日本からユヌスさんのソーシャルビジネスを発信したい 九州大学特任教授“岡田昌治さん”
ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士のソーシャルビジネスを広げるチーム・ユヌスに日本人で唯一所属し、九州大学にてユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターエグゼクティブディレクターとして、ソーシャルビジネスの普及に努めている岡田 昌治さんにお話を伺ってきました!
岡田 昌治さんプロフィール
出身地:1953年 博多生まれ
活動地域:地球
経歴:1979年東京大学法学部卒業後、電電公社に入社。ワシントン大学(シアトル)経営大学院にて経営学修士号(MBA)取得、米国ニューヨーク州弁護士資格取得。NTTグループ、特に米国子会社のNTTアメリカ(NY)、インターネット・ビジネスのNTT-Xなどにおいて国際法務を中心に幅広くNTTの国際ビジネスを担当。NTT退職後、2002年より九州大学法科大学院にて「契約実務」、「インターネットと法」、「国際企業法務」等の講座を担当するとともに、知的財産本部において産学官連携の推進に携わる。また、2008年より、ムハマド・ユヌス博士の推進するソーシャル・ビジネスの国内外のプロジェクトを担当。もっともユヌス博士に近い日本人。
現在の職業及び活動:
−九州大学 特任教授−ユヌス&椎木ソーシャルビジネス研究センター(SBRC)エグゼクティブ・ディレクター
−一般社団法人 ユヌス・ジャパン 代表理事
−株式会社 ユヌス・吉本 ソーシャルアクション 取締役
座右の銘:宿命に耐え、運命と戯れ、使命に生きる。
「ユヌスソーシャルビジネスを広げたい」
Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?
岡田 昌治さん(以下、岡田):ユヌスソーシャルビジネスを広げていくことですね。ソーシャルビジネスというのは、社会問題を解決することを目的にしているビジネスです。そのビジネスをみんなが自立して持続してやっていったら、社会問題は解決されるし、自分で自分の事業を立ち上げるから、そもそも失業もなくなります。このソーシャルビジネスを昔からやっていた人がいます。それは我々の先祖です。日本には売り手と買い手、世間に利益を与える「三方よし」の商いがあり、そして二宮尊徳の「道徳なき経済は犯罪である。経済なき道徳は寝言である。」という言葉があります。ユヌスさんの言っているソーシャルビジネスは「道徳ある経済」なんです。これは日本にもともとあった考え方です。それを日本人がまず思い出して、実行して、そして世界に発信することが夢です。それは静かな革命です。武器を使うわけでも、叫ぶわけでもなく、一人一人が自分の自立したビジネスをコツコツとやっていくことです。
記者:なるほど。まずは日本人がそのことを知らなければならないですね。
「お茶の間にソーシャルビジネスを」
Q.その夢を実現するために、どんな目標や計画を持たれていますか?
岡田:ユヌスさんと一緒にユヌスソーシャルビジネスのインキュベーションやプロモーション、あるいは教育や研究など今このセンターでやっていることをやっていくことですね。
また、ユヌスソーシャルビジネスカンパニー(YSBC)と言って、ユヌスソーシャルビジネスの7原則を会社の憲法である定款の中に入れる会社を増やしていくことです。現在、YSBCが日本には49社ありますが、さらにこういう会社やセンターを増やしていきたいです。
ユヌスソーシャルビジネスの7原則
1.グラミン・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、貧困、教育、環境等の社会問題を解決すること。
2.経済的な持続可能性を実現すること。
3.投資家は投資額までは回収し、それを上回る配当は受けないこと。
4.投資の元本回収以降に生じた利益は、社員の福利厚生の充実やさらなるソーシャル・ビジネス、自社に再投資されること。
5.環境へ配慮すること。
6.雇用する社員にとってよい労働環境を保つこと。
7.楽しみながら。
それから、今、吉本興業とも一緒にやっているんです。吉本自体が、もともと「社会に笑いを」という気持ちがあって、8年くらい前から各都道府県に芸人を送り込み、各都道府県の社会問題を解決する「住みます芸人」というプロジェクトをやっています。そのプロジェクトとユヌスさんの考え方は合うということで、ユヌス・よしもとソーシャルアクション(YYSA)という会社ができました。この住みます芸人たちが、47都道府県の各県で行なっているプロジェクトの中で有望なものがあれば、それをこの会社が引き取って、ユヌスソーシャルビジネスカンパニーとして設立していきます。そういうインキュベーションをする会社です。テレビで評論家が言うのと、芸人たちが言うのとでは全然違うんです。「お茶の間にソーシャルビジネスを。」ということで、より一人一人が身近に感じられるようにしていくことが必要ですし、日本人は一人一人の道徳心は元からあるので、正面切ってやるのではなくて、静かな、あるいは笑いの革命が合っているのではないかと思っています。
記者:誰にでも身近になっていく取り組み、とてもいいですね。
「地球が宇宙の中の一つの島であるという意識」
Q3. その中で、どんな活動指針を持って活動されていますか?
