【読書感想】『ソロモンの偽証』をオーディオブックで読んでみた。
宮部みゆきさんの著作が好きでこれまで色々と読んできたが、『ソロモンの偽証』については合計6冊というボリュームからなかなか読もうとはなれなかった。
しかし、久しぶりに骨太の小説を読みたいと思うようになり、聞き流しなら読破できるのではないかとオーディオブックで購入してみた。
結論、最高に面白い小説だった。合計6冊というボリュームにもかかわらず、一切飽きさせるところがなく、次から次へと展開が変わっていく描写に惹きつけられた。また、ストーリーの内容とは関連しないが、朗読者がキャラクターによって声色を変えてくれたおかげで、自然と話しに夢中になってしまう。ストーリーそのものが素晴らしいのに加えて、卓越した朗読者の朗読スキルによってより一層作品の味が引き出されている。
個人的には紙の本で読むのもよいが、オーディオブックで読み進めることをお勧めしたい作品である。
ここで本書のあらすじを簡単に紹介すると
あるクリスマスの夜に中学校で転落死をしている生徒が発見された。当初は自殺として片づけられた事件だったが、その生徒が中学校の屋上で突き落とされた様子を見たという告発文が事件関係者に送付されて状況が一変。マスコミも加わり、何が真実で何が虚偽なのかがわからなくなってしまった。そこで主人公の中学生が学校内裁判を開き事件の真実を解き明かそうとするお話である。
ストーリーの大枠としてはよくあるミステリーの展開であるが、至るところに複線が張られており、最後にそれらが1つに収れんする様は見事である。宮部さんの頭の中はどのようになっているのか、という疑問に思ってしまった。
(ここからは完全にネタバレになるので注意)
そして、個人的に一番引き込まれたシーンが
主人公で学校裁判の検事役である藤野涼子と、弁護士役の神原和彦との舌戦である。ロジカルに事実を積み上げて討論している描写が、思わず「おおー、なるほど」と納得し引き込まれる展開であった。が、それ以上に素晴らしい点が、裁判というルールが決まっているゲームの中でルールをうまく使い心理戦に持ち込んだり、自分たちに優位な展開を導こうとしていたりする点である。そのため、本書は単なるミステリーとしてしてではなく、かつて人気を博したマンガ『ライアーゲーム』のような交渉戦も楽しめる作品となっている。
以上、長々と感想を書いてみたが百聞は一見に如かずかと思うので、一度オーディオブックで本書を楽しんでもらえると嬉しい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?