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イチョウ五重奏団 at 大塚Greco Nov. 29, 2024

今年4月にリリースされたイチョウ五重奏団の1st CD ”More Than Ten Years”のレコ発、バンドとしても縁の深い大塚グレコで全曲演奏会です。

1stセット最初は谷口さんのclが軽快でグルーヴィなスウィングチューンから。
中間部のSoliは、まるで一つの楽器のように響くもの凄いアンサンブル。見事です。
2曲目はvcのソロから。静謐の中の豊かな音色。alt-flのソロも中低域のふくよかな響き。
次の曲、”月の光”はよりJazzよりな演奏になっていたように思います。
Jazzと印象派、アメリカの映画音楽とかとの関係を調べると面白いかもとか考えていました。穏やかな長めのアウトロが心を落ち着かせてくれます。
4曲目はclのソロインプロヴィゼーションから。ゆったりとしたスウィングですが、溜めに溜めたclのソロが何とも言えない緊張と弛緩の連続で素敵でした。
谷口さん「最高のソロ」とのことです。
セットラストはちょっとした浮遊感のある不思議な印象の曲。
中間のclのインプロヴィゼーションはかなりアヴァンギャルドな印象。
flとvcのベースの組み合わせではHighway Star風味もちらっと。
穏やかな曲想にガツンとヘヴィな演奏で疾走感満載。

2ndセットはJaco Patoriusの曲ですが、Word of Mouthとも異なるユニークな解釈で、このバンドの原点となった曲です。結成時から長く演奏されているレパートリーです。賑やかなアンサンブルが楽しい。
2曲目は谷口さんの作品。ゆったりとした2beatの曲。vcのAメロが素敵な音色です。vlも艶やかに。秋の静かな気配。
続いてアラブのリズムを借りた新澤さんの曲。リズムは複雑ですが、里山の情景を思い起こさせる何かのどかな印象の曲です。このアラブのリズムは砂漠の歩き方とか。映画”デューン”の1シーンを思い浮かべたり。
4曲目は今でも先鋭的北欧ジャズの一つだと思いますが、e.s.t.の作品を。
とても複雑な構成、変化の多いリズムで半ばいわゆる現代音楽のような抽象性を持った曲をこのアンサンブルで。素晴らしい緊張感。
次は新澤さんテイスト満載の1曲。これも北欧ジャズのイメージ。穏やかな中にもドラマティックな抑揚を持った曲です。各パートの音色の対比が素敵ですね。
そしてセットラストは大曲で。壮大なアレンジをパワフルな演奏で。太田さんのインプロヴィゼーションがややコンパクトながら今日も素晴らしい迫力で。

アンコールでは開放的に楽しく武満のポップな作品。合唱曲ならでは、メンバーの歌唱も加わって幸せな光景です。
最後にこれも最初期、バンドの名前も決まっていなかったセッションの時から演奏されている小品。cl奏者の土井徳浩さんの作品。
また次への希望がじんわりと感じられるとても示唆的な曲で締めくくり。

その最初のセッションを聞いてから10年余、ようやくCDとして纏まったこのアンサンブルの一つの到達点に立ち会えて幸せでした。
これからもずっと、頻繁にではなくともやはりライブで聴いていたいと強く思いました。

Info.

date:Nov. 29, 2024

place:大塚Greco

Personnel:

・新澤健一郎 (pf)
・太田朱美 (fl, alt-fl, piccolo)
・谷口英治 (cl, bcl)
・帆足彩 (vn)
・橋本歩 (vc)

Set List:

1st.
・Woody Is Swinging! (谷口英治)
・樹の詩 (太田朱美)
・月の光 (Debussy)
・Mood Indigo (Albany Bigard, Duke Ellington)
・イチョウ並木 (新澤健一郎)
2nd.
・Liberty City (Jaco Pastorius)
・An Autumn Night (谷口英治)
・上弦の月と木星 (The First Quarter Moon Meets Jupiter) (新澤健一郎)
・Mingle in the Mincing-Machine (Esbjorn Svensson)
・Quiet Leaves (新澤健一郎)
・7 Anéis(7つの指輪)(Egberto Gismonti)
enc.
・翼 (武満徹)
・はじまりの歌 (土井徳浩)

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