ブリの照り焼きの怪
食事をしていてふと思い出すことがあった。
亡くなった祖母の料理について。いろいろ季節の料理を食べさせてくれたなぁとか、夏休みに母の代わりに作ってくれたお昼ごはんの思い出とか…
洋食が苦手だったらしく、オムライスはいつも黒く焦げていてパサパサ。カレーは敬遠して作ってくれない。グラタンと言う食べ物はジャガイモやニンジンの温野菜にチーズをかけて焼いただけのまさに “野菜にチーズがかかった食べ物” だった。ホワイトソース?マカロニ?そんなものは無い。
その代わり、おにぎりや天ぷらはやたら大きいし、いなり寿司はおあげのキャパオーバーで必ず破れている。そんな祖母の「名物料理」をよく笑い話にしたのであった。
祖母が亡くなってはや10年余たった近頃、こんな事があった。
親戚から “作りすぎたから” とお裾分けでブリの照り焼きを頂いたのだ。実は私、ブリの照り焼きが苦手…。というか好きじゃなかった。しかし頂いた食べ物は絶対に食べる。絶対捨てない。覚悟を決めて食べた。なんと…、
しょうゆとみりん?のあまじょっぱさがブリの脂となんとも合うではないか!
意味不明な稚拙な食レポと思うだろうが、私の知ってるブリの照り焼きは、身はカッチカチで固く、焦げたしょうゆの辛さと苦さと、何より酸っぱかった。
正直に言うとブリの照り焼きとは酸っぱい魚料理だと思っていた。
祖母の名誉のために言うと、祖母は食材には拘るお人だったので魚が痛んでいたということはない。
「ブリの照り焼きって酸っぱくないんですね」そうお礼とともに伝えたところ、なんで??という話になった。そりゃそうだ。
あらましを伝えて、改めて照り焼きの調味料とはと訊いた。当然ながら酢やレモン果汁などの酸味は存在しなかった。
「隠し味でポン酢を使ってたとか?」という結論で終わったが、隠すも何も、前面に出てしまっていたではないか。冗談ではない。
鰤テリとはあまじょっぱの味が本来の味ではないか!
(そう知ったのは最近だが)
また、たまたま会社の同僚がお弁当に鰤テリを持ってきていたので、味付けを訊いたところやはり酸味は1滴も入っていない。
「身を柔らかくするために下拵えで使ったのでは?」と言われたが、固いんじゃよ…箸で切れないくらい固かったんじゃよ。そんな酢豚のパイナップルみたいな目的だったとしたらもっと柔らかくて良かったはずだよ…。
祖母が亡くなって10年余。謎は謎のまま祖母の思い出とともに私の中で永遠に残り続けるのであった。やまなしおちなし。おわり。
(追伸 : 本来の調味料を誰か教えてください)