有事に負けない宿を目指して
こんばんは。
大それたタイトルをつけていますが、今新型コロナウイルスにより外出が制限されている中で、自分たちが今どんな風に切り抜けていっているのか?
そして、来てもらってなんぼな「場」を持つ、宿を営む身として、有事に負けない宿をいかに目指しているかについて。
現在、宿は5月末まで休館中。 直近の予約は全てキャンセルになり、先の予約も動いていない状況で、心配が全くないわけではありません。
しかしながら、借り入れをしたり、給付金が明日にでも出ないと廃業してしまうというレベルではありません。
それはなぜか?と考えられる理由についてまとめました。
ラッキー要素もありますが、これらは宿を開業・運営するに当たり、考え、実践してきた事でもあるので、1つの実例としてお読みいただけると幸いです。
1.固定費について
1つ目は宿を開けてても休んでいても、かかってくる固定費について。
チャシバクINNは、自宅+ドーナツ屋+宿屋の自宅兼店舗兼宿です。 ほぼローンを支払い終わった持ち家でもありますので、自宅としても、宿としても、大きな費用となる家賃がほとんどかかっていません。
そしてもう1点は、夫婦2人での経営ということ。 家賃の次に大きい人件費も最小。
宿を開けている間も、家賃と人件費以外の変動費としては、水道光熱費(電気、水道、灯油)、通信費(電話、WiFi、ホームページのサーバー代)、消耗品くらいのもの。 リネンは自前で洗濯をしています。
OTAに部屋出しをしていませんので、サイトコントローラーは未契約。 Googleカレンダー+予約フォームからGmailに予約が入るのでブッキングエンジンも未契約。 さらにカレンダーアプリで予約管理をしておりPMSも不要。 4室のみ直接予約のみなら、これらの無料アプリで十分なのです。
現在は休館、5月中の予約受付もストップしていますが、閉めていてもかかる固定費は元より最小限に圧縮されています。
2.開業費、開業タイミングについて
私がまだ会社に勤めていた時期に、妻が1人で自宅兼店舗としてドーナツ店をオープンしました。
子育てをしながらの妻の自宅仕事+サラリーマンとして安定した収入を得られている内に、自宅兼店舗のローンを返していきました。
その後↑のように脱サラをして1年無職となりましたが、ドーナツ店を走らせながら、宿の改装をDIYで進めていきます。
床張り、壁塗り、ベッド、テーブル、受付カウンターの作成など内装関係もろもろ。
ちなみにウチの物件は、とてもラッキーなことに元民宿物件で、水回り関係は大掛かりな工事は必要がありませんでした。 なので外注工事も最低限。
それら以外は、リネン(シーツ、タオル)、備品(冷蔵庫、ポット、電気スタンド、ハンガーラック、タオルハンガー、ハンガー、ごみ箱、お茶セットなど)の購入、ホームページ作成くらいで、開業費を抑えています。
そして開業費の一部には、小規模事業者持続化補助金も利用していますので、外注し多額の費用をかけて改装→開業をしたわけではなく、借金なし→貯蓄の範囲内での投資により、開業に至っています。
ですので固定費が最小で、開業における借り入れもない為、稼働がフルフルで走らなくても暮らしが成り立ち、冬期休館などロングの休みを取る事も出来ています。
3.宿以外の事業について
宿以外の事業として、焼きドーナツ店を経営しています。 元より行っていたテイクアウト販売のほか、ドーナツBOX、ドーナツMIXをオンラインストアで通販を行っています。
現在は、学校が休校になっていますが、自宅で子どもを見ながら、テイクアウト販売や、発送作業ができるのも、自宅兼店舗の強みであります。
もともと近所に20年周期で噴火をしている有珠山があるという事、そして北海道は大雪による自然災害の多い土地、さらに記憶に新しい大規模停電の原因となった地震や、昔は上陸しなかった台風なども。
いつなんどき災害により、事業がストップしてしまうかわからない。そういった心配は宿を始めてから、ずっと頭の中にありました。
噴火などによって宿や対面販売が出来なくなった時にと考えて、昨年の冬に少しばかりの費用をかけてオンラインストアでの通販環境の整備を行いました。
