『マルナータ 不幸を呼ぶ子』(ベアトリーチェ・サルヴィオーニ、関口英子:訳、河出書房新社)の一節
マルナータは頬にある痣が急に痛いだしたかのように掻きむしると、肩をすくめた。「好きにしたら」くるりと自転車の向きを変えるなり、片足をペダルの上に置き、勢いよく漕ぎだした。そしてお兄さんとおなじ立ち漕ぎで、背中を丸め、風にスカートをふくらませ、市場の立つ通りの外れまで猛スピードで走っていった。買い物籠を抱え、驚いた鳩のように二手に分かれて逃げ惑う主婦の集団のあいだを走り抜け、路面電車の裏へと消えていった。 (p42)
嫌われ者のマルナータ。でも本人は全然気にしていない。
「頬にある痣」、「肩をすくめて」、「「好きにしたら」くるりと自転車の向きを変えるなり〜」など、この一節で描かれるマルナータという少女の気質と、街中を疾走する自転車に乗る彼女の動的な姿がとても清々しくて、好きです。
※小説を読んでいるからこそ、感じられることではあるけれど…。