオンとフェリシア、この二つの大陸へと贈る。夢見る美しさよ!今その心に宿れ!」

ピンク色の光が二つの大陸を包み、やがてキラキラと光り輝き始めました。

「すごい…」

「初めて見ましたわ…守護聖が力を使うところを」

アンジェリークとロザリアは感嘆の声をもらし

「んふふふ~♡一丁上がり♡」  

オリヴィエはサラリと長い髪をかき上げ、自慢げな笑みを浮かべました。

「あ~これで終わりではありませんよ。しばらくは様子を見ながら、女王陛下の加護も贈り続けなければ…ね」

「はい!ルヴァ様!って…あれ?」

アンジェリークの元気な返事に、ロザリアが頭を抱えます。

「アンジェリーク!あんたってば…女王候補生じゃないんだから…」

「あっ…つい…えへへ」

「えへへ…じゃありませんわ!宇宙を統べる女王として、もっと威厳を持っていただかなくては」

「うふふ…じゃあ、ロザリアはずっと私を支えていてね」

「もう…あんたみたいな脳天気な子、私みたいなしっかり者が面倒見るしかないじゃない!」

研究所の中に皆の笑い声が響き、アンジェリークに何時もの笑顔が戻った事に、私は安堵したのでした。






ー ෆ

第二話はルヴァさま目線でした

ずっと恋乱のSSで突っ走っていたので、新鮮な気持ちで書いています

ゼフェルさまの出番はずっと前から考えていたのですが、気づいたらオリヴィエさまが…結構良い役してる( °ω°)ホゥ

オリヴィエさまの台詞は是非子安武人さん声で読んでください

ってかルヴァさまは関俊彦さん

ゼフェルは岩田光央さん

でお願いします!

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