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『劇映画孤独のグルメ』|おっさんが飯食うだけのハートフルハングリー映画【感想】

先週『劇映画孤独のグルメ』を観てきました。
ドラマは基本見ないのですが、唯一見ている作品だったので足を運びました。

監督:松重豊
脚本:田口佳宏・松重豊
原作:作/久住昌之・画/谷口ジロー『孤独のグルメ』 1997年10月(単行本1巻)

意外にも原作の単行本は2冊と少なめ。
それでもゴローちゃんの魅力は充分に伝わります。

そして、この映画まさかの監督脚本主演が松重豊さんです。
松重さんは監督志望だったそうで、初の監督がアンチ活動していた作品という皮肉。
いつもこの作品に文句を言っている人自らが映画で引導を渡すんですね、わかります。

登場人物

井之頭五郎/演:松重豊
個人経営の貿易商。
取引先の地域の飲食店で食事をするのだが、下調べをせずに、その場の雰囲気と食べたいもので店選びをする主義。
携帯はいまだにガラケー。
酒は飲めず、ウーロン茶を頼む。
サラリーマン風ですが、会社員ではないです。

余談ですが、ゲーム『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』にアオキというゴローちゃんをモチーフにしたキャラクターがいます。
アオキはサラリーマンで営業・ジムリーダー・四天王のトリプルワークをしている社畜キャラです。

ポケモンSVに登場するジムリーダー兼四天王のアオキ
風貌からゴローちゃんがモチーフ
ポケモンバトル腕はピカイチだが、外回り営業でサボりがちとDLCで発覚

松尾千秋/演:杏
五郎の元恋人の娘。
祖父の依頼のために五郎をフランスに呼ぶ。
杏さんスタイルいいですよね・・・。
188センチの松重さんと並んでも遜色なかった。

松尾一郎/演:塩見三省
千秋の祖父。フランス在住。
過去に母が振舞ってくれた「いっちゃん汁」というスープを飲みたいと五郎に依頼する。

志穂/演:内田有紀
韓国の島で暮らす謎の女性

店主/演:オダギリジョー
ラーメン屋の店主。
今は訳あってチャーハンしか販売していない。

中川/演:磯村勇斗
ラーメン屋の常連客。
終盤に五郎と知り合って手伝うことになる。

あらすじ

貿易商の井之頭五郎は、昔の恋人の娘・松尾千秋に呼ばれ、パリを訪れる。彼は、子供の頃に飲んだスープをもう一度飲みたいという千秋の祖父から、レシピ探しを依頼される。五郎は、ラーメン屋の常連・中川の助けを借り、国境を越えたレシピを探しに乗りだす。

映画ナタリー「孤独のグルメ」より引用https://natalie.mu/eiga/film/196941

千秋の祖父が求める「いっちゃん汁」を求めて食材探しをするという料理人が主人公のグルメ作品みたいなことをします。

ドラマ版の孤独のグルメは2012年から始まったご長寿ドラマ。
原作版とは違った良さがあります。
松重さんと言えば、私は世代的にドラマ「ブラッディ・マンデイ」のシリアスな役のイメージが強かったので、いい意味でのギャップでほっこりしています。

有名な話ですが、主演の松重さんは孤独のグルメに対して毎回文句を言っているようです。
しかしながら、なんやかんやしっかり演技していらっしゃるのでツンデレ発言として有名です。

この作品の物語の大筋は3つ。
1仕事パート
2腹が減って店探し
3食事パート
ドラマ版や原作漫画では仕事パートはサクッと終わらせて食事シーンがたっぷり。
映画では仕事パートが多めになって、行く先々のご当地グルメを堪能していきます。

主題歌

ザ・クロマニヨンズ「空腹と俺」

淡々としたゴローちゃんの内面の腹が減った時の焦燥感を表したような曲。
クロマニヨンズのボーカルの方と松重さんはバイト時代の知人だそうな。

腹が減った時の「ポン・ポン・ポン」のSEも健在で映画バージョンで豪華になったり4連打になったりしています。
ドラマ版でお馴染みの「ゴロ~🎵」の曲が流れなかったのは残念。

感想

劇場は笑いが起きていた

序盤からシュールギャグを飛ばして終始面白かったです。
むしろ先月行った『はたらく細胞』よりも笑いの量は多かったですね。
エンディング後は拍手も上がっていました。
ただ、シュールギャグが苦手な人からは通じないかもしれません。

シュールギャグとは、常識や現実感から離れた不条理な状況や会話を用いたユーモアの形式です。一見意味不明だが、その奇妙さや予測不能な展開が笑いを生みます。独特の感性が必要とされます。

チャットGPTより

ただのおっさんが飯食ってるだけの映画なのに面白い

これは、原作もドラマ版でも同様の感想ですが、ただただ個人事業主のおっさんが飯を食うだけの作品なのに面白いんですよね。なお、主演俳優も同じこと言っています。

ゴローちゃんは食事中は喋らないんですよね。
店員さんとのやりとりも最低限。
感想・実況は全て心の声で済ませる。

グルメ作品やバラエティ番組にありがちな「うーん!うまいぃぃぃ!」「濃厚な舌触りに旨みが云々〜⭐️みたいな食べながらオーバーなリアクションをするようなスタイルではありません。
リアルな社会人の食事シーンだからこそ親近感があるのでしょうね。
これこそ孤独のグルメの真髄。

そして、辞めたいと文句言っている割に自分で脚本監督主演までやってのけて映画も面白いと来たもんだ。松重さんすげぇ。

個人事業主だからこそのフットワークの軽さと繋いでいく縁

ゴローちゃん、とにかくフットワークが軽い。
そして、現地で出会った人ともすぐに打ち解けて次の取引に繋げます。
映画でもその行動力を遺憾無く発揮しています。
ゴローちゃんは店内の客の様子を観察し、黙々と食事をし、時に食べ方を気にしたりしますが内向型な性格に見えます。
しかし仕事では謙虚に淡々とタスクをこなし、取引先の人からの人望も厚いです。

