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4-2 使用人は今日はいませんの ~小説「女主人と下僕」~敗戦奴隷に堕ちた若者の出世艶譚~



再びディミトリは応接テーブルの革張りの椅子に座らされていた。

「そういえばご家族...は一人で亡命されてきたからいらっしゃらないのか。にしても、使用人の方にご挨拶を」

「通いの使用人は時々来ますけど、今日は居ませんの」

再びディミトリの背中に変な汗が伝った。

「いま…誰も…居ない?」

「はい」

「ちょっと!無用心にも程があるでしょう!」 

マーヤはにこにこしながら言った。

「解ってますわ!安心して!もちろん、普段は、お爺さんくらいのお年の職人さんでも、念のため、わたし1人しかいない時に男性を家にあげたりは、決してしてませんわよ?そもそも、この家に男性を招いた事など一度もございませんわ!だからディミトリさんしかこんなふたりきりにはなったことはないわよ、大丈夫」

(マーヤ様!貴女はなにを言ってるんだ、貴女の人生で一番危ない男はたったいま、目の前にいる、この俺ですぜ?!)

と、ディミトリは喉元まで出掛かったが飲み込んだ。

(マーヤ様は昔から俺を好いていた、と仰るが、正直なところどう考えても、若い娘特有の後先考えなしの将来の事も世間体も忘れた、馬鹿げた、気の迷い、としか思えねぇ。)

(どう考えても俺以外の男と一緒になった方が幸せだろうが)

(たとえ遊びのつもりにしたってなんでわざわざ俺なんだ?美男子でもねえ、金持ちでもねえ、しかもこの身分。敗戦奴隷の俺とのことが世間に知れたら傷物もいいところだ。そうなったら最後、マトモな上級市民からは縁談が来なくなるぞ?!)

(だが俺にとっては、これは、一生に一度だけの降って湧いた幸運だ)

ディミトリは、嬉々として茶を淹れているマーヤの後ろ姿を、頼りないほど華奢な長い首を、ブラウスから覗く滑らかな白いうなじを、けだものじみた射るような瞳で見つめた。

(さっき茶亭でマーヤ様は『もう観念しております』『なにをされても嬉しいです』と仰った。ご自分で仰った事の意味がわかってるとは到底思えねえが、仰った事は仰ったんだ...)

「ディミトリさんは紅茶にお砂糖は入れますの?」マーヤはなにも気づかずに弾んだ声で尋ねた。

(...いっそ、他の上級市民どもが手を出だす前に、今日、いますぐ、無理やり襲い掛かってでも徹底的に処女を散らしてしまって、『お前はもう処女じゃねぇ、敗戦奴隷の俺なんぞににここまで徹底的に犯されてしまった以上は、もう他のマトモな男の嫁になど行けねえからな』としっかり云い含めて、あからさまに近所に知れ渡るように毎晩通って俺との悪い噂を街中に広げてしまえば…)

(敗戦奴隷と身体の関係があったなんて噂が広がれば、身分の高い奴らであればあるほど、親や親族が大反対するに違いねえ。つまり上流階級の求婚者の大半は自動的に蹴散らせる…)

(だが、俺にこんなにお優しくしてくれた女が、こんなに俺のことを認めて下すった女が、俺の今までの人生に他にたったひとりでもいたろうか。そんな、俺にとっていちばん大切にしなければならない、俺にとっては女神様のような、お優しいこの方を、ぐっちゃぐちゃに犯した挙句に、ご評判を地に墜とすなんて…)

(今はなんらかの気の迷いで、俺のことを多少なりとも好いて下さって居られるとしても…こうやって俺のことを信用して家にまで入れてくださった挙句に、いま俺に無理やり襲われたりすればビックリして俺のことを大嫌いになるんじゃないか?それで無理やり夫婦になれたとしても一生怯えられて毛嫌いされながら夫婦になるってことになるんじゃないか...)

(だが、今日だけであの4箱の贈り物…上級市民の求婚者どもに...正攻法で俺が勝てるか?)

その瞬間、ディミトリの両肩に、背後からそっと手が置かれた。ソファーの裏からマーヤがディミトリの肩に触れたのだ。

「ぅお!!」

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昔々ロシアっぽい架空の国=ゾシア帝国の混血羊飼い少年=ディミトリは徴兵されすぐ敵の捕虜となりフランスっぽい架空の敵国=ランスで敗戦奴隷に堕…

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