(2)日本山妙法寺の寺澤潤世師によるの戦火のウクライナからの熱い訴えと報告
my message from Ukraine on the celebration of the Buddha Birthday.
仏陀の誕生日を祝うウクライナからの私のビデオメッセージ
(旧ソ連崩壊後の変革と、チェチェン戦争での虐殺が示すウクライナの今)
2022.4.8
https://www.youtube.com/watch?v=Rgss6YSLSuY
(動画概要)
今日は4月8日で、お釈迦様の誕生日である花まつりの日のお祈りをウクライナのカルパティア山脈から務めております。ロシア軍の侵攻を受けたが2月24日です。それ以来この戦争の悲惨で残酷な姿が明らかとなってきました。
この戦争は避けることができましたが、 第二次大戦以来かってないほどの深刻な独立国家に対する軍事侵攻が始まったわけであります。キーウ(キエフ)郊外のイルピンの道場を離れ、ウクライナの西の果てにあるこのカルパティア山脈の道場に入って、今日までこの世界的な危機がどのように解決されていくのかを案じながら毎日お祈りを捧げてまいりました。
ソ連崩壊以降、各国が独立して新しい国作りに着手しましたが、どの国も大変困難な歩みでした。ウクライナにおいても困難な国作りが続いてきました。現在はロシアからの軍事侵攻という、国の存亡をかける状況に投げ込まれています。2014年にウクライナではマイダン革命という大きな事件がありました。それ以来ロシアとの軋轢が続いており、今回の事態は避けえたかもしれませんが、現実としてヨーロッパ全体を揺るがす破局的な戦争に直面しました。
私たちがウクライナの平和と自由と独立を願って、平和行進で通った東部の各地やハルキウ(ハリコフ)なども、ロシア軍によるほんとうに激しい攻撃にさらされています。この21世紀にこれだけ非道な戦争が、私たちに投げかける課題は大変大きいと思います。世界人類の前にどういう解決方法が存在するでしょうか。ウクライナでは各地が破壊され、多くの犠牲者を出しておりますが、これからロシア軍の容赦ない攻撃にどれだけ犠牲を払うでしょうか。どのようにしてロシア軍の軍事的な野望を打ち砕くことができるでしょうか。世界はロシア軍の核兵器などの大量破壊兵器の使用をどうやって阻止することができるでしょうか。
プーチン大統領の立場では、ウクライナという国は本来存在しない国だ、ロシアの一部だという考えです。ロシアはウクライナの非軍事化と非ナチ化を侵攻の目的に挙げていますが、それはおかしなことです。
私はソ連崩壊の前からこの地域で活動して、すでに約30年経ちます。ソ連崩壊の前には核戦争の危機からの脱出をお祈りしてきました。その後ヨーロッパの一般民衆が本当に大きな政治変革を成し遂げました。それは東西の壁の崩壊であり、共産主義独裁国家から一般民衆が中心となって、民主的な国家へと変革を実現しました。東ヨーロッパの国々が政治革命を遂げた事です。多くは一般民衆の非暴力の行動によって成し遂げられたものです。そして最終的に共産主義の本家本元のソ連の崩壊へと至りました。しかしロシアはソ連崩壊後のかじ取りを誤ったのです。
東西の壁崩壊後、アメリカはクウェートに侵攻したイラクへの軍事攻撃を行いました。湾岸戦争です。この時私はイラク国境の砂漠で多国籍の市民とともに人間の盾となってこの戦争を阻止しようとしました。イラクのクウェート侵攻はもちろん間違いです。しかし、アメリカの軍産複合体は戦争を起こす必要に迫られていました。この湾岸戦争も誤った戦争でした。
その1991年にソ連が崩壊します。その直後ロシアで共産党の強硬派と軍部の一部により、8月にクーデターが勃発しました。私もモスクワへ入り、クーデターの2日目に辿り着きました。エリツィン大統領の呼びかけに応えて国会議事堂のバリケードに多くの市民が参加ました。私自身もそれに加わり、市民の抵抗運動の中でお祈りしました。最後はそのクーデターは失敗に終わりました。そして共産党の支配が終わり、バルト三国の分離独立が起こりました。しかしロシアは新しい民主的な社会作りに失敗します。湾岸戦争がそれに大きな影響を与えました。
その後チェチェン共和国のロシアからの独立を阻止するために、第1次チェチェン戦争が始まりました。私はロシア兵士の母親やロシアの人権団体の人たちと一緒にモスクワから激戦が続くチェチェンまで非暴力で平和行進を行い、この戦争を止めようとしました。そこで見聞したのはロシア軍の目を覆うような一般民衆に対する非人道的な虐殺の現実でした。
今世界を騒がせているウクライナのイルピン・ブチャなどでの住民の虐殺は、すでにチェチェンで行われたことと同じです。一般民衆への残虐な攻撃が行われてきました。私はそれを直接目の当たりにした証人です。あの時に国連人権委員会はこの戦争犯罪を糾弾すべきでした。全人類がロシアの非人道的な軍事行動のあり方を直視し、その非道を食い止めるべきでした。今ウクライナで行われているロシア軍の蛮行はかつてチェチェン戦争で行われていたことばかりです。それを見誤っては大きな間違いとなります。今は核戦争さえ起きかねません。プーチン大統領は核の使用の可能性を述べて、世界中を脅しています。その脅しの中で、ウクライナを全滅させるべく好き放題なことをしているわけです。先日ウクライナ侵攻が始まる前に、ロシアはいかにしてウクライナを国家として組み替えていくか、ウクライナの民族を再教育していくか、そのためにどのようにしてロシアが考える「ネオナチ」・民族主義者をせん滅していくか、周到な戦争計画を立てていたことが判明しました。これは戦争犯罪ではないでしょうか。人類に対する戦争犯罪ではないでしょうか。文明に対する戦争犯罪ではないでしょうか。この戦争犯罪の非道な行いを、プーチン大統領は世界戦争・核戦争の危機という脅しのもとで今やっているわけです。ウクライナの人々を犠牲にするわけにはいきません。しかし、ウクライナの戦争を世界人類の核戦争に発展させることもできません。現在のすさまじい情報戦の渦中で、私たちは正しい道を作り出すことができるでしょうか。