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映画と美術#15『オークション 盗まれたエゴン・シーレ』絵画の真贋と美術界の真贋
▷キーワード:エゴン・シーレ、頽廃芸術、アートビジネス
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2003年、ロンドンのオークション会場にオーストリアの表現主義画家エゴン・シーレの「色褪せたひまわり(Tournesols fanés)」が出品され1,170万ポンドで落札された。この絵画は「頽廃芸術」としてナチス・ドイツ時代に奪われ、行方不明となっていた作品だ。1940年、ウィーンのユダヤ人コレクターであるカール・グリュンヴァルトが保有していた本作をナチスが没収する。その後、売却され60年もの間、行方が分からなくなっていたのだ。ところが、匿名のコレクターが査定と称して本作を持ち込み鑑定したところ、本物だと判明したことから突如公の場に姿を現すこととなった。
この美術界の逸話をアンドレ・テシネやジャック・リヴェット作品の脚本家で知られるパスカル・ボニゼールが映画化した。脚本家、そして映画批評家をメインとするだけあって、ユニークな角度から「色褪せたひまわり(Tournesols fanés)」にまつわる物語を理論へと落とし込んでいる。
本作のテーマは何といっても「真贋」であろう。長らく、オークション会場で出回っていないエゴン・シーレの絵画。突如、現れた作品が贋作なのか否か。競売人の観察眼の物語が美術業界における心理戦、つまり同僚ですらその発言、振る舞いが本心であるのか偽りであるのか疑うようなヒリついた現場の様子へとシームレスに繋がっていく。この鮮やかで慧眼な視点に圧倒されることであろう。
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