見出し画像

憂鬱な日々に見た夕日が綺麗だった


憂鬱な日々が続いていた。朝が来るたびに、目覚めることさえ重たく感じられ、時間はただ流れているだけで、自分はそこに取り残されているかのようだった。部屋の窓から見える風景も、何の変哲もない灰色の世界に思え、どんなに鮮やかなものも色褪せて見えた。
そんなある日、ふと気が向いて外へ出てみた。冷たい風が肌を撫で、秋の訪れを告げていた。ぼんやりと歩きながら、何も考えずに空を見上げると、目に飛び込んできたのは燃えるような夕日だった。
朱色と金色が入り混じり、空全体が深く染まっている。大きな雲がその光を受けて、まるで炎のように揺れているかのように見えた。少しだけ、世界が違って見えた。その夕日は、なぜか心に触れるものがあった。それまで重たく感じていた心が、ほんの一瞬だけ軽くなった気がした。
夕日を見つめながら、ただその美しさに包まれていた。普段なら見逃してしまうような小さな瞬間が、今は心に響いた。憂鬱な日々の中で、こんなにも綺麗なものがあることに驚きすら感じた。
明日がどうなるかは分からない。でも、この瞬間、この夕日の美しさは確かにあった。それは、どんなに暗い時でも、どこかに光があることを教えてくれるかのようだった。
夕日が沈みゆく空の下で、私はそっと息を吐いた。そして、ほんの少しだけ、生きていくことが少し楽になるかもしれない、そんな希望を抱いたのだった。

いいなと思ったら応援しよう!