原作版ではよりシゴデキおじさんでクールな感じですが、ドラマ版は人柄の良さが滲み出ています。
人らたしの技術が詰まっていますよね。
何ものにも縛られずに自由に孤独に仕事をし飯を食う。
個人的には自分にとって指針となる生き方です。

とうとうサバイバル飯を始めたゴローちゃん

井之頭五郎の食事とは、予約なしにふらっと訪れた店の料理を粛々といただくスタイル。
今回なんと無人島でサバイバル飯に手を出します。
とうとう自炊をしてしまった・・・。
ただ、そこで得た知見で出汁のポイントを見出すのでよかった。
自炊をするからこそ、外食のありがたさを感じますよね。

映画はギャグ寄りで「そうはならんやろ」の連発

映画版のゴローちゃんはコミカルになってました。
松重さんの迫真の演技も相まってシュールギャグで笑いが絶えなかったです。
原作版も変顔をしたり、2巻は独り言が増えたり側から見たら奇怪なおじさんではあるものの映画も飛ばしてましたね。

台風の中、パドルボードで島を横断しようとしたり、キノコを食べて食中毒で泡吹いて気絶したりと一歩間違えたらシャレにならない奇怪な行動をしてました。
しかしながら「ま、ゴローちゃんなら大丈夫か」というある種の安心感もある不思議さ。

映画になると一層シュールな絵面

というのは、スクリーン上に映された食事をする男性を見守る大勢の観客という構図。
実家で孤独のグルメを見ると淡々とした物語なので番組を変えられるので、泣く泣く一人暮らしの時に見ているのですが、映画館でファンと見られたのは感動でした。同じく孤独のグルメ好きな人がたくさんいて嬉しみ。
ただ私のような30代より下の世代は少なかったです。

世界と言う割に規模は小さめ

予告だと世界へ!的な感じでしたが、ゴローちゃんが行ったのはフランスと韓国のみです。
もうちょい他の国に行って欲しかったけど物語や予算の問題でとっ散らかってしまうのかもしれませんね。

韓国料理多め

様々な料理に舌鼓を打つゴローちゃんが見たかったのですが、韓国料理が多めでした。
韓国料理はドラマ版でもやってたので、他の国の料理を食べるゴローちゃんが見たかった。
とはいえ、入国審査官とのやり取りは面白かったし、劇場は結構笑いが起きてました。
この入国審査官はユ・ジェミョンさんがサプライズで演じております。

孤独ではないグルメも一興

隣に関係者がいたり、一緒に食事をしたりするシーンもあります。
韓国で入国管理官のおっさんとのコント。
東京のラーメン屋で仲間とすするラーメン。
とはいえ、それぞれの思いを持って黙々と食べている姿は友達との食事とは違ってエネルギー補給のような食事。
いつもとは違う食事も一興。

孤高のグルメは笑った

劇中劇で『孤高のグルメ』がありました。
井之頭五郎風の社会人が飯を食うというパロディー。
笑ったのはまさかの遠藤憲一さんが本人役で登場。
ゴローちゃんもとあることがきっかけでエキストラ出演していましたが、ちゃんと棒読み演技になっていて面白かった。

物価の高騰で外食控えするからちょうどいい作品

映画をみて腹が減ったのでひさしぶりに外食をしました。
よくあるチェーン店のラーメン屋のラーメンセットで1800円でした。
高すぎて泣きそう。
ファストフード店も高いし、コンビニ飯なんてもってのほか。
コンビニって金欠学生には助かった場所だったのにいつの間にか金持ち用の店になっちゃいましたよね。

しかも2024年の台風以降から米不足というデマが発生して5キロ4000円前後に固定されてしまった。

あまり物価上昇の実感はなかったのですが、食費の高騰でようやく実感が湧いてきた2025年。今年も値上がりするんだろうなぁ。
だからこそ、『孤独のグルメ』はゴローちゃんの独り飯を見ながら一緒にご飯を食べられるのでちょうど良い作品だと思います。

オチは弱め。いつもの日常に戻るようなエンディング

見事ゴローちゃんは素材を集め、ラーメン屋の店主にスープを作ってもらい完成します。
しかし、味が美味すぎて違うと言われてしまうというオチ。
出汁の素材自体は正解だったようです。
娘の千秋なら下手に作れるだろうとジョークも飛ばしながらゴローちゃんの依頼は完了。

結局「いっちゃん汁」はご当地グルメではなく、母親が作ったオリジナル料理だった模様。「いっちゃん」は千秋の祖父の名前一郎から取った名前だそうな。
いわゆる「おふくろの味」ってヤツですな。
そりゃ出汁にこだわるプロのラーメン屋に作らせたら美味すぎるスープができてしまうので面白いオチ。

最後は夕暮れの飲み屋街に消えていくゴローちゃん。そしてゴローちゃんから最後の一言。

「お腹、空いたでしょ?」

まとめ

主演が早く役を降りたいと文句を言いながら10年以上続き、とうとう監督脚本を担当しだした相当なツンデレ作品です。

ドラマ版のオープニングの「自分勝手になり自由に誰にも邪魔されず気を遣わず物を食べる孤高の行為」なるコピー。

食事は誰かのためにするものじゃない。
自分自身の空腹を満たし、エネルギーにするからこそ自分本位で喰らいつくのもいいですよね。

それにしても・・・腹が・・・減った。



ということで今日はこの辺で。

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