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【詩】永遠2

不機嫌なる裸像が無人の街に落とす影に
隠れて土中の車輪が密かに唸(うな)りゐる
いつしか満ちきたる潮の引き去りしのち露(あら)はにぞ
なりたる兵車はいまもなほ幻を追ひて勇みゐる

二人だけの秘密の会話を盗み聞く猿
の書きつくる文(ふみ)読む女王の背に虫らが集ひ
ともに読み上ぐる謀(はかりごと)こそ革命の
計画なればや蜘蛛糸を編む網かけて地を覆ひたる

射手(いて)は弓を引きしぼり網を貫かむと矢を放ちたれば天を支へきたりし大柱(おほばしら)毀(こぼ)たれ、天と地の再び合ひたり

講壇から救ひを説きつつ頽(くづほ)るる使徒
を抱き起こす羅馬(ロマ)の信徒の搾る葡萄液は
石の間(あい)から滲(にじ)む。十字架の縄目に縛らるる
人びとはともに天の国へ行かむと互ひを励まし赴きたり

うけ初むる愛撫に戸惑ふ指のなぞる線
は天に向け撓(しな)ひて恋(こ)ふる人(と)の頭(こうべ)抱けり
こころ解き放ちて受けとむる人の身のひとへなる
我(あ)への思ひをただ愛(いと)しとおぼゑて結ばるる

人と人の境が一瞬消えたるにこそ楽園(パラディスス)あれ、誕生前の世界あれ

永遠、それは天と地の合ふ刹那、人の結ばるる須臾(しゅゆ)

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