<土木屋目線で東京の建築をめぐる>②建築家・吉阪隆正展を訪れる
ゴールデンウィークの雨の週末。これまであまり美術館に興味が無く、訪れたことは皆無だったのですが、二つの建築家の作品展が行われていることをきっかけに、何と美術館のハシゴをしてしまうという一日。ちょうど雨天なので、歩き回るには厳しい日でしたが、美術館の中を思う存分歩きました(笑)。前回の記事で、最初に行った上野・国立西洋美術館のル・コルビュジエの企画展に行ったことをご紹介しました。その次に移動したのは、木場公園にある、東京都現代美術館。ここで開催されている、建築家・吉阪隆正さんの企画展に行ってきました。
(前回の記事はこちら)
■吉阪隆正さんとは?
吉阪隆正さんは、前回紹介した、上野にある、国立西洋美術館や、その隣の東京文化会館の設計などにも関与した、ル・コルビュジエのオフィスで学んでいたこともある、国内で有名な建築家の一人です。おそらくどんな業績を持っている方かは、この展覧会の公式HPをご覧いただけるとわかると思います。
なぜこの展覧会に興味を持ったかというと・・、私の地元・八王子市の下柚木地区にある、「大学セミナーハウス」という建物を利用する機会があり、その建物がすごい建物(吉阪隆正さんの代表作のひとつ)であり、ちょうどこの展覧会が開催されていることを知ったからです。
大学セミナーハウスについては、別途訪問記を書きたいと思いますので、お楽しみに(笑)。今回は、東京都現代美術館で開かれた展覧会と、現代美術館周辺の訪問記を書きます。
■東京都現代美術館を目指す
美術館の最寄り駅の東京メトロ東西線木場駅。施工当初はシールドトンネルで駅のホームが作られましたが、利用客の増加で手狭になってしまいました。そこで、シールドトンネルの周りを開削し、駅を広げる工事が進行中です。工事着手から10年以上かかる工事が続いているようです。利用者目線からは工事の全容が見えませんが、多分このトンネルの裏側では地道な掘削作業が進んでいて、ある日突然地下空間がガバっと広がるはず、です。
木場公園。もともとの貯木場があったことに由来する地名です。渡る川は、仙台堀川と言う川です。仙台と関係あるのかな?と調べてみたら、何と仙台市のHPに紹介されていました(笑)。伊達政宗の仙台藩の屋敷があり、米を運び入れた川だそうです。
本降りの雨の中、広い公園と斜張橋を歩き、東京都現代美術館に到着。
この美術館は、1994年に柳澤孝彦+TAK建築研究所が設計した建物で、施工は竹中工務店のJVです。
■1996年 BCS賞受賞
https://www.nikkenren.com/kenchiku/pdf/560/0560.pdf
■吉阪隆正展を鑑賞する
いよいよ吉阪隆正さんの展覧会に入りました。入ると、当時の設計メモが立体的にあらわされる展示などが目を引きました。設計メモや図面が芸術作品のように鑑賞できるなんて、ただただ尊敬するだけです。自分の設計メモや図面は、恥ずかしくて見せられないと思います。。
利用した大学セミナーハウスが、一つの展示ブースに詳細に取り上げられていました。昔は宿泊棟は小さなコテージが多く並ぶ形式だったようですね。今ではコテージは老朽化等で一部エリアを取り壊し、新しい宿泊棟と食堂ができています。利用者目線で見ても、当初の思想がよくわかり、とても興味深い展示でした。
吉阪隆正さんの主要作品である、八王子セミナーハウス以外の、江津市役所(島根県)、吉阪さんの自邸(新宿区:現存せず)、涸沢ヒュッテ(長野県:穂高岳)など、様々な作品のことが具体的によくわかり、とても満足できる展示内容でした。
■常設展にも行ってみました。
企画展に入ると、常設展も見られるので、あまり時間は取れませんでしたが、アート鑑賞を楽しみました。(ここはそれぞれの展示を論じるほど存じ上げていないので、ノーナレで(笑)。)
現代美術館を訪れて感じたことは、芸術の表現って、人それぞれに自由であり、作品を通じてその人の感性に共感したり、知らない世界を眺めて見識を深めることが重要なんだろうな、と、何もわかっていないのにわかったような気持ちになり、またしても建物とその中の芸術作品に癒されつつ、立ち歩き続けてどっと疲れた時間を過ごしました(笑)。
■美術館から菊川駅まで歩く
いつの間にやら、美術館の閉館時間になってしまいました。帰りは都営新宿線の菊川駅まで少し歩きました。
小名木川に架かる、新高橋を渡ります。この橋は、1930年に架けられた橋です。何気なくとても立派な橋を歩きました。
最後に、菊川橋を渡ります。ここは、なぜ来たかと言うと、1月に神奈川県・伊勢原市にある、丹沢・大山を訪れた際に、この菊川橋の旧橋の橋名板などが大山の中に記念碑として飾られているため、です。
大山の記念碑は、第二次世界大戦の東京大空襲の悲惨さと、私財を投じてそのことを後世に伝えようとする人たちの姿が見えました。その場所を訪れたので感慨深かったです。
■終わりに
吉阪隆正さんの展覧会で訪れた東京都現代美術館。この前に訪れた国立西洋美術館を含め、芸術の楽しみ方を勉強させてもらった、とても楽しいひと時でした。
文中でも触れた、大学セミナーハウスへの訪問記は、別途書いていきたいと思います。