■ サブロー通信 ■ 変わらないもの「一球入魂」~集り散じて 人は変れど 仰ぐは同じき 理想の光~
東京六大学野球は、日本最古の大学野球リーグであり、その起源は1903年の早稲田大学と慶應義塾大学の対抗戦(早慶戦)にまでさかのぼります。その後、他の大学が加わり、1925年に現在の6校体制が整いました。来年でこの6校体制が100周年を迎えることになります。
このリーグは、日本の大学野球の発展に大きく寄与し、多くのプロ野球選手を輩出してきました。長い歴史と伝統を持つ東京六大学野球は、日本の野球界において重要な位置を占め続けています。来年で100年目のこのリーグは、学生野球の象徴であり、伝統を大切にする文化が根付いています。
早稲田大学野球部の監督として現在6年目を迎える小宮山悟監督は、かつて千葉ロッテマリーンズなどで活躍したプロ野球選手です。彼のプロでの戦績は素晴らしいものですが、今でも大事にしているのは「早稲田の野球」です。
昨年、慶應高校が「エンジョイベースボール」を掲げて全国制覇し、その柔軟なスタイルが話題になりましたが、早稲田大学の野球は一貫して「一球入魂」という言葉に象徴される精神が息づいています。
「一球入魂」という言葉は、1919年から1925年にかけて早稲田大学野球部の初代監督を務めた飛田穂洲先生の教えから生まれました。飛田先生は、武士道に通じる「野球道」を掲げ、一球一球に魂を込める姿勢を選手に求めました。この教えは早稲田大学野球部に深く根付いており、石井連藏監督、そしてその教え子である現監督、小宮山悟監督へと受け継がれています。
この文章を書いていて、私が思い出すのが「一流」という言葉です。「一流」とは仏教の教えに由来し、お釈迦様の言葉や思想が一片の狂いもなく受け継がれていくことを指します。それを「一つの流れ」と書き、「一流」という表現が生まれたのです。真理は変わらず、一つの道を忠実に守り続ける姿勢は、野球でもビジネスでも大切なものです。
小宮山監督の野球もまた、筋が通っています。彼はエースや4番打者を簡単には変えません。結果よりも、その精神を貫くことに重点を置き、苦しい局面でも耐え抜くことで得られる「学生野球の真髄」を追求しています。
時には負けることもあります。プロ野球時代には「投げる精密機械」として理論派で通っていた彼が、あたかも精神野球を掲げているように見られ、批判を受けることもありました。しかし、小宮山監督は最初から「変わらないもの」を大事にし、「彼の理想」を追求し続けてきました。
野球は個々の力ではなく、チーム全体がその精神を体現することで成り立つスポーツです。「一球入魂」の精神を理解し、全力でプレーすることが、勝敗を超えた本当の野球の美しさを教えてくれます。伝統を守りながらも、未来の野球を担う若者たちがどのように成長していくのかが楽しみです。