エキスパート・レビューのプロセスを改善した話
kubellプロダクトデザイン部のながうじです。
kubellでは、Chatworkプロダクトのユーザビリティおよびそれらがもたらすユーザーエクスペリエンスの品質担保のため、エキスパート・レビューを実施しています!
導入から約2年が経過し、成果が出てきた反面、改善が必要な点もみえてきました。今回は、それらをどのように改善したのかを紹介します。
エキスパート・レビューによって得られた成果
エキスパート・レビューは 2022年から運用を開始しました。詳しくはこちらの記事で紹介しています。
運用開始からこれまで継続的にエキスパート・レビューを実施し、3つの成果を得ることができました!
1.ユーザビリティ課題についての知見の蓄積
内容の重複もありますが、軽微な課題も含めて1,000件以上の課題が抽出されました。このように数字で可視化することで、デザイナー以外にも「こんなに課題があるんですね…」とよりリアルに実感してもらえています。
2.ユーザビリティ課題を起点とした施策立案
抽出された課題をもとに、優先度の高いものから施策化し、改善を回すことができています。毎月のアップデート内容の中に、ユーザビリティ課題を起点とした改善も含まれています。
3.デザイナーのトレーニング
上記の運用開始についての記事でも触れておりますが、エキスパート・レビューを通してこのあたりの効果が実感できました。
「良いUIとは?」を意識できるようになる
UIデザイン時に脳内セルフレビューできるようになる
規格(ISOなど)やレギュレーション(HIGなど)を習得できる
ケーススタディになって引き出しが増える
これらの成果が出ている反面、運用をしていくなかでいくつか課題が顕在化してきたため、改善に取り掛かりました。
顕在化してきた課題
課題は主に下記2点です。
評価者によって評価基準がばらつく
複数人で評価をしており、どういう基準で評価するかが個人でばらけていました。特に課題の深刻度についての評価がばらけてしまい、解決すべき課題の優先度がつけづらい状態でした。
評価基準の不足
導入しやすさを優先し、ニールセンの10ヒューリスティックスを評価基準としていましたが、これだけでは説明ができないユーザビリティ課題も抽出されるようになってきており、十分なエキスパート・レビューになっていませんでした。
課題に対する改善
レビュー会の導入
エキスパート・レビューを実施したメンバー同士で、他者が発見した課題の内容および深刻度をチェックポイントに基づいてレビューするフローとしました。
得られた効果
ユーザビリティ課題の内容、深刻度を共通認識化できるので課題の優先度について認識が揃い、議論の手戻りが無くせる
エキスパート・レビューを実施する際もチェックポイントを意識することで、より本質的な課題の抽出ができるようになった
評価基準の追加
HCD-Net主催のセミナーを参考に、インタラクションの原則(JIS Z8520:2022)および情報提示の原則(JIS Z8522:2022)を評価基準として追加しました。
JISを初見で評価基準として活用するには内容が難解だったので、まずは私がJISの読み解きを実施し、各項目の「サマリ」、「簡易チェック観点」、「具体例」を補足し、メンバーに展開しました。
得られた効果
これまで抽出できていなかった観点でのユーザビリティ課題が抽出できるようになった
JISでは推奨事項とその根拠がより明確に示されており、ユーザビリティ課題の根拠がハッキリし、解決の方向性が定めやすくなった
まとめ
kubellではエキスパート・レビューを導入し、プロダクトのユーザビリティ評価を実施できる仕組みづくりをしています。
今回、プロセスの見直しを実施し、より精度の高いエキスパート・レビューが実施できるようになりました!
課題の抽出で終わらせず、より効率的に改善につなげ、プロダクトの品質向上を目指していきたいです!
kubellのプロダクトデザイン部では、一緒に働いてくださる仲間を募集しております。ご興味を持っていただけたら、下記もチェックしていただけると嬉しいです。