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8-6 この人こう見えて完全に怯えてるじゃねぇか 小説【女主人と下僕】


前話

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もくじ


もう限界だし、もういまさら構わんだろう、と、まさにディミトリがマーヤの頭を、艶々した長い黒髪ごと両手で鷲掴みにやや乱暴にぐしゃと掴んだ瞬間、その時ディミトリはやっと気づいた。

可愛らしい広いおでこの先の長い黒いまつげが、愛らしい唇が、ぷるぷる、ぷるぷると震えているのを。

​​マーヤがなれない行為に震えているのがはっきりわかるのだ。

​​(えっ!この人…ちょ!…こんだけやっといて…こんだけやっといて…おいこれ、完全に怯えてるじゃねぇか…!こんだけやっといてびびってるって…まじか!)

​​そうだマーヤは処女だった。完全に忘れてたけど生娘だった。


大金持ち専門の特別な最高級の夜の女にもされるはずがないような過剰も過剰な、手厚過ぎる技なうえに、マーヤは生来のセンスが突出しているのか、ディミトリの微かな吐息やわずかな動きの一挙一動からまるでディミトリの心を読んでいるかのように、見る見るうちにディミトリのツボを理解して、そう、そこだ!と言いたくなるようなピンポイントを責めてくるので、ディミトリもウッカリ忘れそうになっていたが、

(そうだこのひと、処女だったんだよ!はじめての床入りなのにトンチンカンにやる気を出して、とんでもねえ毒毒しい参考書を鵜呑みに、必死でその通りにやってみているだけなんだったっけ!)

とディミトリは思い出したのだ。

(だいたいにおいて、処女に出来るだけ痛みを感じさせないようにと、あんな苦労して、せめて初日は痛がらせないようにとわざわざ最後のところで処女を散らさないでこうやって踏ん張っておいて、なのにこんなに怯え切ってるそのひとの口にいきなりこれからこれを喉の奥まで思いっきり突っ込もうっつうのは、それはちょっと本末転倒ではないだろうか…?)

いや。

いくら穏やかな気質のディミトリでも、マーヤをいかに大切に思っていようとも、ふつうならばこんな若い男が好いた女とはじめての床入りでこんな物理的絶頂直前の寸止め状態でそこまでの心づかいは出来ないだろう。

だがディミトリの心にはこんな状況で本来ありえないはずだと自分でも不審に思うほどの落ち着きが戻ってきていた。

というのは、(通常はとくに若い男女がこのようなシチュエーションになる事は滅多にないので知る人は少ないが)快感の高原状態を延々と長時間続けていると、普段の放出とはまた違った快感が積み上がる事によって、ふつうの交接ではまず感じないような奇妙な質の満足感が満ち、そのため絶頂前でも少々の落ち着きならば戻ってくるものなのである。

そこで、ディミトリはマーヤの頭を掴んでマーヤの口に自分のそれを喉の奥底まで無理やり突っ込むのだけはすんでのところで思いとどまることができた。

だが、震えながらも涙目で必死で頑張るマーヤを見れば見るほど欲望がせりあがって来て、ディミトリは「いいんだ、無理するな、もうここで止めな」とマーヤにひとこと、言ってやることだけはどうしてもできず、欲望に負け、ただただそのまま固唾を呑んでマーヤを見つめながらマーヤにされるがままになることしかできなかった。

マーヤの5本の指の腹は徐々に


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昔々ロシアっぽい架空の国=ゾシア帝国の混血羊飼い少年=ディミトリは徴兵されすぐ敵の捕虜となりフランスっぽい架空の敵国=ランスで敗戦奴隷に堕…

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