いのちを粗末に扱われるロシア軍の兵士 戦闘ではなく飲酒でも死亡が多発
ウクライナに侵攻してから、すでに十数万人のロシア軍の兵士が戦争で死亡したと言われています。今なおウクライナ東部などで激戦が続き、連日ロシア軍・ウクライナ軍の双方とも大勢の死傷者が出ています。
しかし、ロシア軍の中では戦闘ではなく飲酒により死亡する兵士が後を絶たないようです。元々ロシア社会の中ではウオッカなどの強い酒による過度な飲酒が多く、飲酒による事件や犯罪、死亡例が多発していましたが、戦場でもその習慣が抜けないようです。ましてや常に死と向き合う戦場でのストレスからさらに飲酒量が増えるのでしょうが、死ぬまで飲酒するというのは尋常でありません。
元々ロシア軍内では戦争がない時ですら、上官による過度なしごきや凄惨ないじめによる自殺者が年間5百名近くにものぼり、特に徴兵された若い兵士が命を失っていたと言われています。そのためにアフガニスタン戦争以来活動してきた「ロシア兵士の母委員会」の母親たちは、自分たちの息子を救出するために戦争がない時でも活動をずっと続けていました。
ロシア社会の中にはいのちを大切にしない風潮があるようです。とりわけ軍隊内では兵士たちのいのちが非常に粗末に扱われています。ロシアの国営通信RIAノーボスチが3月28日に伝えたところでは、ウクライナに派遣された兵士たちが「ウクライナでの戦闘中に負傷したにもかかわらず、プーチン大統領が約束した補償を受け取れていない」として「こんなはずではなかった」と不満を表明しているということです。すでにそういう不満をぶちまける兵士たちの動画がいくつか紹介されています。
プーチン大統領は侵攻開始の当初は、負傷者に3百万ルーブル(約5百万円)の補償を約束していました。そして死傷者の家族を支えるのは国家の「義務」だと述べてもいました。しかし死傷者が増加するなかで、その約束は反故にされて、昨年5月には補償の条件が厳格化されています。いのちを粗末に扱われ、補償も満足にされないロシア兵士たちの士気が下がるのは当然でしょう。ウクライナ側が設けているロシア兵向けの投降サイトへのアクセスが3月だけで3千件以上になったという報道もあります。
そういう状態のロシア軍にもかかわらず日本のあるネットニュースでは、あたかもロシア軍が非常に巧妙な戦術によりウクライナ軍を圧倒し、大勝利を収めつつあるという記事が掲載されました。ウクライナ軍は膨大な死傷者を出し、もはや壊滅寸前であるというのです。詳細は明かされていませんが、ウクライナ側にも一定数の死傷者が出ていることは当然でしょう。しかしロシア軍がウクライナでの戦闘で大勝利を収めているという証拠は何もなく、むしろ時代錯語の無謀な突撃作戦により膨大な犠牲者を連日出しているのが現実です。まったく事実をねじ曲げて戦争犯罪を続けるロシア賛美を行うとは信じがたいことです。ロシア軍はこれ以上の犠牲者を増やさないためにも、一刻も早くウクライナから撤退すべきです。
(青山 正)