岡田:地球を大事にしましょうということですね。「グローバリズム」という言葉の意味をどう理解するのかです。いろんな種類の人間の存在を尊重し、様々な文化を理解するというのも、一つの定義かもしれませんが、僕は、グローバリズムというのは、我々は、“グローブ”で暮らす小さな存在であることを自覚することだと思います。“グローブ”というのは球体という意味であり、すなわち、地球という意味です。地球が宇宙の中の一つの島であるということを意識することです。例えば太平洋の中で地球という無人島に流れ着いたとします。その時に、島の上に線を引っ張って、あなたは黒人だからとか入ってはいけないとか、あなたは女だから〇〇してはいけないというようなことを言うでしょうか?それよりもその無人島で皆で力を合わせて、島の資源や食料を大事に分け合いながら、生き抜くことが大切ですよね。それが僕にとってのグローバリズムです。丸い地球を一つの宇宙の離れ小島と見る。その離れ小島に、75億人が流れ着いて暮らしていく。そこで考え方や文化が違うのは当たり前の話です。それを知った上で仲良く生きて、生き抜くことが重要です。争い合うのではなくて。それでなくとも、もう地球は悲鳴をあげていますよ。
記者:とてもわかりやすいです。自分を、地球をどう観るのか、の意識が大事ですね。
「ユヌスさんとの出会い」
Q4. 夢をもつようになったきっかけはなんですか?そこにはどのような発見や出逢いがあったのですか?
岡田:2007年に九大とユヌスセンターが連携協定を結んだんです。その後2008年にその協定書の更新の打ち合わせのためにユヌスさんに会いに行き、そこでユヌスさんの講演を聞きました。そしてユヌスさんと話をしている時に、この人の考え方はすごいと思ったんです。それで単なる協定ではなくて、ユヌスさんのソーシャルビジネスについての研究や教育をする機関を大学内に作ろうと思いました。
僕は、これまで世界で働いてきた中で、いろんな格差を見てきました。お金のことしか考えていないような人たちを相手に、分厚い契約書を持って契約交渉をやっていたのですが、だんだんと疑問が出てきたんです。「なんのために俺は一生懸命、ハードな契約交渉をしているのか。」と。「自分の人生を削ってまでやることなのか。」と、自分に対しても、会社に対しても疑問に思っていました。だからこそ、ユヌスさんに会ってユヌスさんの話を聞いて、これだと思ったんです。
記者:ユヌスさんとの出会いがとても大きなきっかけになったのですね。
「修羅場のビジネス経験と日本人の考え方が信頼につながった」
Q5. その発見や出逢いの背景には、何があったのですか?
岡田:僕の経験だと思いますね。弁護士としてもビジネスマンとしても、修羅場のビジネス経験があるので、ユヌスさんはそこを信頼してくれていると思います。もう一つは二宮尊徳の話のような、日本人の考え方という背景に同感してくれました。
記者:確かに岡田さんのこれまでの経験をそのまま生かしていけますね。でもどうしてそういう地球や社会に対する意識を持てる岡田さんになれたのでしょうか?
岡田:それはもともと自然が大好きだからでしょう。自然からいろんなことが学べると思います。あるべき社会の姿が観えてくるんです。限られた人間に富を集中させるなんてことは自然の世界では起こらないことです。みんな平等だし自由だし。それもあって自然界で起こることと人間の世界で起こることのギャップに疑問を持ってきました。それがベースにあると思います。
記者:多様な経験や幼い頃から深く世界を観ていたことが今に繋がっているのですね。
岡田さん、本日は貴重なお話、有難うございました。
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【編集後記】
インタビューを担当した大野、草場、岩渕です。岡田さんの熱い想いと、今の時代社会の矛盾をはっきりと言い切る姿勢は、まさに「博多の男」というのが相応しく、清々しかったです。岡田さんのおっしゃるように、見た目や文化の違いで境界線を引くのではなく、一人一人が1つの地球に暮らす仲間であるという意識を持ち協力できたら、日本や世界に明るい未来がきっと訪れると思います。静かな革命、これから共に起こしていきたいですね。今後もご活躍を応援しております!
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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
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