そもそもドーナツBOXの通販は、今までヒッソリとDMで受け付けて、年に数回やってた事はあったのですが、いかんせん返信対応や、振込関係、梱包問題など、すべて手作業でやっていたこともあり、数箱送るのが精いっぱい。
なので、オンラインストアによる通販環境整備として、以下6点のテコ入れを行いました。
1.オンラインストア立ち上げ・・窓口が出来た事。 商品説明、送料、など情報提示がわかりやすく。 個人情報の登録。 DMによるやり取りのキャッチボールが不要に。
2.カラーミーショップ契約・・納品書の発行、自動返信メールの設定、入金や発送のリスト管理、在庫管理など。
3.オンラインバンク設定・・三菱UFJとゆうちょダイレクトを設定してオンラインで入金確認可能に。
4.手書き伝票廃止・・ゆうちょスマホでピッと。ヤマトはビジネスメンバーズ登録をして印刷可能に。
5.ロゴ入り段ボールの新調・・以前のドーナツBOXはグルーガンでとめる箱(8-10個入り)を使用。 そのままでは強度がなく送れないのでプチプチで梱包→お手間。
改善策として白地のロゴ入り段ボール(12個入るサイズ)を作成。 基本捨てられる通販段ボール→特別感+強度のある箱に。
6.通販可能商品(ドーナツMIXや温泉タオル)の商品化
皮肉なことに、噴火ではなくコロナによって現在フル活用されていますが、スムーズに対面販売→通信販売に移行できましたので、これは不幸中の幸いなタイミングでした。
4.日々の暮らしについて
1~3と比べると些細なことですが、田舎暮らし故に、生活費が抑えられているのも大きいなと考えています。
我が家の場合、今時期は野山に出てくる山菜を採り、ほとんど野菜を買っていません。 近所に農家さんも多く、プロ並みの家庭菜園ニストも多い為、収穫時期は食べきれない野菜がまわってくることも。 趣味の釣りでたまにお魚をゲットしたり。 大きなスーパーは遠いのでお肉は月に数回の買い出しで買うのみ。
外食についても、夜に飲み歩きできるお店がそもそも少ないので、基本は自炊。 なので仕事帰りに飲んで帰るとか、惣菜を買って帰るとかいうシチュエーションは皆無。
逆にコーヒー焙煎したり、ホームベーカリーでパン焼いたり、ピザや餃子は生地から作ったり、漬物をつけたり、味噌を仕込んだりと何でも自分たちでやるようになりました(主に妻が) 近所のコンビニでビールは買いますけどね笑
年一で実家のある京都へ帰省をすると、ふらっと飲みにいったり、ラーメン食べたり、コーヒー飲んだりと、街暮らしならではの楽しみ=散財があるなぁといつも思います。 それはそれでとっても楽しいんですが…
その辺イイか悪いかは置いておいて、田舎暮らし故に、強制的に散財しにくい質素な(しかしながら豊かな)暮らしになっています。
5.その他
北海道は冬に雪が降る土地柄、夏は農業や漁業、冬はスキー場や除雪といった季節によって仕事を変えて暮らしている人も多いです。
まだ今のところ考えてはいませんが、農家さんでバイトをさせてもらったりと、なんかしらのバイトをして食いつなぐというのも最後の手かなぁと思っています。
北海道は、農業をはじめとする一次産業が盛んで、食料自給率が高いこともあり、飢え死にするイメージが湧きにくいのは、個人的にはいいことだと思っています。
6.その他2
↓このへんの本おもしろかったです。
おまけ
最後に・・・
前述したように、日々の暮らしを質素に、宿とは別の事業があり、開業にかかる返済もなく、固定費を最小に、小さくも強い、有事に負けない宿を目指しています。
まだ道半ばで、危うさ(物流やネットが止まる)も感じていますが、生きる力、自給力を上げて、ミニマルに、シンプルに、ゆっくりと暮らしていくことが、今現在の目指すところであり=それが結果的には有事に強い宿なのかなぁと考えています。
小さく事業を営む事、お金をかけない事、リスクを取らない事は、事業の拡大スピードは遅く、出来る事は限られてくるのも承知しています。 その中で出来うる限り、自分たちも面白く、お客様も楽しめて、地域も盛り上がる、そして有事に強い、そんな宿になっていきたいですね。
以上、長々と書きましたが、かなり特殊な例かと思います。 これから宿を始めたい方、宿の今後を思い悩んでいる方、そんなどこかの誰かのためになれば幸いです。 どうもお付き合いありがとうございました。