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変わるものと変わらないもの

二度目の浪人生活が始まった時、胸の奥に小さな違和感が生まれた。仮面先の大学の教室に座る自分の姿が、まるでその場に馴染んでいないかのように感じられた。その風景を見ながら、去年とは違う新しい光景に自分だけが置き去りにされているようだった。
季節は移ろい、街も人も変わっていく。それに対して自分は、ただ同じ日々を繰り返している。友人たちは大学生活に進み、SNSで新しい日常を楽しそうに語っている。自分はTwitterで🤡芸しているだけなのに。
そんな彼らを見ていると、まるで別世界にいるかのように感じ、次第にその距離感は広がっていった。
しかし、変わらないものもあった。自習室の静寂や、朝一番に自宅の窓から差し込む柔らかな光、手に馴染んだ参考書のページをめくる感触。それらは去年と同じで、時間の流れに抗うかのように自分の周りに留まっていた。
この静寂の中で、ただ自分と向き合うことが日常の全てだった。他人と比べることに意味はない。進まない時間に苛立ちを覚えることも、目の前の問題集に没頭すれば少しずつ薄れていく。勉強は、どんなに取り残されたように感じても、自分が手を動かし続ければ必ず進むものだと知った。だからこそ、変わらない日々の中にも、確かな変化があることに気づかされた。
秋が始まる頃、ふとした瞬間に感じた。去年の自分と比べて、少しだけ強くなっていることに。確かに外の世界は変わり、自分を取り巻く環境も変わっていく。でも、自分の中には変わらないものがある。それは、目標に向かって歩み続ける意志だ。
2度目の浪人という言葉には、どこか否定的な響きがあるかもしれない。けれど、この時間を過ごすことで得たものもある。孤独な日々を耐え抜き、自分自身を深く見つめ直すことができた。そして、周囲がどれほど変わっても、自分だけの歩幅で前に進んでいくしかないということを学んだ。
変わりゆく世界の中で、変わらないものを見つけること。その静かな力が、受験勉強に取り残された日々の中で、確かに自分を支えていたのだ。
春が訪れるころ、教室の窓から見える景色もまた変わるだろう。でも、その時には、自分もまた少しだけ変わっているに違いない。そして、変わらない意志とともに、未来へと歩み出す日がやってくると感じている。

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