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8-2 彼女の読んだ本は完全に片寄っている 小説:女主人と下僕
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もくじ
「でも、えっと、その…このままではなんだかわたくしがさみしいのですが…その、ディミトリ様はわたくしにそうされるのは、お、お嫌、なの、ですか?」
「えっ」
「わたくしだけなにもしてあげられないなんてなんだかとても寂しいのです…」
「えっ」
「わたくし、産まれて初めてのものすごい快感もさることながら、ディミトリ様にあんな大切に大切に丁寧に愛して頂いたこと、ディミトリ様のそのお心遣いが、ほんとうに、ほんとうに、嬉しかったのでございます。…まだ先ほどの余韻で身体が気だるく痺れて溶けてしまっておりますわ…本当はこうやってお話しているのもやっとです。このまま処女を捧げられれば自動的にディミトリ様もすこしは気持ちよくなって頂けたかとおもうのですが、このままディミトリ様だけ我慢するなんて、絶対おかしいと思うの…わたくし、そんなの、嫌です…ど、どうしても、だ、だめ…です…か?」
マーヤは、ディミトリの腕を筆致で掴んだまま、羽布団にくるまり身を隠し恥ずかしさで真っ赤に俯きつつも、ぽつぽつと小さな声で話した。
「…!」
ディミトリは返答も出来ずにまた固まった。
「ただ。本来ならば、嫁入り前に多少の知識は学ぶものなのですが、わたくし亡命したものでその手の知識がなく」
「いや、だからっ、無理はするな無理は」
(てゆうかこの人自分が何を進言してるか意味解って言ってんのッ?!?!)
「ですが。つい先日。亡き父から受け継いだ蔵書の中からまさにその『お口で行う殿方へのご奉仕のやり方』の本を、その、は、発見しましたの!ほら先ほど申し上げていた本です!それで、先日、今後...いずれはこういう事もあろうと一通り読みましたの。だから…できます!ディミトリ様に、何をすればいいのか、わたくし、たぶん、解ります!」
「!」
(ちょ、亡くなったお義父さん!そういう工口いの処分しないで娘に蔵書譲ったんか!)
「ただわたくし実技経験がゼロですし、その本は代々我が家に伝わる由緒ある本ではあるのですが、実は一般的な子女の通常の輿入れの作法とは多少ずれた内容でありまして…だからもしトンチンカンでちっともご満足させられなかったら…どうかお許しくださいませね。拙い間違いがいろいろあるでしょうが、どうかその都度ご指導をお願いしますね」
(ハァッ!?「代々伝わる由緒ある殿方へのお口でのご奉仕」だとォッ!?なにそれなにそれ、メチャクチャ意味がわかんねえ!シーナ国4千年の歴史ヤバい!東洋の変態文化は奥深すぎてついていけねぇーーーッ!)
「こ、この本、なんですの」
マーヤは真っ赤になりながら薄い羽根布団がはだけないように片手で身体を隠しながら、ディミトリに脱がされた薄紫のシルクガウンを手繰り寄せて着つつ布団からもぞもぞ出てきた。
そして小さなこどものような可愛い指の並んだ素足をちらりと晒してベッドサイドにちょこんと降り立ち、ベッドサイドの小さな小机の引き出しを開けて、色褪せた深紅だったらしい紅がかった焦げ茶色の表紙の古い和綴じのシーナ語...四角い漢字がびっしり埋まった書物を何冊か取り出した。
ディミトリはマーヤの、どこかすっとぼけた、斜め上の行動に、さっきまでの気か狂いそうな情欲を一瞬忘れ、本を覗き込んだ。
「...ひたすら小さいシーナ文字がびっしり並んでいるだけに見えるが...これがシーナの古典的工口本...じゃなかったえーっとそのう...嫁入り前に処女が読む本...ってことですかい?」
「いえ、いくらなんでもさすがにそんな本は無いんじゃないかしら…たぶん普通の輿入れならば、こんな特殊な本ではなく、きっとその…母や叔母から、ひたすら目を閉じてじっとしていなさい、程度の、かんたんな心がまえを聞く程度だったろうかと」
「特殊な本...?じゃあそれはどういう」
「100年ぐらい前の本で、ええと、題名をランス語に翻訳しますと..『シーナ帝国後宮 房中術奥義 第三の巻 笛吹術のすべて』って書いてあります…ようするに、後宮に入る宮女達が皇帝への夜のご奉仕を学ぶための教則本ですわ」
ディミトリは思わずブフォっと咳き込んだあと慌てて捲し立てた。
「いやいやいやいや!待てッ!無理するな!ぼっぼっぼっ房中術奥義っておめえ、はじめての床入りでやるやつじゃねってそれッ!!」
「いいえ。だって、宮女達も全員がわたくしと同じ処女のはず。ならば、わたくしにだってやってやれない事ではないはずでしょう?…だからとりあえずこの『笛吹術の冊』を初めの章から書いてある通り順番にひとつずつやってみようかなぁとおもいますの…お願い、どうかわたくしの感謝の気持ちを受け取って下さいませな」
「いゃっしかしっえっえっえっえっ…マジで?…いっ…いいの?…いや!しかし!」
「わたくし先ほど涙が出ましたわ。だって。先程も本に書いてあったと申し上げましたでしょう?この本に女性のあの部分は汚らわしいものであり、先ほどのディミトリ様みたいにお口で、あ、あ、あんなことまでは皇帝さまは絶対になさらないんだけど、もしももしも万一して頂いた場合にはもうそれはあり得ない僥倖であり、末代まで忠誠を近い、必ず、魂込めて、誠心誠意お返しをするようにと!」
「さっきから『殿方は女性の秘部を口で愛撫などしないとシーナ国の本に書いてあった』って言い張ってたのは…おい!この本の事だったんかよ!!」
「はい!そうなんです!ですからわたくし、ディミトリ様からあり得ない僥倖を頂いてしまったのです!」
「いや何言ってんのあなただからそれ皇帝だからの話でしょッ!!」
ディミトリはうろたえるあまりあれほどに昂っていた情欲すら一瞬忘れて途方にくれて返事していたが、マーヤが緊張した、しかし熱っぽい表情で猫のようにくね、くね、とにじり寄ってきて、そっ、とディミトリの筋肉質の太ももの内側に触れるか触れないかの力で手を添えた瞬間、その柔らかい女の手のひらを伝わって、自分の足の裏から背骨を通って喉の奥まで熱い官能が再び猛烈にせり上がって来て、局部に張り裂けん程に熱い血が回り過ぎて痛みすら感じるほどとなり、頭が真っ白になり、すべての思考を停止した。
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マヨコンヌの官能小説『女主人と下僕』
昔々ロシアっぽい架空の国=ゾシア帝国の混血羊飼い少年=ディミトリは徴兵されすぐ敵の捕虜となりフランスっぽい架空の敵国=ランスで敗戦奴隷に堕…
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