タナカは腹部エコーの呼吸を会得した。

こんにちわ。フエキくんです。
今日、タナカは健康診断で有休消化。

タナカの嫌いなものは
「他人に健康を診断されること」だ。
でも、会社の健康診断だけは拒否できず
今回もブツブツ文句たれながら
イヤそうな顔をして出かけて行った。

「なんで休みの日にさ、朝も早ぅ起きてさ。」
「８時に受付て、早すぎん？」
「コーヒーも飲めんとか、なんなん？」

・・・・タナカ、今日は休日じゃない。
健康診断のために有休を消化しただけだ。
そして、文句多すぎ。ヤレヤレ。

さて、そんなタナカ、健診センターに到着。
受付に行こうとしたら
「消毒してください！検温も！
　あ、マスクしてください！！」
と叱られていた。タナカは笑顔で
「すみませぇぇん。」と謝ってはいたが
絶対に心の中で「ウルセェ！」と
舌打ちしていたはずだ。

なんとか受付をクリアし検査着に着替えて
ロッカーのカギを左手にはめ
ぶっちょう面で廊下を歩くタナカ。

しかし、
「タナカさーん、問診票の確認しますよー」
と、看護師さんに呼ばれたとたん
「物わかりの良い大人仮面」を装着した。
ヤレバデキル。そのままで行ってこい。

身長体重、聴力、視力、血圧、採血。
終わるたんびに、ちゃんと品よく
「ありがとうございましたー。」
と言っている。順調だ。

肺活量の検査に至っては満面の笑み。
笑みというよりゲラゲラ笑っていた。
そんなに楽しかったのか？
何が？？
・・・・タナカのツボはよくわからない。

胸部レントゲン、心電図も終わって
最後の腹部エコー。頑張れ、タナカ。

「はいぃ～、お腹出してぃ～」
「頭はこっち向きでぃ、横になってぃ～」
「ちょっとヌルッとしますぅ～～」

・・・ヤバイ、この技師さん。
イントネーションが独特すぎる。

「はい～、息を吸ってぃ～
大きくお腹を膨らませてぃ～」
「止めてぃ～」
「はい～、ゆっくりしてぃくださいぃ～」

ダメだ、タナカ。笑ってはいけない。
ちゃんとした腹部の画像が
撮れなくなるやもしれぬぅ～！！

「はい～、息を吸ってぃ～
大きくお腹を膨らませてぃ～」
「止めてぃ～」
「はい～、ゆっくりしてぃくださいぃ～」
技師さんの声かけは続く。

「はい～、息を吸ってぃ～
大きくお腹を膨らませてぃ～」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
あれ？
「止めてぃ～」は？
いつまで吸うんか？？
永遠に吸うんか？？

あ、タナカ、勝手に息止めてる！

「はい、息をすぅ～っと吐いてぃ～」
さらに技師さんの声かけは続く。

待って。
すぅ～っと吐いてぃ～って
吸うんか？吐くんか？？

え？タナカ、勝手に呼吸してる？
この短時間の間に技師さんからの指示を
的確に汲んでいる？？
しかも笑わずに？？

すごいぞ、タナカ！
このイントネーションに怯むことなく
呼吸を合わせるなんてぃ～～。

腹部エコーの呼吸をマスターしたタナカは
すべての検査を終え、待合室にいた。

肩が揺れている。左手でお腹を押さえている。
そう、声を殺して笑っていた。
がんばったね、よく堪えたね、
タナカ・・・・ボクは誇らしいよ。

検査の結果は後日・・・・
だが、ひとつだけわかっていることがある。

そう、脂肪肝。
脂肪肝だってぃ～～～。