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​​ヨコシマ相談室#2. 姉さん、エゲツです!


❤︎​​​前回(#1)の復習❤︎

​​都会に出て闇落ちしたファッキンナンパ師ことタロウは、元お隣さんの貞節の猥談師・摩詠子を「相談室」に引きずり込むことに成功した。これから始まるリモート対談が、思ってたのと違う事もつゆ知らず…。


❤︎本文❤︎
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​​「で、摩詠子。どんなテーマで話していく?」
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​​船橋の白い洋館には、梨畑に反射した西日が差し始めていた。

茜色のその光は、摩詠子のねっとりとした白い肌をきらきらと照らし、鎖骨に深く黒い影を落とす。
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​​機械オンチな熟女はヘッドセットの扱いに少し戸惑っている。

使い方もさることながら、あまりにもクリアな音質すぎて、まるでタロウが自分の真後ろから耳元に囁いているようだから。

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耳たぶを、甘くねぶるタロウの低い声が、どうにも、くすぐったい。
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​「も、もう、タロウちゃんたら…っ。わたくしのことは”さん”付けでお呼びなさい、っていつも言ってるでしょ?まぁいいわ…。そうね。テーマをこちらで決めるより、まずは匿名のHなお悩みをね、お葉書やファクシミリで募集していったらどうかしら。もちろんあなたのHなお知り合いから聞いたエロいお悩みとかでもいいわ。そうすると『現代が直面する性の悩み』の本質が見えてきて、おのずとDeepでDopeでHardCoreな話ができるんじゃない?」
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​​「(お、お葉書…。いつの時代だよ?…葉書も届いてほしくないし、俺の部屋にFAXなんか置いてねーよ。却下。メールで貰うに決まってんだろ!」

​(こりゃもうN〇Kアーカイブス『昭和との対話』だぜ)


​​そんなことを独りごちながら、タロウは、眉に繰り返し振り掛かる艶やかな黒髪を、うざったそうに掻き上げる。

​「とにかくテーマはわかった。募集したお悩みに答えていくと。ちゃんと集まるかね?ガチのやつとかきそうだなw」


​​「集まらないときはそうね、わたくしが応募するわ」


​​「(それが一番ドギツイだろ…)まぁいいや、あとはギャラの話だけど…。半分ずつの5:5でいいよね?あー、いいからいいから。遠慮せずちゃんと半分は貰ってよ。いや、言いたいことは解るよ、たしかにまあ、俺の方がネットの知識とかあるし作業は多いけどさ、そんなちいさいコト、気にすんなって!」
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​​摩詠子は黙ったままゆっくりと微笑んだ。タロウは、摩詠子の沈黙にちょっと焦って畳みかける。
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​​「や、悪いよ!摩詠子もギャラは貰ってよ。だってその…俺はもうガキじゃないし、へへ、まあまあ仕事できるサラリーマンになってんだぜ?てゆーかそこまで困ってねぇし、本当に5:5でいいって!『全部タロウちゃんのお小遣いにしてね』とか、『おばさまは貰えないわ』とか、いつまでもオカンぶるのは止せよ!てゆうか俺、摩詠子にいまだにそんな気遣いばっかされたら却ってムカつくよ…ね?」

必死でぶっきらぼうに見せているが、タロウのその口調は、「俺はもう一人前の男なんだぜアピール」めいた、ちょっと自慢げな照れ照れとした甘さがあった。
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​​「何を寝ぼけたこと言ってんだいタロウ。わたくしが9で、あなたが1よ?」

​​「…フオッ?!」


 

​​「ふふっ。何を驚くことがあって?割合は9:1。でも心配は要らないわ。いまタロちゃんがやってるちんけなサロンなんか目じゃないくらいのお金は稼がせてあげるからね」
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​​「いや、ちょ、ちょ、ちょっと待て!摩詠子ってそういうキャラだったっけ!?え?ええっ?」
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​​「お聞きなさい。まず、ここで稼いだお金の額の少なくとも50,000円は、今年も12月に【さくらみみどうぶつ基金】に寄付すると決めてるの。おばさまはね、理不尽な目に遭う猫ちゃんたちをすこしでも助けるお手伝いがしたいのよ。というか、タロウちゃんがこの話をふってきた時に、つまり2020年12月31日にもう先に50,000円寄付しちゃったわ。でね、来年もガツンと寄付するためには、ふたりでドンと稼いで、なおかつ、わたくしがガツンと取り分取らないとね。だから、取り分は9:1」

↓エロいシルクのガウンの上に置いた寄附の領収書

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​​「えッ、えッえッえッ?!」
​​「ゲスく稼いで…にゃんこをしあわせにする!」
​​「…やっ…でも...でも...9:1って…!ひ、酷くね?!?!」

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​​大きな窓から美しい夕焼けが見える港区のマンション。
​​放心したタロウの端正な顔に、同じ茜色の光が差して光っている。
​​そして、20秒の、沈黙…。
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​​「騙されねえぞ!」
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​​Macbookの前でフリーズしていたタロウは、椅子から立ち上がりドモり気味に声を上げる。
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​​「な、な、なにが9:1だよ!こっちが譲ってやってるのいいことに。解ったよ!じゃぁ、6:4にしてやるよ!」
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​​沈黙。摩詠子の返事は、無い。
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​​「…くッ!どんなに譲っても7:3だ!それ以上は絶対譲れねえ!」
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​​摩詠子はヘッドセットから聞こえる狼狽を、落ちつき払った笑みで追い詰めるように堪能する。
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​​「だ。め。譲ったとして、8:2よ」
​​「いや、いくら何でも限界だよ!8:2って、4倍だぞ?それじゃ俺、馬車馬じゃねぇか!7:3だよお!」
​​「ふふっ。ウルサい子ね…。解ったわ。譲りに譲って7半:2半」
​​「うえぇ…。いや、きつすぎるよ…マジか…まだ3倍…」(しかも”半”ってなんだよ、昭和の賭博映画か)
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​​「いいこと、タロウちゃん?この世の中に、『ふつうのマジメな主婦の気持ちがわかるド・エロ痴女』も、『一人の夫に貞節を捧げたままとびきりえぐいエロ話が延々できる熟女』も、わたくし以外にどこに見つかるかしら?要するにわたくしは相当なレアポケモ〇なの。そんな熟女ミュ◯が参加して下さるなんて、たとえ9:1でも『なんという僥倖…っ!』って涙を流して土下座でありがたがるレベルよ?うふふ…イヤなら降りるけれど?ふふ?」
​​「いや、俺もさ、そのっ、えーと…えー…ま、マンドリルの森を守るために、お、お金が要るわけでっ!」
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​​「う・そ・だ​♥​」
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​​そして摩詠子は心の中でつぶやいた。
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​​(タロウちゃん…わたくしは実は全部知っているのよ…。あなたが本当は人助けのために尊い志を持って儲けようとしてることを。タロウがなぜこれほどの男ビッチになったのか。そしてどこへ進もうとしているのか。そんなことはね、摩詠子おばさまには全部丸見えよ。だってわたくしは長い事あなたの人生を見てきているもの。私達は同じ穴のムジナね。でも、タロウの『志』…今はまだ知らない振りをしておくわ。あなたが堂々と胸を張ってそれを言える時が来るまでは。若いけど、タロウはちゃんと大人になったのね…。でもだからこそ、わたくしはあなたにつまらない容赦なんかしない。ねえタロウ、生きることは闘いよ。他人との戦いではなく自分との闘い。つらくても、自分の心と向き合い、孤独の中で決断し行動するという、闘い。応援してる。頑張れ、タロウ(ただし歩合は7半と2半​♥​))

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