滝修行で悟り
せぇーのっ!
『土砂降りの中でプロパンガスを運ぶのって、みんな大変だよねぇ!!』
漫才のツカミみたいに言ってはみたものの、多分noteを読んでいるガス屋さんって、片手で数えれる程度だと思います。
明けましておめでとーございます、伊茶靖生です。(今頃、今年初投稿)
本年も仕事のグチをいっぱいnoteに。
で、『真冬の土砂降り配送の愚痴です』
まぁ、想像してみて下さい。
氷のようなかたまりがビシバシと身体に降り注ぎ、カッパの隙間から素肌に入って体熱を奪ってく様を。
冷たいというより痛いです。
哀しいです。
長靴がドロでねっちゃねちゃと歩かなきゃいけないし、ガスボンベ滑るし、視界も悪いし……。
ネガティブ思考がオンパレードです。
マッチ売りの少女はズルいよなぁ……。
売り物の商品を燃やしてバイトさぼっていただけなのに、皆に同情されるだけじゃなく、アンデルセン童話に入れてもらえて……。
俺が同じ事やっても叱られるだけだろうな。
温まろうとガスボンベ燃やしてボンとなって爆死して殉職しても、「バカじゃん」ってひとこと言われてお終いなんだろうな…。。
パトラッシュと天使3匹に抱えられながら、壮大なゴスペルをBGMに流して召されても、47歳のおっさんじゃ、身内でも泣いてくれないんだろうなぁ……。
あぁ…寒ぃぃ。
冷たい…死にそう…。
ほらっ、アレ見てよ…アレだよアレ!
30世帯ぐらい住んでるマンションの雨どいに穴が開いて、そこからドバドバと交換予定のガスボンベに向かって水しぶきを上げているアレだよ。
あん中に突っ込めってか!
死に装束の格好で呪文……じゃないやお経を唱えるレベルじゃん。
嫌だよ。
俺、金が欲しいだけで、別に、悟りを開きたい訳じゃないし!!
ズダズダとガスボンベに当たっている水しぶきを呆然と見つめながら僕は立ち尽くしていた。
でもやらなくてはいけない。
………あの中に入ってもし心臓がとまったら…
、『かわいそうなガス屋さん』ってタイトルで絵本にして貰えるかもなぁ、アンデルセンに。
意を決してガス交換を始める事にした。
ハッと息を止め、身体を中に入れる。
別に呼吸が出来ない訳ではないのだが……。
カッパのフードに当たるズドドドの音が耳に近いからリアルに聞こえる。
水圧でお客様のうちの外壁にもってかれそうになるので足で踏ん張る。
「かんじーざいぼーさつはんにゃー……」
苦行に耐えるためにうる覚えの般若心経を唱えてみる。
「しょやーたらーはぅらぁーピータンチャーハンらーめん」
ネタが尽きたので途中から中華料理になってしまった。
冷たすぎて手の感覚がなくなり作業ができない。カッパの隙間からジョロジョロと背中の中に入ってくる。
人は…………
なぜ生きるのか
なぜ誰の友にもなれない
何を得ても満足できない
心を渇望できない
そんなん知らないってぇ…。
俺、ガス屋さんだし……。
高卒だから哲学なんか習ってないって!
あぁ早く家に帰りたい。
熱いお風呂に浸かりたい。
ツムラの粉を入れて(笑)