映画/批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~上映作品をまとめてみた
こんにちは、チェ・ブンブンです。
3月は毎年ハードコアシネフィルにとって楽しいお祭りが開催されます。フランス批評家のオススメ映画の上映がアンスティチュ・フランセ東京で行われるのです。ここを逃すと、日本語字幕で観られない作品も多いので、ハードコアシネフィルは連日朝一から並んで貴重な上映を楽しみます。
今年は、今までアンスティチュ・フランセや大寺眞輔の講義でしか観られなかったクレール・ドゥニ監督の最新作『ハイ・ライフ』が日本公開されることを記念して彼女の作品が特集されます。
またアルジェリア出身のギイ・ジル監督作の特集が組まれています。
新作だと、カイエ・デュ・シネマ ベストテン2018に選出された『ポール・サンチェスが戻ってきた!』や『ワイルド・ボーイズ』などといった目玉作品が目白押しとなっていて、今年も楽しそうなラインナップとなっています。
ただブンブン、アンスティチュ・フランセの告知にはいつも不満を抱いています。それは、「原題を載せていない」ところと「予告編がない」というところにあります。
ハードコアシネフィルになると、世界の映画祭や海外メディアの情報を漁るようになります。なので、監督名や作品名は原語でインプットされ、頭の片隅に漂っています。
ただ、アンスティチュ・フランセの作品紹介は、原題と監督名をカタカナ翻訳している。中には気を使って、作品名も日本語に即した形で翻訳してくれるのですが、肝心な原題が記載されていないので、中々タイトルと内容がヒモ付きません。また、作品紹介ページには予告編がないので自分で調べないといけません。当然ながら、日本語タイトルで調べても予告編は出てこないので、試行錯誤しないといけません。
恐らく、ブンブンの他にも悩んでいる人はいるだろうと考え、《ベスト・オブ 2017-2018》部門上映作品について調べました。
1.ジェシカ(JESSICA FOREVER)
監督:キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネル
ベルトラン・マンディコ、ヤン・ゴンザレスと並んで今注目されているファンタスティック映画作家キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネルの作品。AlloCineのあらすじを読むと、女王であり騎士、魔術師、女神、スターでもあるジェシカが愛を知らぬ者、モンスターになったことのない者に救済の手を差し伸べる話です。
2.ポール・サンチェスが戻ってきた!(PAUL SANCHEZ EST REVENU !)
監督:パトリア・マズイ
フランスの名門映画学校《La Fémis》の2018年度入試課題映画にも選出されたパトリア・マズイ("Travolta et moi")。今フランスで注目されている女性作家の最新作で、カイエ・デュ・シネマ ベストテン2018で5位に輝いた作品。10年前に失踪した男が突然現れたことによるサスペンスだそうです。
3.ソフィア・アンティポリス(Sophia Antipolis)
監督:ヴィルジル・ヴェルニエ
カイエ・デュ・シネマ ベストテン選出者の一人で日本の前衛映画に強いStéphane du Mesnildotが2018年ベストテン8位に選んだ作品。あらすじを読んでもいまいちよくわからないのですが、つながりを求めていくうちに行方不明の少女の運命と邂逅する作品とのこと。今回アンスティチュフランセと提携を組んでいるリベラシオンの評によると、「不完全なパズルのピースのようだ」と表現されています。
4.シェエラザード(SHÉHÉRAZADE)
監督:ジャン=ベルナール・マルラン
シェヘラザードと言えば、千夜一夜物語(アラビアンナイト)の語り手の一人で、獄中で男女が悦楽の渦に溺れて破滅する話で有名です。本作はタイトルから分かる通り、現代版千夜一夜物語といえる。ムショ上がりの青年がドラッグに溺れていく様子を描いています。本作はカンヌ国際映画祭監督週間で上映され評判を呼び、鬼才を賞賛するジャン・ヴィゴ賞で作品賞を受賞しました。
5.ワイルド・ボーイズ(LES GARÇONS SAUVAGES)
監督:ベルトラン・マンディコ
カイエ・デュ・シネマ ベストテン2018で1位を獲得した作品にして、最強の日本未公開映画紹介ブロガー、ゼロモチベーション済藤鉄腸(@GregariousGoGo)の2018年ワースト1に選ばれた問題作。この作品は、『蠅の王』にエログロのエキスを注入したような作品。ブンブンも鑑賞したのですが、カッコいいヴィジュアルと訳の分からなさが堪らない作品となっています。間違いなく、好き嫌いは分かれます。
6.ブラギノ(Braguino)
監督:クレモン・コギトール
これはトンデモドキュメンタリーです。シベリアの僻地、ボートとヘリコプターを使わないとたどり着けないブラギノに住む2つの家族の、文明とは隔絶された壮絶な生き様をカメラが捉えた。昨年、『ウィンターズ・ボーン』のデブラ・グラニック監督が、森の奥で暮らす父と娘の生き様を描いた『LEAVE NO TRACE』が記憶に新しいが、これはドキュメンタリーならではの怖さを体験できそうです。
7.20年後の私も美しい(LA BELLE ET LA BELLE)
監督:ソフィー・フィリエール
アンスティチュ・フランセによると、このソフィー・フィリエール監督は現代を生きる女性たちが風変わりなシチュエーションに巻き込まれるラブ・コメディをコンスタントに発表しているようです。本作は、人生に迷う大学生が40代のマダムに人生の指南を受けるというコメディとのこと。
8.僕たちプロヴァンシアル(MES PROVINCIALES)
監督:ジャン=ポール・シヴェラック
ジャン=ポール・シヴェラックはひょっとすると新時代の、アルノー・デプレシャン、フィリップ・ガレルかもしれない。白黒の画面で、勉学に熱心な若者が年と共に情熱を失っていく様子が描かれているようです。
9.勤務につけ!(Au Poste!)
監督:カンタン・デュピュー
先日、青山シアター他にて行われたマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルで上映された作品からは2作品上映されます。本作は、人殺しタイヤの殺戮を描いた異色作『ラバー』で注目されたカンタン・デュピューのコメディで、カイエ・デュ・シネマでも選定者の4人がベストテンに選出した作品です。一風変わったミステリーとのこと。
10.ソヴァージュ(SAUVAGE)
監督:カミーユ・ヴィダル=ナケ
フランス映画情報サイトAlloCine編集局の2018年ベストテンで8位に選ばれた作品。この作品は間違いなく、日本一般公開はできません。男娼のあまりに過激なセックスシーンが多い。まさしくソヴァージュ(野生)の生活を貴方は目撃することとなるでしょう。
11.カレ35(CARRÉ 35)
監督:エリック・カラヴァカ
『つかのまの愛人』の主人公を演じたエリック・カラヴァカが生前に亡くなった兄の謎を解き明かす、極私的ドキュメンタリー。AlloCineでの批評家評平均が星4.3/5.0(2019/02/20時点)と高評価となっているドキュメンタリーです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?少しは、各作品の全貌が見えてきたのではないでしょうか?詳しいことは、アンスティチュ・フランセで発表されるので要チェックだ!ブンブンは、3/16(土)の『ポール・サンチェスが戻ってきた!』は押さえておきたいなと思います。
それではまた!