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『ソー/ラブアンドサンダー』「見せ場」は物語よりも先行しない

 監督
タイカ・ワイティティ
脚本
タイカ・ワイティティ
ジェニファー・ケイティン・ロビンソン
原作
スタン・リー
ラリー・リーバー
ジャック・カービー
『マイティ・ソー』
製作
ケヴィン・ファイギ
出演者
クリス・ヘムズワース
クリスチャン・ベール
テッサ・トンプソン
ジェイミー・アレクサンダー
タイカ・ワイティティ
ラッセル・クロウ
ナタリー・ポートマン


 「魅力的なキャラクターにかっこいいバトルシーン、笑えるユーモアやエモーショナルな高まりもあって最高!!いつまでも愛でていたくなる超快作だ!!」
と言いたいところなのだが、まるで劇中でダメ押しでかかるGUNS N' ROSESのように、(いい意味でも悪い意味でも)ノリだけの軽薄な作品となっていた。

 フェーズ4以降のmarvelスタジオ作品に顕著なのだが、観客を楽しませすぎようとした結果、過剰なユーモアや平坦であまり工夫のないVFXバトルを供給しすぎ、せっかくの物語を衰退させている傾向がある。
本作では、マーベルスタジオのそのような「見せ場」中心主義が悪い方向に働き、演出と物語の間に温度差や齟齬を産んでしまった。

特筆すべきはクリスチャン・ベール演じるゴアの扱いだろう。
冒頭から、主役陣を食ってしまう勢いでヴィランとして存在感を示した彼であるが、終盤になるにつれ観客を泣かせるための「見せ場」へと消費されていく姿には、冒頭で覚醒した彼との温度差があり、違和感を感じた。
(彼の「神」に対する批判や殺意が主人公ソーの存在意義に関わるという掘り下げ甲斐があるとても興味深い問題提起が、劇中で等閑にされていたのもなおさら残念だ。)
本来、"God the butcher"=「神殺し」であるはずの彼が「神頼み」によって問題を解決するのも、物語構成上においてとても疑問に思う。

NEWソーとして復活したジェーンや、ヴァルキリーなど、かなり魅力的なキャラクターの活躍が見れるのも確かだが、今まで十二分に活躍した主人公ソーとの「見せ場」に奉仕するかたちで物語から退場していく。
彼女たちの行き着く姿を見て、シリーズとして物語が停滞していくさまを味わうことになったのはとても残念だ。

中盤のゼウス登場シーンにも顕著にあらわれているのだが、「見せ場」は物語をドライブさせるはたらきをもつだけであり、それ単体ではあまり意味をなさないということを痛感した一作であった。

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