見出し画像

Jimmy Scott / Those Who Were

アメリカのジャズ・シンガー、ジミー・スコット。50年代後半から活動し、2014年に88歳で、その生涯を閉じました。彼が本当にブレイクしたのは、90年代に入ってから。友人の葬儀で歌った姿を見たレコード会社の人が、彼のアムバム「オール・ザ・ウェイ」を発売し、大ヒット。そのすぐ後にデビッド・リンチの映画の方の「ツイン・ピークス」に出演。あの赤い部屋で歌っています。人生とは分からないものですね。実は世界的に名を知られる前に、スティービー・ワンダーやマーヴィン・ゲイらが憧れていたほどの実力者。ただ、契約したレーベルとの相性が最悪で、20年ほどドロップアウト。しかし、やはり才能は隠せないものですね。一時期は、音楽に関係ない仕事をしていたらしいですが、まさかの67歳でのカムバック。本当に歌うことが好きだったんだろうな。

彼は、遺伝性のホルモン欠乏疾患で変声期を迎えないため、独特な声帯を持っており、その声は、“天使の歌声”と言われています。艶と悲しさを感じさせる、ジャズバラードに適した素敵な声です。しかし、すごい人生だなと感じます。ジャズのアーティストって成功の後、生き急ぐように落ちていく人が多い印象がある中で(ビル・エバンスとかチェット・ベイカーとか)、この人は本当に遅咲きの苦労人であり、歌うことを愛する人間としてひとつの美しい物語のような人生を歩んだ、数少ないアーティストの一人だなと感じます。この曲は、その全てが詰まっているように感じます。

ということで、涼しくなった夜に聴くと、何だか切なくなって泣きたくなるこの名曲をお聞きください。絶対、サビのところは、優しく、幸せそうな笑顔で歌ってるんだろうな・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?