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<炉開き>〜今更聞けない其の一〜
炉開き 今更聞けない其の一
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1.炉開きとは
炉開きとは別名を開炉とも呼ばれます。
現代では11月上旬に開けます。従来開炉の時期はその年の寒暖や地域によって一定しませんが、京都では旧暦10月の亥の日に開ける習慣があり、それに従う人もいます。
風炉と呼ばれる火床から炉を開いて用いるようになります。
炉とは畳の部屋に四角い穴を開けそこに五徳を入れ、炭を組む小さな囲炉裏です。 この上に釜を掛け、湯を沸かし、お茶を点てます。茶道においてお茶を点てる為の囲炉裏である炉を開いて火を起こし、その年に摘み取られた新茶で新たな年を迎える感謝と喜びの特別な祝いの会、茶事(口切りの茶事や、炉の茶事、正午の茶事など)が行われます。(ここでの注意は、口切りは夏にも行われることがありますので、開炉と口切りが必ずセットではないということです)
開炉は茶人の正月とも言われ、改まった心がけで炉壇を塗り替え、建具、畳を張り替えてその日を待ち、「亥の子餅」などで祝います。
「亥の子餅」が出されるのは、亥に子孫繁栄、火の用心の意味が込められていることから用いられます。裏千家では主菓子に「善哉」が出されます。
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諸説ありますが、由来は一休宗純が最初に善哉を食べた時に「良きかな(善哉)よきかな」と述べられたことから、おめでたい席や行事で出されるようになったと言われています。
2.炉開きの準備
正客またその他のお客様は…
炉開きの茶事には、炉の茶事(正午の茶事)は最も正式な形のもので 、あらゆる茶会の基本になるものです。
⚫︎着物は、いつものお稽古用の小紋ではなく、袷の紋付色無地を選びましょう。
⚫︎炉開きの流れを頭に入れご挨拶が必要なタイミングなど復習しましょう。
⚫︎濡れ茶巾を用意しておき、善哉や濃茶の後始末の準備に備えましょう。
⚫︎寄付待合に入りましたら、掛け軸と花を拝見し、白湯を頂き連客同士で挨拶を
済ませます。正座したまま、お互いに扇子を前に置いて、
正客:本日正客を勤めさせて頂きます○○です。本日は宜しくお願い致します。
末客:本日末客を勤めさせて頂きます○○です。本日は宜しくお願い致します。
全員:本日は宜しくお願い致します。
3.炉開きの流れ(タイムテーブル一例)
寄付待合にて汲み出しを頂く
席入り(初入り)
初炭
懐石 通常一汁三菜
善哉
濃茶
中立
後入り
後炭
薄茶
普段のお稽古と違うところは、
⚫︎つくばいで手や口を清める
⚫︎茶室への出入りが何度かあるということ(初入、中立ち、後入り)
⚫︎お席入りの合図がある(銅鑼を鳴らすとその合図など)
⚫︎初炭だけでなく後炭がある
⚫︎香合の「伝来」や「窯元」「香の名前」の拝見問答
⚫︎勝手見繕って 粗飯差し上げとうございます」と言って折敷を運び出し、いよいよお食事。本来であれば四つ碗を使って炊きたての白飯と汁から始めます
⚫︎壺飾りの拝見
⚫︎煙草盆などの扱いがある 等です。
先生が全てご準備くださり、生徒さんはお出掛けになるだけのパターンもありますので、お通いのお教室に伺われると良いかと存じます。
社中や稽古場でその日の炉開きが決まりましたら、ホスト(亭主側)とゲスト(お客様)の流れをタイムテーブルにします。これは私の社中は人数が多い為にAグループBグループに分かれてお互いのチームをお持て成しすることに決まっているからです。
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4.楽しむために
3.でご紹介したのは1例です。色々なパターンの炉開きを経験してみると、
その席に入った皆で秋の恵みと炉を開けた慶びを分かち合う、
それに尽きるのかなと思います。
炉と風炉の時季では、柄杓の扱いやお点前の所作も変わりますが、
1年四季を通して変わらないのは、すべきことはただ、お茶を点てて亭主と客が同じ空間で時を過ごすこと。心の通いや精神の整いを感じるはずです。